2014年05月18日更新
短編2作目。前回の「白樺」よりは少し短め。
舞台となるのは「受難週間」と呼ばれる時期。
キリストが己が処刑されることを知りつつもエルサレムに入城し、実際に処刑され、復活する前日までの一週間を「受難週間」と呼び、キリスト教徒にとっては一年でも最大級のイベントだそうな(但しプロテスタントは微妙なところ)。
まぁ実際のところ、そのあたりは後付けで、土着の春の到来を喜ぶ祭りをキリスト教が取り込んだ結果と言うのが定説のようだ。
萌え出つつある春、死につつある少年。その対比がキモなのだろう。
出典は以下: «Собрание сочинений в восьми томах Том 3. Слаще яда»収録、«Книга стремлений»項目内«Сон утешающий» (БИБЛИОТЕКА РУССКОЙ КЛАССИКИサイト内、Федор Кузьмич Сологубのページより)
加えて既存の日本語訳
「樂しき夢」 馬場哲哉・訳(「奇蹟 第二巻第一號」収録)も参考にさせていただきました。
例によってツッコミ等は歓迎しております。
以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。
注:色つき文字部分は、私(春色)の独り言。
太字は原文、もしくは最終的な日本語訳。
太字は原文、もしくは最終的な日本語訳。
Сон утешающий
メモ
сон:眠り、睡眠
утешающий:能動形容分詞現在
→ утешать:慰め、気を晴らしてやる、(口)喜ばす(不完了体)
→утешить(完了体)
まずはタイトル。「気を晴らしてやるところの眠り」? 「喜ばせる睡眠」?
……うーん。既存の翻訳では「楽しき夢」なので、もうそれで良いや。
Сережа умирал.
メモ
умирать(←умирал:過去形、男性形):死ぬ(不完了体)
→умереть(完了体)
「セリョージャは死につつあった」。
Была страстная неделя. В доме, как всегда, готовились к празднику, радостному для детей и приятному для взрослых, — красили яйца кошенилью, распускали в кипятке шафран для кулича, месили творог и сметану для пасхи.
メモ
страстная неделя:受難週間、イエスのエルサレム入城の日から復活の前日までの一週間
готовиться(←готовились:過去形、複数形):…の用意をする、…しようとしている(不完了体)
праздник(←празднику:与格):祭日
радостный(←радостному:与格):うれしい、喜ばしい
для:…のために
дети(←детей:生格):(大人に対して)子ども、児童
приятный(←приятному:与格) :快い、愉快な、楽しい
взрослый(←для взрослых:複数形、生格):大人になった、成人した
красить(←красили:過去形、複数形):染める、着色する(不完了体)
яйцо(←яйца:複数形、対格):卵、玉子
кошениль(←кошенилью:造格):洋紅(顔料)、カイガラ虫
распускать(←распускали:過去形、複数形):(口)(熱して)溶かす、(水などに)溶かす(完了体)
→распустить(不完了体)
кипяток(←кипятке:前置格):熱湯
шафран:サフラン
кулич(←кулича:生格):クリーチ(復活祭用の円筒形の甘いパン)
месить(←месили:過去形、複数形): 練る、こねる(不完了体)
→замесить(完了体)
творог:凝乳、カッテージチーズ
сметана(←сметану:対格):サワークリーム(生クリームを乳酸発酵させたもの)
пасха(←пасхи:生格):パスハ、イースターケーキ(カッテージチーズを主原料とするピラミッド形レアチーズケーキ)
「受難週間だった。家では、いつもと同じように、祭日の準備がされていた、子どものための嬉しい、大人にとって喜ばしい、――卵を洋紅で染め、クリーチのために熱湯にサフランを溶かし、パスハのためにカッテージチーズとサワークリームを捏ねる」 。
と、受難週間を祝う準備の話が書かれているが、卵を染めるくらいしか分からない。それも洋紅ってことは、赤色オンリーなの?
サフランって黄色く着色するやつだよね。つまりクリーチは黄色いのか?
