2014年09月19日更新
前回の続きにして最終章。
今回も短め。ソログープの短編は一章が長い頭でっかち形式が多い気がする。
出典は以下:
«Собрание сочинений в восьми томах Том 6. Заклинательница змей»収録、«Неутолимое»項目内«Мечта на камнях» (БИБЛИОТЕКА РУССКОЙ КЛАССИКИサイト内、Федор Кузьмич Сологубのページより)
今回も、
『岩波ロシア語辞典』(岩波書店)
『NHK新ロシア語入門』(日本放送出版協会) にお世話になりました。
加えて既存の日本語訳
「お前は誰だ?」 前田晁・訳(「早稲田文學 第百九十四號」収録)も参考にさせていただきました。
「お前は誰だ?」 前田晁・訳(「早稲田文學 第百九十四號」収録)も参考にさせていただきました。
例によってツッコミ等は歓迎しております。
以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。
以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。
注:色つき文字部分は、私(春色)の独り言。
太字は原文、もしくは最終的な日本語訳。
Радостно стало Гришке, когда он домечтал до этого. Он побежал еще быстрее. Ничего не замечал вокруг себя. Вдруг неожиданный толчок заставил его опомниться. Он испугался прежде, чем успел понять, что с ним случилось.
メモ
радостно:喜んで、嬉しげに、[無人述]嬉しい、楽しい
домечтать(←домечтал:過去形、男性形)
→до-[接頭辞](動詞に付して)「達成」、「補足」、「やり過ぎ」の意味
→мечтать:空想に耽る、空想する(不完了体)
замечать(←замечал:過去形、男性形):目に留める、認める、気付く、見付ける(不完了体)
→заметить(完了体)
вокруг:周りに、周りを
неожиданный:思いがけない、予想外の、意外な、突然の、急な
толчок:突くこと、押すこと、振動、揺れ
заставить(←заставил:過去形、男性形):…に…するよう強いる、余儀なく…させる(完了体)
→заставлять(不完了体)
опомниться:我に返る(完了体)
→опоминаться(不完了体)
испугаться(←испугался:過去形、男性形)
→пугаться:…に驚く、…を怖がる、…に怯える(不完了体)
→напугаться(完了体)
прежде:以前に、かつて、まず初めに
прежде, чем…:…の前に
прежде, чем…:…の前に
успеть(←успел:過去形、男性形):…する間がある、間に合って…できる、ある期限内に…する(完了体)
→успевать(不完了体)
понять:理解する(完了体)
→понимать(不完了体)
случиться(←случилось:過去形、中性形):起こる、生じる、(口)(ある状態で)現れる、…ということになる(完了体)
→случаться(不完了体)
「グリーシュカは楽しかった、彼がここまでのやり過ぎの空想をしている間は。彼はもっと早く走り出した。自分の周囲の何も視てはいなかった。突然思いがけない衝撃が余儀なく彼を我に返させた。彼はまず初めに思わず驚き、何によってか理解する間があり、彼に何が起こったのか」。
なるほど分からん。
追記:接頭辞до付きの動詞&前置詞доの組み合わせで、「ここまで…する」との意味になる。
だから最初の一文は「グリーシュカは楽しくなった、彼が空想でここまで至った時に」の意になるハズ。
追記:接頭辞до付きの動詞&前置詞доの組み合わせで、「ここまで…する」との意味になる。
だから最初の一文は「グリーシュカは楽しくなった、彼が空想でここまで至った時に」の意になるハズ。
「グリーシュカはこんな空想を描くと、楽しくなった。彼は更に早く走り出した。周囲のことは何も目に入ってはいなかった。突然の思いがけない衝撃が、彼を現実に戻した。彼は何が起こったのか理解するよりも前にビックリした」。
Мешок с покупками из рук его выпал, тонкая бумага разорвалась, и желтые лимонные сухарики рассыпались по избитым, засоренным серым плитам тротуара.
