2014年02月22日更新
前回の続き。今回は夜のパート。なんとなく、今回から「です・ます」調を止めてみた。
どうもこの話は、昼=現実、夜=幻想の二部構造になっていて、最終的にはその境界が溶けて前者が後者に侵食される模様。
現が夢に浸食される、という展開はソログープの十八番なところであります。
例によって出典は以下:
«Собрание сочинений в восьми томах Том 3. Слаще яда»収録、«Книга стремлений»項目内«Белая березка»
(БИБЛИОТЕКА РУССКОЙ КЛАССИКИサイト内、Федор Кузьмич Сологубのページより)
今回も、
『パスポート初級露和辞典』(白水社)
『岩波ロシア語辞典』(岩波書店)
『NHK新ロシア語入門』(日本放送出版協会) にお世話になりました。
加えて既存の日本語訳
「白樺」 松永信・訳(「帝國文學 第二百四十一號」収録)も参考にさせていただきました。
例によってツッコミ等は歓迎しております。
以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。
注:色つき文字部分は、私(春色)の独り言。
太字は原文、もしくは最終的な日本語訳。
Была ночь, северная, легкая, прозрачная, призрачная ночь.
メモночь:夜
северный(←северная:女性形):北の、北側の
легкий(←легкая:女性形):軽い、気軽な
прозрачный(←прозрачная:女性形):(空気などが)澄んだ
призрачный(←призрачная:女性形):幻想的な
……ええやん。でも日本語的にはちょっと読点多すぎ? 「夜だった。北国の軽やかで澄んだ、幻想的な夜だった」くらいにすべき?
Барышни сидели в саду. Никуда не пошли, — устали за день.
メモбарышня(←барышни:複数形):未婚の娘、令嬢
никуда:[否定]どこにも(…しない)
устать(←устали:過去形、複数形):疲れる、うんざりする(完了体)
→уставать(不完了体)
день:昼
「娘たちが庭に腰を下ろしていた。彼女たちはどこへも出かけなかった―昼に疲れたからだ。」
И смеялись. Шум их голосов неприятен был Сереже.
メモсмеяться(←смеялись:過去形、複数形):笑う(不完了体)
шум:騒音、ざわめき、雑音
голос(←голосов:複数形、生格):声
неприяный(←неприятен:短語尾形、中性形):不快な、不愉快な
「そして笑っていた。彼女たちの声のざわめきはセリョージャには不快であった。」
声のざわめき、って表現は日本語としては微妙かな。「笑っていた。彼女たちの声はセリョージャには不快であった」と略しても良いかな。
声のざわめき、って表現は日本語としては微妙かな。「笑っていた。彼女たちの声はセリョージャには不快であった」と略しても良いかな。
Он ушел в свою тесную каморку наверху, сел у окна, и глядел на розоватое, странное, милое небо, такое пустое и такое значительное, и ждал. Когда уйдут.
メモтесный(←тесную:女性形、対格):狭い、窮屈な
каморка(←каморку:女性形、対格)(口語)小室、物置
наверху:上に、上の階
сесть(←селу:過去形、男性単数形):座る、腰を下ろす(完了体)
→садиться(不完了体)
у+生格:~のそばに
глядеть(←глядел:過去形、男性単数形):見る、眺める(不完了体)
→поглядеть(完了体)
странный(←странное:中性形):奇妙な
милый(←милое:中性形):かわいい、魅力的な
небо:空
такой(←такое:中性形):このような、そのような
пустое:どうでもいいこと、くだらないこと
значите:重要な、意義ある
ждать(←ждал:過去形、男性単数形):待つ、待っている(不完了体)
うーん、まぁ頭から見ていけば問題ない気もするけれど、一文目を真面目に文法解釈をしてみよう。
Он ушел в свою тесную каморку наверху, сел у окна, и глядел на розоватое, странное, милое небо, такое пустое и такое значительное, и ждал.
全体を通して、主語はон。連発するи(英語で言うとand)の扱いが問題か。
動詞とиを取り出すと、ушел, сел, и глядел, и ждалとなる。彼は立ち去り、座り、and見て、and待った。
まぁこの動詞の前のиごとに、文章が切れているんだろう。その他のところにあるиはまたフェーズが違うと見た。ってことで、分かりやすくするために色分けしてみた。
動詞とиを取り出すと、ушел, сел, и глядел, и ждалとなる。彼は立ち去り、座り、and見て、and待った。
まぁこの動詞の前のиごとに、文章が切れているんだろう。その他のところにあるиはまたフェーズが違うと見た。ってことで、分かりやすくするために色分けしてみた。
Он ушел в свою тесную каморку наверху, сел у окна, и глядел на розоватое, странное, милое небо, [такое пустое и такое значительное], и ждал.