などと疑問が尽きないので、Googleさんに聞いてみたが、あんまり黄色くないどころか、サフランを使わないレシピの方が多いような気が。そしてお湯に溶かすバージョンは見付からない。……まぁ時代が違うしね。
日本のお雑煮に色んなバリエーションがあるように、クリーチにも色々なレシピがあるようだ。
クリーチのレシピ色々→クリーチ、Пасхаには手作りКуличиを(サフランなし)、クリーチ2、クリーチ3(サフランあり)
とりあえず円筒形のパンで、頭から側面に流れ落ちるくらい砂糖をアイシングするのがクリーチの決まりらしい。それをパスハの日(パスハを食べる日)に教会に持って行き、聖別してもらうそうな。
パスハの方は「カッテージチーズは主原料とするピラミッド形レアチーズケーキ」の説明そのままの代物。レシピはこんな感じ→復活祭用カッテージチーズデザート、パスハ
「聖週間だった。家ではいつもと同じように、祭日の準備がされていた。子どもにとっては嬉しく、大人にとっては喜ばしい祭日――卵を洋紅で染め、クリーチのために熱湯にサフランを溶かし、パスハ用にカッテージチーズとサワークリームを捏ねた」。
受難週間と言われても分からないので、もういっそ「聖週間」にしてみた。これなら宗教行事だと何となく分かるし。
Пахло ванилью и кардамоном.
メモ
пахнуть(←пахло:過去形、中性形):匂う、匂いがする(不完了体)
ваниль(←ванилью:造格):バニラ
кардамон(←кардамоном:造格):カルダモン、ショウズク
「バニラとカルダモンの香りがした」。
クリーチとパスハにバニラとカルダモンが使われていたのかな。
Паркет был натерт с мастикою, пыль и грязь отовсюду были заботливо убраны, окна вымыты. Прислуга сбилась с ног. Барышни, Сережины сестры, мечтали о приятных поцелуях, и морщились при мысли о том, что придется целоваться и с противными.
メモ
паркет:[集合]寄せ木、寄せ木細工
натерт:受動形容分詞過去、短尾形
→натереть:(油・溶液などを)擦り込む、(塗料などを擦り込んで)磨く(完了体)
→натирать(不完了体)
мастика(←мастикою:造格):(床磨き用)ワックス
пыль:ほこり、ちり
грязь:泥
отовсюду:いたるところから、四方八方から
заботливо:配慮の行き届く、注意深く
убранный(←убраны:短尾、複数形):受動形容分詞過去
→убрать:片付ける(完了体)
→убирать(不完了体)
вымытый(←вымыты:短尾、複数形):受動形容分詞過去
→вымыты:洗う、洗浄する(完了体)
→ вымывать(不完了体)
прислуга:(廃)女中、[集合](廃)召使
сбиться(←сбилась:過去形、女性形):ずれる、外れる、曲がる、損傷する、傷む(完了体)
→сбиваться(不完了体)
нога(←ног:複数、生格):足、脚
сбиться с ног:へとへとに疲れる、くたくたになる
барышня(←барышни:複数形):未婚の娘、令嬢
мечтать(←мечтали:過去形、複数形):空想にふける、想像する、憧れる(不完了体)
приятный(←приятных:複数形、前置格):快い、愉快な、楽しい
поцелуй(←поцелуях:複数形、前置格):キス、口付け
морщиться(←морщились:過去形、複数形):(顔面が)皺になる、皺が寄る、顔を顰める(不完了体)
при:…のそばに、…のときに
мыслить(←мысли:命令形): 思考する、思索する
мыслить+о+前置格:(廃)思いを巡らす、(廃)見做す、見解を持つ
прийтись(←придется:現在形、三人称単数形): [無人動](何かの事情で)…しなければならなくなる(完了体)
→приходиться(不完了体)
целоваться:お互いにキスをする、口付けを交わす(不完了体)
→поцеловаться(完了体)
противный(←противными:複数形、造格):嫌な、嫌いな、ムカツク
「寄せ木細工はワックスを塗り込まれ、ほこりと泥は至る所から注意深く取り除かれ、窓は洗われた。女中はへとへとに疲れた。令嬢、セリョージャの姉妹たち、は愉快なキスに憧れたが、一方で、口付けを交わさなければならないと見做した時には顔を顰めた」。
寄せ木細工は、床のことかな。キス云々は、受難週間ではキスを交わす風習があるのだろう。
「寄せ木細工の床には、ワックスが塗られた。埃と泥は周囲から注意深く払い出され、窓は洗われた。女中はヘトヘトに疲れていた。セリョージャの姉妹たちである令嬢は、楽しいキスに憧れたが、その一方で、嫌な人とも口付けを交わさなければならないのだと考えた時には、顔を顰めるのだった」。
А Сережа лежал в своей комнате, просторной, нарочно пустынной, чтобы мебель не отнимала воздуха, в комнате, где слащаво пахло салолом, и умирал.