メモ
мешок:袋
покупка(←покупками:造格):買うこと、購入、買い物
выпать(←выпал:過去形、男性形):滑り落ちる、転げ落ちる(完了体)
→выпадать(不完了体)
бумага:紙
разорваться(←разорвалась:過去形、女性形):裂ける、破れる、穴が開く(完了体)
→разрываться(不完了体)
жёлтый(←жёлтые:複数形):黄色い
рассыпаться(←рассыпались:過去形、複数形):零れる、散らばる、分散する(完了体)(不完了体)※アクセントが違う
избитый(←избитым:複数形、与格):受動形容分詞過去
→избить:散々に打つ(完了体)
→избивать(不完了体)
засорённый(←засорённым:複数形、与格):受動形容分詞過去
→засорить:(ゴミなどで)汚す、一杯にする、詰まらせる、害する(完了体)
→засаривать(不完了体)
плита(←плитам:複数形、与格):(石・金属などの)板、プレート、レンジ
「買い物の袋が彼の腕から滑り落ち、薄い紙は破け、黄色いレモンのラスクたちは散らばった、散々に打たれ汚された灰色の歩道の板の上に」。
「彼の腕から買い物袋が滑り落ちた。薄い紙が裂け、散々に打たれ汚れた灰色の歩道の石畳に黄色いレモンのラスクが散らばった」。
— Скверный мальчишка, как ты смеешь толкаться! — визгливо кричала на Гришку высокая, полная дама, на которую он набежал.
メモ
скверный:嫌な、嫌らしい、不快な、下劣な、醜い、汚い
толкаться:相手を押す、人(の身体)を突く(不完了体)
визгливо:金切り声で、高い鋭い音で
кричать(←кричала:過去形、女性形):叫ぶ、悲鳴を上げる、怒鳴りつける、叱りつける、がみがみ言う(不完了体)
→крикнуть(完了体・一回)
полный(←полная:女性形):溢れるばかりの、山盛りの、肉付きの良い、太り気味の
набежать(←набежал:過去形、男性形):ぶつかる、(走って来て)突き当たる(完了体)
→набегать(不完了体)
「『嫌な少年だね、こんな風に笑って押してくるんだから!』と金切り声でグリーシャを叱りつけたのは、高い肉付きの良い婦人、彼女は彼がぶつかった相手だった」。
「『嫌な子だね、こんな風に笑いながら押してくるんだから!』と、金切り声でグリーシュカを叱りつけたのは、背の高い太った婦人だった。彼がぶつかった相手だ」。
От нее пахло противными духами, к ее сердитым маленьким глазам был приставлен противный черепаховый лорнет. Все лицо ее было противное, грубое, сердитое и наводило на Гришку страх и тоску. Гришка испуганно смотрел на барыню и не знал, что делать. Ему казалось, что уже дворники и городовые, страшные фантастические существа, идут со всех сторон и вот-вот схватят его и потащат куда-то.
メモ
пахнуть(←пахло:過去形、中性形):(ときに無人動)匂う、匂いがする(不完了体)
противный(←противными:複数形、造格):嫌な、不快な、堪らない
сердитый(←сердитым:複数形、与格):怒りっぽい、短気な、立腹している、憤慨している
маленький(←маленьким:複数形、与格):小さい
приставленный(←приставлен:短尾形、男性形):受動形容分詞過去
→приставить:側に置く、立てかける、ぴったり近づける(完了体)
→приставлять(不完了体)
противный:(長尾形)(廃)向かい合う、反対側の、対立する、反対の
черепаховый:カメの肉で料理した、鼈甲の
лорнет:(廃)(口)ロルネット(柄付き眼鏡)
наводить(←наводило:過去形、中性形):(案内してある場所へ)連れて行く、導く、(ある恐怖・寂しさ・悲しみなどを)起こさせる、抱かせる(不完了体)
→навести(完了体)
страх:恐れ、恐怖、畏怖、怖じ気、不安
тоска(←тоску:対格):憂愁、哀愁
испуганно:驚いて、驚いた様子で
казаться(←казалось:過去形、中性形):…のように見える、…の様子である、…の印象を与える(不完了体)
