2016年1月25日月曜日

ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』


巨匠とマルガリータ
巨匠とマルガリータミハイル・アファナーシエヴィチ ブルガーコフ 中田 恭

郁朋社 2006-11
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 過去に書いた記事をサルベージするシリーズ、今回も。



 なにがどう面白いのかと問われると、言葉に詰まってしまう。
 他人に勧めるかと問われれば、きっとしないと思う。この作品はきっと人を選ぶ、少なくとも日本人にとっては馴染みが良いとは言えない。ファウストを始めとする、悪魔との契約物語を知っていた方が楽しいだろう。


 なんて前振りはどうでも良くて、ただ言いたいのは私にはとても面白かったという一点に尽きる。
 本は大きいし重いし、どう持ってもどこかしらが痛かったが、そんなことが気にならないほどに楽しかった。
 けれども作中で起きる出来事と言えば、悪魔の集団が現れては人々を欺き、そして去って行くだけだ。
 登場人物は雑多、しかも慣れないロシア人名は「お前誰だったっけ?」現象を引き起こす。舞台は1930年代のモスクワのはずなのに、挿入される作中劇はなんと、イエスの処刑を描いたものだ。

 自由を奪われ作家としての人生を大きく狂わされたブルガーコフの、ソビエト体制への批判もあちこちに見える。
 が、そんなこと知らなくとも、ただただ面白い。
 ブルガーコフは深い悲しみと傷口を、笑いと滑稽さをまぶして差し出してくれている。二度と立ち直れないほどの大きな打撃を受けても、その生の終わりまで人は歩いていかなければならず、そして生活には必ず笑いが必要なのだから。
 それはかつてのソビエトでも、現在の日本でも、時代も場所も関係なく受け入れなければならない普遍の原理だろう。だからこそ滑稽で、そしてどこか物悲しくて、面白いのだ。
 続きはコチラから。



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