メモ
лежать(←лежал:過去形、男性形):(人・動物が)横になっている(不完了体)
просторный(←просторной:女性形、生格):広々とした
нарочно:故意に、わざと、(何か・誰かのために)特別に
пустынный(←пустынной:女性形、生格):人気のない、ひっそりとした
мебель:[集合]家具
отнимать(←отнимала:過去形、女性形): 取り上げる、奪い取る、(時間などを)消費させる(不完了体)
→отнять(完了体)
воздух(←воздуха:生格):空気、大気、空
слащавый(←слащаво:中性形、短尾):甘ったるい、度外れて愛想のいい
пахать(←пахло:過去形、中性形):(廃)翻る、はためく、吹く、息づく(不完了体)
салол(←салолом:造格):[化]ザロール、サリチル酸フェニル、腸内防腐剤
「一方セリョージャは、広々とした、特別に修道院の部屋に寝ていた、家具は部屋の空気を奪い取らないように、そこは甘ったるくザロールがはためいていた、そして死につつあった」。
成る程、分からん。
ザロール、サリチル酸フェニルは、現在ではうがい薬として配合されており、かつては腸炎などに用いられていたようだけれど、それはうがいや服用しての効用なのであって、部屋に焚く用法はヒットしない。
なんだこれ、と思いつつ既存の訳を見たら「伝染病予防剤」と書いて「ザロール」とのふりがなが付されていた。ああ、なるほどー。
修道院の部屋、ってのは比喩なのだろう。と言うわけで、「セリョージャは、家具が部屋の空気を奪わぬようにと特別に広々とした人気のない部屋で横になっていた。そこには伝染病予防剤(ザロール)が甘ったるく漂っていた。彼は死につつあった」。
Ему было только пятнадцать лет. Он был умный и веселый. В семьи его любили. Начиналась весна. Близок был праздник Светлого Воскресения. Сережины сестры хотели радости, и боялись думать о смерти.
メモ
только:わずかに、ただ単に、たった
пятнадцать:15
умный:(人が)賢い、利口な、賢明な、分別のある
веселый:楽しい、愉快な、陽気な
семья(←семьи:生格):家族、家庭、所帯
начинаться(←начиналась:過去形、女性形):始まる、到来する(不完了体)
→начаться(完了体)
весна:春
близко(близок):近くに、近くで、密接な
праздник:(習慣・宗教上の)祭日
Светлый
Воскресение(←Светлого
Воскресения:生格):復活祭の日曜
радость(←радости:生格):喜び、歓喜
бояться(←боялись:過去形、複数形):恐れる、怖がる、心配する、懸念する(不完了体)
думать:考える、思う(不完了体)
смерть(←смерти:前置格):死、死亡、死刑
「彼はたったの15歳だった。彼は賢く陽気であった。家族は彼を愛していた。春が到来していた。復活祭の日曜日の祭日が近付いていた。セリョージャの姉妹たちは喜びを欲していた、そして死を考えることを恐れていた」。
簡単な文章ほど、日本語として格好を付けるのは難しいなぁ。
喜ばしい春、喜ばしい復活祭の日が近付く中、セリョージャにだけは死が忍びよりつつある。という構図なのは分かるけれど。
「セリョージャはまだ15歳であった。賢く陽気な子であった。家の者は彼を愛していた。春は始まっていた。復活祭の祭日が近付いていた。セリョージャの姉妹達は、喜びを欲していた。死を考えることを恐れていた」。
И то, что Сережа умирал, так не вязалось с предпраздничною суетою, что хотелось всем обмануть себя, и думать, что он вдруг для такого праздника почувствует себя лучше.