赤、オレンジ、青。オレンジ部分後半に登場するиを含む部分は、その前の中性名詞を形容していると見て[]に入れた。
「彼は上の階の狭い自室へと立ち去ると、窓の傍に座り、薔薇色がかった、不思議な、美しい空、こんなにも無意味で、こんなにも意義のある、を眺めながら、待っていた」。
一応、完了体動詞と不完了体動詞で翻訳に差を付けてみたけどいかがでしょう。
とりあえず言いたいのは、небоを形容しすぎぃ! 文章長すぎぃ!
「彼は上階の狭い自室へと戻ると、窓のそばに座った。そして薔薇色がかった不思議で美しい空、こんなにも無意味で有意義な、を眺めながら待っていた」と二文に切らせていただきます。
そして何を待っていたかと言うと、次の文章"Когда уйдут"、「立ち去る時」を。
というかここを独立させて良いものなの? 日本語だったら、ちょっと変だよ。
そして、なんで動詞が現在形になっているんだろう。ソログープさんの作品、この手の時制の謎が時折起こって、悩ましい。表現的なものなんだろうけれど、ロシア語ネイティブじゃないのでよく分かりません。
この動詞が三人称複数形なのを鑑みると、立ち去る主体は庭で笑っている娘さんたち。
まとめると「彼は上階の狭い自室へと戻ると、窓のそばに座った。そして薔薇色がかった不思議で美しい空、こんなにも無意味で有意義な、を眺めながら、彼女たちが立ち去るのを待っていた」。
「彼は上の階の狭い自室へと立ち去ると、窓の傍に座り、薔薇色がかった、不思議な、美しい空、こんなにも無意味で、こんなにも意義のある、を眺めながら、待っていた」。
一応、完了体動詞と不完了体動詞で翻訳に差を付けてみたけどいかがでしょう。
とりあえず言いたいのは、небоを形容しすぎぃ! 文章長すぎぃ!
「彼は上階の狭い自室へと戻ると、窓のそばに座った。そして薔薇色がかった不思議で美しい空、こんなにも無意味で有意義な、を眺めながら待っていた」と二文に切らせていただきます。
そして何を待っていたかと言うと、次の文章"Когда уйдут"、「立ち去る時」を。
というかここを独立させて良いものなの? 日本語だったら、ちょっと変だよ。
そして、なんで動詞が現在形になっているんだろう。ソログープさんの作品、この手の時制の謎が時折起こって、悩ましい。表現的なものなんだろうけれど、ロシア語ネイティブじゃないのでよく分かりません。
この動詞が三人称複数形なのを鑑みると、立ち去る主体は庭で笑っている娘さんたち。
まとめると「彼は上階の狭い自室へと戻ると、窓のそばに座った。そして薔薇色がかった不思議で美しい空、こんなにも無意味で有意義な、を眺めながら、彼女たちが立ち去るのを待っていた」。
Дождался. Все затихло. Мальчик спустился в сад, и подошел к своей березке.
メモдождаться(←дождался:過去形、男性単数形):待ち受ける、待ちおおせる(完了体)
→дожидаться(不完了体)
затихнуть(←затихло:過去形、中性単数形):静かになる、黙る(完了体)
спуститься(←спустился:過去形、男性単数形):降りる(完了体)
→спускаться(不完了体)
подойти(←подошел:過去形、男性単数形):(歩いて・乗り物で)近付く、近寄る(完了体)
→подходить(不完了体)
動詞だけを見ると、どれも過去形ながら、男性単数形、中性単数形、男性単数形、男性単数形と一つだけ中性が混ざっている。この中性形の動詞の主語だけが他と違うのだろう。
中性形の主語はあえてぼかした主語失踪タイプ、他の男性形の動詞の主語はセリョージャと見る。
「(彼は)待ちおおせた。まったく静かになった。少年は庭へと降りると、彼の白樺へと近付いた」。
Дача стояла на высоком берегу. Внизу шумела река, переливаясь по камням.