дворник(←дворники:複数形):屋敷番、門番、掃除番
городовой(←городовые:複数形):(帝政ロシアの)巡査
страшный(←страшные:複数形):恐ろしい、恐るべき、怖い、気味の悪い
фантастический(←фантастические:複数形):幻想的な、現実離れした、不思議な、奇怪な
существо(←существа:複数形):生き物、人間、人、動物
вот-вот:(口)今にも、もう少しで
схватить(←схватят:現在形、三人称複数形):(素早く)掴む、取る、(逃げないように)捕まえる、(口)逮捕する(完了体)
→схватывать(不完了体)
потащить(←потащат:現在形、三人称複数形?):引っ張り始める、持ち運び始める、(口)行かせる(完了体)
「彼女からは嫌な匂いがし、彼女の立腹している小さな目は側に置いていた反対側の鼈甲のロルネットを。全ての彼女の顔は嫌で、不快で、怒りっぽくて、グリーシュカに恐れと憂愁とを抱かせた。グリーシュカは驚いて婦人を見たが知らなかった、何をすればいいのか。彼には思えた、既に門番や巡査、恐ろしい現実離れした人間達、が全ての方角からやって来て今にも彼を逮捕して、どこへか行かせると」。
「彼女からは嫌な匂いがした。その怒った小さな目は、嫌な鼈甲の眼鏡と接していた。彼女の顔の全てが不快で不愉快で怒りっぽく、グリーシュカに恐怖と憂いとを抱かせた。グリーシュカは驚いて婦人を見たが、何をしていいのか分からなかった。門番や巡査などの、恐ろしい現実離れした存在が、あらゆる方角からやって来ては今にも彼を逮捕して、どこかに連れて行かれるのではないかと思った」。
Шедший рядом с барынею молодой человек, слишком щегольски одетый, в цилиндре, в перчатках противного желтого цвета, смотрел на Гришку разъяренными, вытаращенными красными глазами, — и весь он был красный и злой.
メモ
шедший:能動形容分詞過去
→идти:[定]行く、進む、(何かに対してある位置を)占める(不完了体)
молодой:若い
щегольски:洒落ている、生きの、凝っている
одетый:受動形容分詞過去
→одеть:(…に衣服を)着せる、…に…の服装をさせる(完了体)
→одевать(不完了体)
цилиндр(←цилиндре:前置格):円筒、円柱、シルクハット
перчатка(←перчатках:複数形、前置格):(一組は複数形で)(五本指に別れた)手袋
противный(←противного:生格):嫌な、不快な
разъяренный(←разъяренными:複数形、造格):受動形容分詞過去
→разъярить:激怒させる、ひどく怒らせる(完了体)
→разъярять(不完了体)
вытаращенный(←таращенными:複数形、造格):受動形容分詞過去
→вытаращить:引っ張り出す、引き摺り出す(完了体)
→вытаскивать(不完了体)
「婦人の隣に占めているのは若い人、あまりに洒落ているのを着せられていた、シルクハット、嫌な黄色の色をした手袋、がグリーシュカを見た、ひどく怒って引き摺り出された赤い目で―彼の全ては赤くて悪意に満ちていた」。
引き摺り出された目ってなんだ? と思ったが、既存の訳では「ひどく飛び出している」となっていた。つまりは出目ってことかしら。
「婦人の隣には若い男がいた。シルクハットに嫌らしい黄色をした手袋と、あまりにも洒落すぎた服装をしていた。彼は酷く怒っており、出っ張った赤い目でグリーシュカを見た。彼の全ては赤くて悪意に満ちていた」。
— Хулиганишка негодный! — процедил он сквозь зубы.
メモ
хулиганишка[指小形]
→хулиган:ならず者、ごろつき、ヤクザ
негодный:使用に適さない、使い物にならない、(口)質の悪い、下劣な
процедить(←процедил:過去形、男性形):漉す、濾過する、(口)口の中でゆっくり[いやいや、ぞんざいに]言う(完了体)
→процеживать(不完了体)
сквозь:(廃)通して、貫いて、通り抜けて
зуб(←зубы:複数形):歯
「『下劣なごろつきめ!』と、彼は歯を通り抜けて口の中でぞんざいに言った」。
「『下劣なごろつきめ!』と、彼は歯の間からぞんざいに言った」。
Небрежным движением сбил с Гришки шапку, больно подергал его за ухо, отвернулся и сказал барыне:
— Пойдемте, мамаша. С этою дрянью не стоит связываться.