メモ
и то:(強勢の助詞として)…さえも
вязаться(←вязалось:過去形、中性形):合致する(不完了体)
предпраздничный(←предпраздничною:造格): 休日・祝祭日前の
суета(←суетою:造格):空虚なもの、虚しいもの、(日常生活の)些事、せわしなさ、慌ただしさ
хотеться(←хотелось:過去形、中性形):[無人格]欲しい、…したい、…するつもりである(不完了体)
обмануть:だます、惑わす、欺く(完了体)
вдруг:不意に、突然、
почувствовать(←почувствует:現在形、三人称単数形):(生理的・心理的に)感ずる、覚える(完了体)
→ чувствовать(不完了体)
лучше:よりよく
「セリョージャが死につつあること、祭日前の慌ただしさにこのように一致しないことさえも、全員に自分自身を欺かせ、考えさせた、彼も不意にこのような祭日のために自分をよりよく感じると」。
чтоがたくさんあるから、これが全部並列なのかと思ったけれど、どうやら全部フェーズが違うようだ。
「セリョージャが死につつあること、祭日前の慌ただしさにかくも相応しくない事態さえも、全員の心を欺き、彼らにこう考えさせた。この祭日のおかげで、彼もまた自分の状態を普段よりも良く感じるのではないかと」。
だいぶ手を入れちゃったぞ。
Давно прихварывал. Решили увезти куда-нибудь. Но как-то промедлили, не сумели выбрать быстро, куда именно везти. И вдруг, неизвестно почему, процесс в легких пошел так быстро, и Сережа так ослабел, что везти его стало невозможно: дорога будет утомительна, и теплый климат все равно уже не спасет.
メモ
давно:ずっと前に、とっくに
прихварывать(←прихварывал:過去形、男性形):(ふつう軽症の)病気になる(不完了体)
решить(←решили:過去形、複数形):決める、(ある)結論に達する、…と思う(完了体)
→решать(不完了体)
увезти:(乗り物で)運び去る、連れて行く(完了体)
→ увозить(不完了体)
куда-нибудь:(任意の)どこかへ、どこへなりと
как-то:どうやってか、なんとか、どうしてか、なんとなく
промедлить(←промедлили:過去形、複数形): (ある時間)停滞する、ぐずぐずする、遅れる(完了体)
суметь(←сумели:過去形、複数形):…する能力を示す、…しおおせる、(口)(状況が許して)できる(完了体)
выбрать:選ぶ、選び取る(完了体)
→выбирать(不完了体)
быстро:速く、短期的に
куда:どこへ
именно:まさに、ほかならぬ、ちょうど
везти:(一定の時に、一定の方向に輸送手段で)運ぶ、乗せて行く(不完了体)
неизвестно:(疑問詞とともに)…だか分からない、[無人格]知らない、知られていない、分からない
почему:[疑問]なぜ、どうして
процесс:過程、経過、進行
лёгкое(←легких:複数形、前置格):肺
быстро:速く、短期間に、すばやく
ослабить(←ослабел:過去形、男性形):弱める、衰えさせる(完了体)
→ослаблять(不完了体)
невозможно:[無人格]不可能だ、できない、(口)とても、極端に、酷く
дорога:道路、道
утомительный(←утомительна:短尾形、女性形):疲労させる、きつい、うんざりするような、退屈な
теплый:温かい、寒くない、ぬるまっている
климат:気候、風土
всё равно(все равно):(口)どっちにしろ、とにかく、どうせ
спасать(←спасет:現在形、三人称単数形):救う、救助する、守る、防ぐ(不完了体)
→спасти(完了体)
「ずっと前から病気であった。どこかへと連れて行くことは決まっていた。しかしなんとなくぐずぐずとしてしまい、選ぶことができなかった速く、どこへちょうど連れて行くのか。しかし突然、何故だか分からないが、経過は弱い中へと進みかくも速く、セリョージャはかくも衰え、彼を運ぶのは不可能になった。つまり道は目を覚まさせて疲労させ、温かい気候はもはや等しく既に守れない」。
文章長いです。最初は軽症だったのね、これ。
追記:легкихはлегкий(軽い、形容詞)ではなくлёгкое(肺、名詞)の意味だった。肺は名詞だけれど形容詞と同じ格変化をする面倒な単語。
追記:легкихはлегкий(軽い、形容詞)ではなくлёгкое(肺、名詞)の意味だった。肺は名詞だけれど形容詞と同じ格変化をする面倒な単語。
「ずっと以前から彼は病気であった。どこかへと転地させることは決まっていた。けれども何となくぐずぐずとしてしまい、どこへ連れて行くのかなかなか選ぶことが出来なかった。しかし突然何故だか分からないが、肺の経過は余りにも早く進み、セリョージャは余りにも衰弱してしまい、彼を運ぶのは不可能となった。移動は疲労させ、それに温かい気候ではどちらにせよもう彼を守れないのだ」。
Молодой доктор говорил растерявшемуся Сережиному отцу:
— Не более месяца.