メモдача:(ふつう夏用の)別荘
высокой(←высоком:前置格):(高さが)高い、高いところにある
берег(←берегу:前置格):岸
внизу:下に、階下に
шуметь(←шумела:過去形、女性単数形):ざわめく、騒音を立てる
река:川
переливаться(←переливаясь:過去形、女性単数形?):(液体が)流れ移る(不完了体)
→перелиться(完了体)
「別荘が高い岸の上にあった。その下では川がさざめき、岩に沿って流れていた」。
Все шумела, тихо, упрямо, однозвучно. Шумела, плескалась.
メモвсе:いつも、絶えず
тихо:小声で、低音で、そっと、静かに
упрямо:頑固に、強情に、しつように、根気よく
однозвучно:明確に、一義的に
плескаться(←плескалась:過去形、女性単数形):(水・波が)水音を立てて動く、打ち寄せる(不完了体)
→плеснуться(完了体・一回)
主語がないけれど、動詞が女性形になっているから、女性名詞である「川」なんだろう。
なので「(川は)絶えずさざめいていた、静かに、強情に、一様に。(川は)さざめき、打ち寄せていた」。
Туманом прикрылась, и журчала, шурша о камни, о берег.
メモтуман(←туманом:造格):霧、もや、かすみ
прикрыться(←прикрылась:過去形、女性単数形):身を覆う(完了体)
→прикрываться(不完了体)
журчать(←журчала:過去形、女性単数形):(水の流れが)音を立てる
шуршать(←шурша:?):さらさら鳴る、かすかにざわめく(不完了体)
同じように、これまた主語は川。「(川は)霧で身を覆い、音を立てて、岩に、岸に当たってはさらさらと音を立てていた」。
Тоненькая, тоненькая, как хворостинка, с зеленоватым легким телом и с зелеными светлыми глазами, поднялась из воды русалка.
メモхворостинка[指小]
→хворостина:長い枝、やせた細い木
зеленоватый(←зеленоватым:複数形、与格):(顔色が)青ざめた、緑がかった、青みを帯びた
легкий(←легким:複数、与格):華奢な、スマートな
тело(←телом:単数形、造格):(人・動物の)からだ
зелёный(←зелеными(зелёными):複数形、造格):緑色の、(顔色が)青ざめた、土気色の
светлый(←светлыми:複数形、造格):光りに満ちた、明るい
подняться(←поднялась:過去形、女性単数形):上方に移動する、のぼる、あがる(完了体)
→подниматься(不完了体)
русалка:ルサルカ(俗間信仰で人魚のような水の精)
突然のルサルカに当惑不可避。
この当惑のせいで、以前に読んだロシア作家の短篇を思い出した。チリコフの「森の祕密(畫家の夢)」だった気がするが、正直怪しい。
とりあえず私が思い出した作品では、森に住まう妖精というか日本人的には妖怪の方がしっくりくるような存在が主役だった。
彼らは森を訪れる旅人をからかい、樵の女房とイイ仲になったりしながら暮らしていたが、ある日人間が森の大規模な伐採を始めてしまって、さぁ大変。
最初は抵抗したものの抗いきれずに、彼らは森の死を覚悟して森を捨て、人間社会で暮らすことを選ぶ……という内容だった気がするのだが、この展開がとても意外に思えたのが印象に残っている。
いやーだって、森に住まうナニカなんだし、森を失うのが確定した時点で次の展開は「森と共に儚く死ぬ」か「呪縛霊的な存在になって貞子ばりの復讐に走る」かの二択だと思ったんですよ。
日本でのこの手の話では「森は諦めて人間社会で人間のフリして暮らす」って選択肢は与えられないと思う。まぁ単純に私が知らないだけかもしれないけれど。
そんなわけで、人間と暮らしちゃうんですか、暮らせちゃうんですか、広いなロシア!との読後感を抱いたのが印象的で、こうして再度思い出した次第。