メモ
небрежный(←небрежным:造格):(自分の仕事に)不熱心な、怠慢な、いい加減な、ぞんざいな、横柄な、冷淡な、だらしない
движение(←движением:造格):運動、動き
сбить(←сбил:過去形、男性形):叩き落とす、突き落とす(完了体)
→сбивать(不完了体)
шапка(←шапку:対格):(鍔のないふつう温かく柔らかい)帽子
больно:痛く、痛いほどに
подёргать(←подёргал:過去形、男性形):(しばらく・数回)引っ張る(完了体)
ухо:耳
отвернуться(←отвернулся:過去形、男性形):(ねじなどが)抜ける、ゆるむ、横を向く、顔を背ける(完了体)
дрянь(←дрянью:造格):[集合](口)役に立たぬ物、がらくた、くず、ゴミ
стоить(←стоит:現在形、三人称単数形):[無人動]…する価値がある、…すべきである、…する必要がある
связываться:互いに身体を結びつける、(普通良くない人・事と)関わり合いになる(不完了体)
「横柄な動きでグリーシュカの帽子を叩き落とし、痛いほどに彼の耳を引っ張り、顔を背けて婦人に言った。
『行きましょう、ママ。この屑と関わり合いになる価値はない』」。
「横柄な動きでグリーシュカの帽子を叩き落とすと、彼の耳を痛いほどに引っ張った。それから顔を逸らし、婦人に言った。
『行こうよ、ママ。こんなクズと関わり合いになる価値なんてない』」。
— Но какой дерзкий мальчишка! — шипела барыня, отворачиваясь. — Грязный оборвыш, туда же толкается! Это прямо возмутительно! По улицам спокойно идти нельзя! Чего полиция смотрит!
メモ
дерзкий:厚かましい、不作法な、不遜な、大胆な、不敵な
шипеть(←шипела:過去形、女性形):しゅうしゅう言う、(なだめたり黙らせたりするために)しーっと言う、(口)声を押さえて[低い声で]話す、ぶつぶつ不平を言う(不完了体)
отворачиваясь:副分詞
→отворачиваться:(廃)(俗)そっぽを向く、付き合いをやめる、関係を断つ(不完了体)
→отвернуться(完了体)
грязный:泥だらけの、泥の付いた、汚れた、汚い、不潔な
оборвыш:(口)ぼろを纏った人(しばしば子供)
туда же:(口)…のくせに、よくもまぁ人並みに(…するものだ)
туда же:(口)…のくせに、よくもまぁ人並みに(…するものだ)
толкаться(←толкается:現在形、三人称単数形):(相手を)押す、人(の身体)を突く
прямо:真っ直ぐに、(口語)全く、実に、まさに
возмутительно:激情を呼び起こすように、けしからぬ、もってのほか
спокойно:静かに、穏やかに、落ち着いて
полиция:(帝政ロシアおよび外国の)警察
「『でもこんなに不作法な少年ね!』と、婦人はぶつぶつ不平を言い、そっぽを向きながら。『汚い襤褸を纏った子供のくせに、人を押すんだからね! これは実にけしからぬ! 通りの上を落ち着いて歩くことも出来ない! 警察は何を見ているんだか!』」
「『それにしたって不作法な子供だこと!』と、そっぽを向きながら婦人はぶつぶつと言った。『汚い貧乏人のくせに、人のことを押してくるんだからね! 全く冗談じゃないよ! 通りを安心して歩くことも出来やしない! 警察は何を見ているんだか!』」
прямо:真っ直ぐに、(口語)全く、実に、まさに
возмутительно:激情を呼び起こすように、けしからぬ、もってのほか
спокойно:静かに、穏やかに、落ち着いて
полиция:(帝政ロシアおよび外国の)警察
「『でもこんなに不作法な少年ね!』と、婦人はぶつぶつ不平を言い、そっぽを向きながら。『汚い襤褸を纏った子供のくせに、人を押すんだからね! これは実にけしからぬ! 通りの上を落ち着いて歩くことも出来ない! 警察は何を見ているんだか!』」
「『それにしたって不作法な子供だこと!』と、そっぽを向きながら婦人はぶつぶつと言った。『汚い貧乏人のくせに、人のことを押してくるんだからね! 全く冗談じゃないよ! 通りを安心して歩くことも出来やしない! 警察は何を見ているんだか!』」
Барыня и молодой человек, сердито переговариваясь, пошли прочь. Гришка поднял свою шапку, подобрал и запихал кое-как в лохмотья бумажного мешка рассыпавшиеся лимонно-желтые сухарики и побежал домой. Ему было стыдно и плакать хотелось, но он не заплакал.