メモ
молодой:若い
доктор:(口)医者
растерявшийся(←растерявшемуся:与格): 能動形容分詞過去
→растеряться:なくなる、失われる、呆然自失する、途方にくれる(完了体)
→растериваться(不完了体)
много(←более:比較級):たくさん、多く
能動形容分詞過去か……。途方にくれ終えた後に、ってところかな。
「若い医者は途方に暮れた後に、セリョージャの父親に向かって口を開いた。『一ヶ月以上はないでしょう』」。
Старый доктор сказал равнодушно и устало:
— Да, или недель шесть.
メモ
старый:年老いた、老年の
равнодушный(←равнодушно:短尾、中性形):無関心な、無頓着な、冷淡な
устало:疲れて、ぐったりして
「年老いた医者は無頓着に疲れた様子で言った。『ええ、あるいは六週間ほどですかな』」。
Сережин отец суетливо провожал их. Лицо у него, было красное и сконфуженное, и движения неловкие. То, что Сережа должен умереть, как-то не вмещалось в его сознание. И мысли его были медленны и тупы.
メモ
суетливый(←суетливо:短尾、中性形):(人が)せかせかした、落ち着きのない
провожать(←провожал:過去形、男性形):連れて行く、見送りに行く(不完了体)
→проводить(完了体)
красный(←красное:中性形): (色が)赤い、赤色の
сконфуженный(←сконфуженное:中性):当惑した、狼狽した
движение(←движения:複数形):(人・動物の身体やその部分の)動き、動作、身振り
неловкий(←неловкие:複数形) :(動きなどが)手際の悪い、たどたどしい、ぎこちない
то, что…:(…であるところの)こと、もの
должен:[述]…しなければならない
вмещаться(←вмещалось:過去形、中性形):入る、入りきる、収まる(不完了体)
→вместиться(完了体)
сознание:知覚、意識、正気
мыслить(←мысли:命令形):思索する、思考する、考える、判断する(不完了体)
медленный(←медленны:短尾、複数形):ゆっくりした、のろい、遅い、のろのろした、緩慢な
тупой(←тупы:短尾、複数形):(頭の働きが)鈍い、(精神状態が)ぼんやりした
「セリョージャの父親は落ち着きのない様子で彼らを見送った。彼の顔は赤く狼狽しており、動作はぎこちなかった。セリョージャが死ななければならないということが、どうしても彼の意識の中に収まらなかった。彼の思考は緩慢で鈍かった」。
Перед зеркалом над камином в столовой он остановился, и зачем-то смотрел долго на свое лицо, поправлял сползающей на бок галстук, черный на белой манишке, и приглаживал дрожащими пальцами начинающие седеть усы.
メモ
зеркало(←зеркалом:造格):鏡
камин(←камином:造格):(壁をえぐって作った)暖炉、壁炉
остановиться(←остановился:過去形、男性形):(動きが)止まる、(進行が)中断する、とぎれる(完了体)
→останавливаться(不完了体)
зачем-то:(一定の)何かの理由で、何かの目的で
долгий(←долго:短尾、中性形):(時間的に)長い
поправлять(←поправлял:過去形、男性形):(ふつう小さな損傷を)修理する、改める、手直しする(不完了体)
→ поправить(完了体)
сползающий(←сползающей:女性形、対格or主格以外):能動形容分詞現在
→сползать:這って行ってくる(完了体)
бок:脇腹、横腹
галстук:ネクタイ
черный:黒い、黒色の
белый(←белой:女性形、生格?):白い、白色の
манишка(←манишке:前置格):(男子シャツの)胸当て
приглаживать(←приглаживал:過去形、男性形):(髪などが)なでつけられて平らにする(不完了体)
→пригладиться(完了体)
дрожащий(←дрожащими:複数形、造格): 能動形容分詞現在
→ дрожать:震える、振動する(不完了体)
палец(←пальцами:複数形、造格): 指
начинающий(←начинающие:複数形):能動形容分詞現在
→начинать:始める、開始する(不完了体)
→начать(完了体)