どこかの建築家(誰か忘れた)が著作の中で、世界の建築を紹介しながら、気候や風土が人間の思考の方向性を決める、簡単に自然を征服できる地域では人間は自らを偉大な存在だと認識し、自然災害に見舞われる土地では、偉大なる地位は人間ではなく神に捧げられるなんて内容のことを書いていたのを同時に思い出したりしたわけです。
加えて疑問に思うのは、ロシア正教ってどこまでセーフなんだろうってこと。
ルサルカがー、とかプロテスタントの作家は書かないと思うんですよね。ソログープの宗教観について述べた文章を見たことはないけれど、特筆されないってことは普通なんだろうし、ロシアで普通と言えばロシア正教の信者なんだろうなーと勝手に想像しているのですが。
ゴーゴリの作品中では、キリスト教徒(たぶんここではロシア正教を指す)であることを誇りにする主人公が、ユダヤ人に対してと同じ程度に強烈なヘイトをカトリックらしきドイツ人にぶつけていたし、カトリックと凄まじく仲が悪いのは分かる。
が、カトリックの聖人山盛り現象がイヤって訳でもなさそうだし、そもそもロシア正教もなんかいっぱい祭ってるみたいだし……で、謎は深まるばかりだ。
とりあえず、「森には妖精がー」とかアニミズム的なことを口走っても異端視されたりしないものなのかが知りたい。
と一通り愚痴ったので、次に行こう。水の精と書いてルサルカと読ませれば伝わるだろうか。
日本でもカードゲームやRPGではルサルカさんが普通に登場していた気もするから、ルサルカだけでも伝わるのかな。
「緑がかった華奢な体と、緑色の輝く瞳を持った、細い細い長枝のような水の精(ルサルカ)が、水から上がって来た」。
Сквозь тонкое её тело предметы слабо просвечивали, и глаза её смотрели любопытно и странно, — неживые, не наши очи нежити, зачем-то таящейся около.
メモсквозь:通して、貫いて、通り抜けて
предмет(←предметы:複数形):物体、物
слабый(←слабо:短語尾形、中性形):弱い、小さい
просвечивать(←просвечивали:過去形、複数形):啓蒙する、(何かを通して)光り輝く(不完了体)
любопытный(←любопытно:短語尾形、中性形):好奇心に富む、物見高い
странный(←странно:短語尾形、中性形):熱烈な、激烈な、熱中した
око(←очи:複数形):(廃)(詩)目、眼
неживой(←неживые:複数形):生きていない、死んだ、生気の無い
нежить(←нежити:生格):[集合](廃)妖精、霊
зачем-то:(一定の)何らかの理由で、何かの目的で
таящийся(←таящейся:女性形、生格or与格or造格)」能動形動詞現在
→таить:隠す、隠し持つ、秘する(不完了体)
→утаить(完了体)
около:(廃)まわりに、周囲に
うーん、うーん……。ルサルカの当惑を越えたすぐ後に、この仕打ち。
「ほっそりとした彼女の体を通して、物体がかすかに光り、彼女の目は好奇心に満ちて熱烈に見る――我々の妖精の目とは異なり、生気のない、何らかの理由で周囲に隠しているところの」。
我々の妖精って突然言われても、あの、その。うーん。
ルサルカの体の向こうから物体が透けて見えた、んだろうたぶん。それもかすかに光って。
隠すという動詞таитьの主語は直前のかと思ったが、けれど女性形になっているのを考えるとルサルカなのかな。でもそれだと意味が通らないから、やっぱり直前のнежитиか。
「ほっそりとした彼女の体を透かして、(向こうの)物が微かに光っていた。好奇心に満ち熱中した彼女の瞳は――何らかの理由で周囲に隠されているところの我々の妖精の目とは異なり、生気がなかった」。
もうちょっと整理すると、「ほっそりとした彼女の体を透かして、向こうの物が微かに光って見えた。彼女の瞳は、好奇心に満ち熱中しており、何らかの理由で周囲に隠されている我々の妖精とは異なり、生気がなかった」。
И тонкая, с зеленовато-белым телом, березка тихонько вздрагивала и лепетала что-то своими клейкими, сладко-душистыми листочками. Лепетала, шептала. Вздрагивала.