メモсердито:腹を立てて、怒って、非常に激しく、猛烈に
переговариваясь:副分詞
→переговариваться:二言三言言葉を交わす(不完了体)
прочь:脇へ、向こうへ、遠くへ、離れて
поднять(←поднял:過去形、男性形):拾い上げる、取り上げる、持ち上げる(完了体)
→поднимать(不完了体)
подобрать(←подобрал:過去形、男性形):拾い集める、拾い上げる(完了体)
→подбирать(不完了体)
запихать(←запихал:過去形、男性形):(口)押し込む、突っ込む(完了体)
→запихивать(不完了体)
кое-как:(廃)何らかの方法で、どうにかして、いい加減に、ぞんざいに、雑に、どうやらこうやら
лохмотья:ぼろぼろの衣服、ぼろ
рассыпавшийся(←рассыпавшиеся:複数形):能動形容分詞過去
→рассыпаться:零れる、散らばる(完了体)(不完了体)
стыдно:[無人述]恥ずかしい
заплакать(←заплакал:過去形、男性形):[始発](完了体)
→плакать(不完了体)
「婦人と若い男とは、腹を立てて二言三言言葉を交わしながら、遠くへと去った。グリーシュカは自分の帽子を取り上げ、拾い上げて何とか押し込んだボロボロの紙の袋に散らばったレモン-黄色のラスクを、そして家へと走り始めた。彼は恥ずかしくて泣きたいと思ったが、しかし彼は泣き始めなかった」。
「婦人と若い男とは怒って何かしらをの会話を交わしながら、遠くへと去って行った。グリーシュカは自分の帽子を拾い上げ、レモンの黄色いラスクを拾い上げるとボロボロの紙の袋の中に何とかして押し込んだ。そして家へ向かって走り始めた。彼は恥ずかしくて泣きたかったが、けれども泣きはしなかった」。
Уже не мечтал о Турандине и думал: «Она такая же злая, как и все здешние люди. Она навела на меня страшный сон, и никогда мне не проснуться от этого сна, и не вспомнить мне во веки моего настоящего имени. И не узнаю никогда взаправду, кто же я».
メモздешний(←здешние:複数形):(口)ここの、この土地の
навести(←навела:過去形、女性形):(案内して在る場所に)連れて行く、(恐怖・寂しさ・悲しみなどを)起こさせる、抱かせる(完了体)
→наводить(不完了体)
страшный:恐ろしい、恐るべき、息詰まるような、つらい、やり切れない
сон:眠り、睡眠、夢
проснуться:目覚める(完了体)
→просыпаться(不完了体)
вспомнить:思い出す、思い起こす(完了体)
→вспоминать(不完了体)
век(←веки:複数形(廃)):世紀、時代、(定語を伴って)一生、生涯
узнать(←узнаю:現在形、一人称単数形):知る、(秘密を)見付ける、見破る(完了体)
→узнавать(不完了体)
взаправду:(俗)本当に、実際に、冗談でなく、本気で
「もうツランディナのことは空想しなかったが考えた。『彼女は余りにも意地が悪い、全くここの人と同じだ。彼女は僕に抱かせた恐ろしい夢を、そして決して僕を目覚めさせないこの夢から、そして僕に思い出させない生涯中僕の本当の名前を。知らない決して本当に、自分が誰なのか』」。
「彼はもうツランディナのことを空想しはしなかった。だが考えた。『彼女はとても意地が悪い。ここの人と全く同じだ。彼女は僕に恐ろしい夢を与えて、その上で僕をこの夢から決して目覚めさせないんだ。僕は一生思い出せない、僕の本当の名前を。決して知らないのだ本当は、自分が一体誰なのか』」。
Кто же я, посланный в мир неведомою волею для неведомой цели? Если я — раб, то откуда же у меня сила судить и осуждать, и откуда мои надменные замыслы? Если же я — более чем раб, то отчего мир вкруг меня лежит во зле, безобразный и лживый? Кто же я?
