そもそも勝手に翻訳して公開しても大丈夫なの?:著作権のお話


 タイトル通りの疑問が湧いたので、調べてみた。


 国によって違いはあれども、基本的には創作物は創作された時点で創作者に権利が付与されることとなっている。
 つまり私のこの文章もこうやって書かれている以上、創作者としての権利が私に発生している訳ですね。

 ただ何でもかんでも創作物だと認められるわけではなく、創作性を有していなければならない。標語や題名は一般的には創作物だとは認定されないが、これはケースバイケース。
 ぶっちゃけ、なんでもかんでもケースバイケース。
 例えばこの私の文章をパクった人がいるとして、そして私がその相手を訴えたとしても、相手は相手で「こんな文章にオリジナリティもクソもあるものか! 著作物として認められない、つまり俺は無実!」と言い張ることも可能なわけでして、場合によってはその主張が通ることもあったりもする。

 つまるところ、最終決着は裁判所で、つまり訴えられるまではセーフが原則であり、最も手っ取り早い疑問解決法としては「権利者に連絡して許諾を得る」一択なのは明白なものの、誰が権利者なのか、そもそもまだ権利が生きているのかさえよく分からないから、せっせと調べ物をしましたよ、というのが今回のお話。
 ちなみに、以下はほぼ全て公益社団法人著作権情報センターを参考にして書いたものなので、そちらのサイトを見た方が正確かつ分かりやすいことと思います。




 著作権は永遠に保持される権利ではない。日本では著作者の死後50年で失効、海外では70年がスタンダードなようだ。
 今回私が翻訳して公開したい原著の著者はロシア人のソログープさん。1927年死去。

 日本人だから海外の著作者の権利を踏みにじっても良いよね、とは当然ならない。
 日本はベルヌ条約(正式名:文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)と万国著作権条約に加入しているため、ほぼ全ての国の著作物の権利が守られている。
 正確に言えば、両条約に加入していない国の著作権は踏みにじっても大丈夫ではある。が、しかし、非加入国の著作物が加入国で出版等されていた場合、その時点で加入国で新たな権利が発生するために、注意が必要となる。
 A国は非加入国だから大丈夫だろうと思ったら、その著作物が加入国Bでも出版されており、B国の出版社から訴えられた、なんて展開も有り得るわけですね。


 著作権の保護期間が日本と異なる国の場合、そちらの国の期間が有効とされる。
 件のロシアは70年。死去の翌年1月1日を基準とするので、1928年1月1日から70年後の1998年1月1日までが保護期間となる。
 つまり過ぎてる、やったー!

 ただし、サンフランシスコ平和条約批准国の場合には注意が必要となる。
 戦時中には著作権は守られないとの立場から、一部の国の著作物に関しては死後50年に加えて戦時加算がなされている。
 対象となるのは、サンフランシスコ平和条約に批准し、戦前からベルヌ条約もしくは日本と独自に協定を結んでいた国。
 具体的にはアメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、ブラジル、オランダ、ノルウェー、ベルギー、南アフリカ、ギリシャなど。戦時加算の長さにはそれぞれ差があるものの、約10年。
 以上の戦時加算に関する参考サイトは、著作権の保護期間に関する戦時加算について(文部科学省)。

 ロシアはサンフランシスコ平和条約に批准していないため、今回は考慮しなくて良い。
 ……マジで良かった。計算がややこしくて死ぬところだった。
 今後TPPの決着如何では、また変わったりするのかもしれないけれど、現時点ではこのややこしさに従うしかない。


 以上、ソログープの著作権がもはや効力を有していないことが判明した。
 故に、翻訳して公開しても、または転載しても問題はないことになる。

 とは言えど、今回は翻訳・転載の元データとしてБИБЛИОТЕКА РУССКОЙ КЛАССИКИサイトを便利に使わせて貰った以上、このサイトが転載・翻訳を禁じているならば(そんな権利があるのかどうかは置いておくとして)従おうと思う。
 そんなわけで規約を探したところ、トップページ最下行にそれらしきものを見つけた。
Проект некоммерческий.
Все представленные тексты предназначены для бесплатного прочтения всеми, кто того пожелает.

При выкладывании файлов где-либо еще - просьба оставить ссылку на библиотеку.

 「ファイルを再アップロードする際にはリンクをお願いします」、ということで良いのかな、これは。他には特に規約的なものは見つけられなかった。
 お願いだから強制力も何もないようだけれど、原文そのままを転載していることだし、今後もちゃんとリンクを張ることとしよう。


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1 件のコメント:

  1. 「翻訳権」で調べていたところ辿り着きました。とても参考になりました~
    ところでロシアにおいてはあまり著作権が守られていない(いいかげん)みたいですね
    村上春樹の小説なんかも勝手に出版されたと聞いたことがあります

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