メモзеленоватый(←зеленовато:短語尾形、中性形):緑がかった
тихонько:(口)静かに、穏やかに、おとなしく
вздрагивать(←вздрагивала:過去形、女性単数形):身震いする(不完了体)
→вздрогнуть(完了体)
лепетать(←лепетала:過去形、女性単数形):(木の葉・川の水などが)さらさらいう、やさしい音を立てる(不完了体)
что-то:何か、あるもの
клейкий(←клейкими:複数形、造格):粘着性の、べたつく
сладкий(←сладко:短語尾形、中性形):甘い、甘ったるい
душистый(←душистыми:複数形、造格形):いい匂いのする
セリョージャを誘惑(?)する水の精に対して、白樺さんはと言えば、「細い、緑がかった白い幹を持つ白樺は、自身の粘着性の甘い匂いのする小葉を、さらさらと静かに震わせた。さらさらと音を立てて、ささやいた。震えた」。
まぁ木だしね。
Из-за кустов пробиралась нездешняя, звала:
メモиз-за:…の後ろから、…の陰から
кусу(←кустов:複数、生格):低木、潅木
пробираться(←пробиралась:過去形、女性単数形):押し分けて通る、やっと通り抜ける(不完了体)
→пробраться(完了体)
нездешний(←нездешняя:女性形):(詩)この世のものならぬ、あの世の
この形容詞が修飾している名詞はどこへ……。まぁ、主語はルサルカだし、ルサルカを形容してるのかな。
「茂みの陰から、この世のものならぬ存在が出てきて、呼びかけた」
— Ко мне иди лучше. Со мною веселее. Она молчит. Я тебе сказок наскажу.
メモлучше:よりよい
веселый(←веселее:比較級):楽しい、愉快な
молчать(←молчит:現在形、三人称単数形):黙っている、沈黙している(不完了体)
наскать(←наскажу:現在形、一人称単数形):(たくさん)話す、語る(完了体)
→насказывать(不完了体)
この世のものならぬルサルカさんの台詞。
「私のところに来た方が良い。私と居るほうがより楽しいよ。彼女は黙っている。私はお前にたくさんの物語を話してあげよう。」
наскатьと完了体なのが良いですね。完了させる(=話す)気満々ですよ。
日本語としてイマイチなので、手を入れて、「私のところへおいで。楽しいよ。白樺は黙しているが、私ならお前に物語を読んであげられる」。
……なんかニュアンスが変わっちゃったような気がしないでもない。
Сережа сказал сердито:
メモ
сердитый(←сердито:短語尾形、中性形):怒りっぽい、立腹している
白樺スキーなセリョージャは、当然ながら言い返す。「セリョージャは怒って言った」。
нужнй(←нужны:造格):必要な
Гауф(←Гауфа:生格):Вилагелам Гауф
→ヴィルヘルム・ハウフ:ロマン派に属するドイツの作家
Афанасьев(←Афанасьева:生格):Александр Николаевич Афанасьев
→アレクサンドル・ニコライェヴィチ・アファナーシェフ:『ロシア民話集』の刊行者、ロシアのグリム兄弟とも
то-то:(口)(警告として)いいか、わかったか
セリョージャの反論。「行っちまえ! 僕に必要なのがお前のお話だって? ハウフの物語は読んだのか? 読んでないだろ? アファナーシェフは知ってるのか? わかったか。出て行けよ」。
途中の感嘆符を一つ疑問符に変えた。
ハウフもアファナーシェフも共に日本ではマイナーな模様。あまり日本語に翻訳されていない。
個人的にハウフと言えばドイツの後期ロマン派作家だけれど、子供向けの童話集も刊行しているらしい。アファナーシェフはロシアの民話を収集して歩いた人とのこと。
сердитый(←сердито:短語尾形、中性形):怒りっぽい、立腹している
白樺スキーなセリョージャは、当然ながら言い返す。「セリョージャは怒って言った」。
— Пошла! Нужны мне твои сказки! Сказки Гауфа читала? Нет? И Афанасьева не знаешь? То-то! Уходи.