メモпосланный:受動形容分詞過去
→послать:(人を)派遣する、行かせる、やる(完了体)
→посылать(不完了体)
неведомый(←неведомою:女性形、造格):知らない、未知の
воля(←волею:造格):意思、志、決意
цель(←цели:生格):目標、目的、狙い、企図
раб:奴隷
откуда:[疑問] どこから、誰から、どうして、[不定](口)(任意の)どこかから、どこからでも
сила:力、威力、勢力
судить:判断する、判定する、評価する、(口)非難する(不完了体)
осуждать:有罪と認める、…に有罪の判定を下す、非難する、運命付ける、定める(不完了体)
→осудить(完了体)
надменный(←надменные:複数形):傲慢な、横暴な、不遜な、驕った
замысел(←замыслы:複数形):計画、企画、もくろみ
отчего:[疑問]なぜ、どうして
безобразный:醜い、不格好な、無様な
лживый:嘘つきの、二枚舌の、偽善的な
突然地の文で"я" と言われてもマジで困るんですけど! お前誰だよ。
とりあえずここで辻褄を合わせるために、この直前の"кто же я"をいつもの「僕は一体誰なのか」ではなく「自分は一体誰なのか」とズラしておいた。
尚、このスライド方法は既存の訳からパクったことをここに告白しておきたいと思います。
посланныйは直前のяに、最後のбезобразныйとлживыйはмирに掛かっているようだ。
「一体誰なんだ自分は、世界に派遣された未知なる意思により未知なる目的のために? もしも私が―奴隷ならば、どこから私の力が来たのか、非難して有罪だと認める、そしてどこから来たのか私の傲慢な企画たちが? もしも私が―奴隷以上の存在ならば、何故私の周りの世界は悪の中に横たわっているのか、醜く、偽善的な」。
日本語は形容詞と名詞の結びつきが弱すぎて、ロシア語のこのキッチリとしたペアリングを反映させるのは難しい。
「自分は一体誰なんだ? 未知なる意思により未知なる目的のためにこの世に生み出された私は、一体誰なんだ? もしも私が奴隷ならば、他人を非難し有罪だと認定するこの私の力は、どこかから来たのだろう、私の傲慢なるもくろみはどこから? もしも私が奴隷よりも幾分上等な存在だとすれば、何故私の周りの世界は悪の中に微睡んでいるのか。この醜く、偽善的な世界は」。
Смеется над бедным Гришкою, и над его мечтами, и над его тщетными вопросами жестокая, но все же прекрасная Турандина.
メモбедный(←бедным:造格):貧乏な、貧しい、(長尾)不幸な、哀れな、可哀想な
тщетный(←тщетными:複数形、造格):無駄な、無益な、虚しい、空虚な
вопрос(←вопросами:複数形、造格):問い、質問、疑問
「笑っている、哀れなグリーシュカを、彼の空想を、彼の空虚な疑問たちを、残酷なしかし全くもって非常に美しいツランディナは」。
「笑っている。哀れなグリーシュカを、彼の空想を、彼の空虚な疑問を。残酷な、しかしとても美しいツランディナが」。
ソログープの短編はだいたいラストが当て逃げチックなイメージ。
「作者は読者をどうしたいの? ねぇ、どうしたいの!?」 と詰りたくなることが多い。が、そうやって詰らせた時点で作者の勝ちだしね。
ソログープさん自身の生い立ちが、幼い頃に父を失い母は奉公に出ることとなり、母と主に主人の家に居候する身になったのだそうな。
そうなるとこのグリーシュカの経験はそのままソログープさんの経験なのかなと思えて、なんかもう辛いですね。
さて次は……、このまま「ツランディナ」にしようかとも思ったけれど、その前に「とらはれ」にするかな。
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