メモнужнй(←нужны:造格):必要な
Гауф(←Гауфа:生格):Вилагелам Гауф
→ヴィルヘルム・ハウフ:ロマン派に属するドイツの作家
Афанасьев(←Афанасьева:生格):Александр Николаевич Афанасьев
→アレクサンドル・ニコライェヴィチ・アファナーシェフ:『ロシア民話集』の刊行者、ロシアのグリム兄弟とも
то-то:(口)(警告として)いいか、わかったか
セリョージャの反論。「行っちまえ! 僕に必要なのがお前のお話だって? ハウフの物語は読んだのか? 読んでないだろ? アファナーシェフは知ってるのか? わかったか。出て行けよ」。
途中の感嘆符を一つ疑問符に変えた。
ハウフもアファナーシェフも共に日本ではマイナーな模様。あまり日本語に翻訳されていない。
個人的にハウフと言えばドイツの後期ロマン派作家だけれど、子供向けの童話集も刊行しているらしい。アファナーシェフはロシアの民話を収集して歩いた人とのこと。
Стеклянным, тонким, звонким засмеялась смехом…
メモстеклянный(←стеклянным:造格):(目・目つきなどが)生気のない、動きのない
тонкий(←тонким:造格):かすかな、細く高い
звонкий(←звонким:造格):響き渡る、よく鳴る
засмеяться(←засмеялась:過去形、女性単数形):笑う、笑うような表情を浮かべる(完了体)
→смеяться(不完了体)
しゅ、主語はどれ……。「ガラスのような、細く高く、よく響く笑い声で笑いました……。」
笑ったのは、ルサルカか。なら、「ルサルカの笑う声は、ガラスのように細く高く、よく響きました……」のほうが日本語的?
Засмеялась, ушла, легкая, прозрачная, призрачная.
メモпрозрачный(←прозрачная:女性形):(水・ガラスなどが)透明な、澄んだ
主語は……やっぱりルサルカかな。「(彼女は)笑って、立ち去りました、軽やかで、澄んだ、幻の」。
後半の形容詞群は何に掛かっているんだろう。ルサルカ?
ならば「軽やかで澄んだ、幻影のような彼女は、笑って立ち去った」。
Где-то в камышах долго лепетала что-то быстрое, неразборчивое…
メモгде-то :(はっきりしないが特定の)どこかに、どこかで
камыш(←камышах:複数形、前置格):アシ
долго:長らく、長い間
быстрый(←быстрое:中性形):速い、迅速な
неразборчиый(←неразборчивое:中性形):不明瞭な、聞き取りにくい
「アシの茂みの近くで、長いこと囁いていた、何やら早口で不明瞭なことを……」。
主語はやっぱりルサルカだよなぁ。ルサルカさん、笑って立ち去ったんじゃなかったの。
Не то смеялась, не то плакала, — и жаловалась, и смеялась.
メモсмеяться(←смеялась:過去形、女性単数形):笑う(不完了体)
плакать(←плакала:過去形、女性単数形):泣く(不完了体)
жаловаться(←жаловалась:過去形、女性単数形):…を訴える(不完了体)
→пожаловаться(完了体)
「笑うでもなく、泣くでもなく――ただ不満を訴えては、笑うのだ」。
笑ったのか笑ってないのか、ハッキリしてくださっても良いんですよ。
Русалочий смех — тонки слезы. Русалочий смех. Лепет воды по каменьям.
メモрусалочий:ルサルカのような、妖しく魅惑的な
слёза(←слезы(слёзы):複数形)(複数形で)涙、泣くこと
лепет:(木の葉・小川などの)さらさらいう音
ルサルカの形容詞形が存在すること&ちゃんと辞書に載っていることに衝撃。
「ルサルカのような笑い声――かすかな涙。ルサルカのような笑い声。岩の周りの水面の囁き声」。
あれですよ、私一つ決意したことがあります。ロシア語の詩には手を出しません。
ような、と形容すると、ようなってどんなよ、との疑問が発生しちゃうので、思い切って切り捨てる。
「ルサルカの笑い声、かすかな涙。ルサルカの笑い。岩の周囲でせせらぐ水の音。」
ルサルカさんは水の精だから、水の音がルサルカの声なんだよ(テキトー)。
И о чем лепечет? И о чем смеется? И на что жалуется?
メモсмеяться(←смеется:現在形、三人称単数形)
жаловаться(←жалуется:現在形、三人称単数形)
о чем、о чемと来たのに、最後がна чтоでなんだか残念。
日本語訳は「何について」「何に対して」「何を」と全部ズラしてみた。
白樺、川、ルサルカと、登場するのは全て女性名詞。故に動詞も女性形がワラワラと出てきており、なんとも女性的な雰囲気。
冒頭に登場する娘さんたちがセリョージャにとって不快だと明記されているあたりに、セリョージャの、そして作者ソログープの世界観が垣間見えて、なかなか良いですね。
ただここらへんは、日本語にはないがロシア語にはある機能によって担保されているせいで、日本語にすると雰囲気が失踪している気が。
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