седеть:白髪になる(不完了体)
→поседеть(完了体)
ус(←усы:複数形):(普通複数形)口ひげ
「食堂の暖炉の上の鏡の前で彼は動きを止め、何らかの目的で長いこと自分の顔の中を見ていた、脇腹まで這って行ったネクタイ、白い胸当ての上に黒い、を直し、そして震える指で白くなり始めた口ひげを撫で付けた」。
ちょっと整理して。
「食堂の暖炉の上に設置された鏡の前で彼は動きを止めると、何故だか長い時間自分の顔を見詰めていた。脇腹の方まで這って行った白い胸当ての上の黒いネクタイを直し、それから震える指で白くなり始めた口ひげを撫で付けた」。
→сползать:這って行ってくる(完了体)
бок:脇腹、横腹
галстук:ネクタイ
черный:黒い、黒色の
белый(←белой:女性形、生格?):白い、白色の
манишка(←манишке:前置格):(男子シャツの)胸当て
приглаживать(←приглаживал:過去形、男性形):(髪などが)なでつけられて平らにする(不完了体)
→пригладиться(完了体)
дрожащий(←дрожащими:複数形、造格): 能動形容分詞現在
→ дрожать:震える、振動する(不完了体)
палец(←пальцами:複数形、造格): 指
начинающий(←начинающие:複数形):能動形容分詞現在
→начинать:始める、開始する(不完了体)
→начать(完了体)
седеть:白髪になる(不完了体)
→поседеть(完了体)
ус(←усы:複数形):(普通複数形)口ひげ
「食堂の暖炉の上の鏡の前で彼は動きを止め、何らかの目的で長いこと自分の顔の中を見ていた、脇腹まで這って行ったネクタイ、白い胸当ての上に黒い、を直し、そして震える指で白くなり始めた口ひげを撫で付けた」。
ちょっと整理して。
「食堂の暖炉の上に設置された鏡の前で彼は動きを止めると、何故だか長い時間自分の顔を見詰めていた。脇腹の方まで這って行った白い胸当ての上の黒いネクタイを直し、それから震える指で白くなり始めた口ひげを撫で付けた」。
Как-то неловко, точно виноватый, подошел он к столу, где его жена вынимала из теплой воды миндалины, с которых разбухшая сваливалась кожура.
メモнеловко:不便だ、窮屈だ、楽でない、きまりが悪い、ばつが悪い、気まずい
точно:まるで…のように、あたかも…のように
виноватый:罪[責任]を自覚した様子の、済まなさそうな
жена:妻
вынимать(←вынимала:過去形、女性形):取り出す、引き出す(不完了体)
→ вынуть(完了体)
миндалина(←миндалины:複数形): アーモンドの実[核]、アーモンドナッツ
который(←которых:複数形、前置格):[疑問](複数の事物のうちの)どの、いずれの
разбухший(←разбухшая:女性形) :能動形容分詞過去
→разбухать:(湿気を含んで)膨らむ(不完了体)
→разбухнуть(完了体)
сваливаться(←сваливалась:過去形、女性形):落ちる、倒れる(不完了体)
→ свалиться(完了体)
кожура:(果実・種子の)厚い殻
「なんだか決まりが悪く、まるで罪を自覚したかのように、彼はテーブルへと近付いた、そこには彼の妻が温かい水からアーモンドの実を取り出していた、どれも膨らんで厚い殻を落とした」。
теплой водыは熱湯なのか、そこまで行かない単なる湯なのかがちょっと気になる。
私達が食べるアーモンドは実そのものではなく、アーモンドの実の中身であり、外側を外した後に火を加えているのだそうな。という訳で、ここでセリョージャのお母さんが行っているのは、アーモンドを作る普通の過程なんじゃなかろうか。
「なんだか決まりが悪く、まるで罪を犯したかのように、彼はテーブルへと近付いた。そこでは彼の妻が、膨らんで厚い殻を落としたアーモンドの実を湯から引き上げていた」。
Засунув руки в карман коротенького домашнего пиджака, он постоял за её спиною, и вдруг, по каким-то едва уловимым признаками — по её непривычной сутуловатости, по легкому, как от заглушаемого усилием воли телесного тайного страдания, вздрагиванию её покрасневшей щеки, по неловкости её всегда проворных прежде пальцев, — он понял, что она все знает.
メモзасунув:副分詞
→засунуть:押し込む、刺し込む、仕舞う、仕舞い込む(完了体)
→ засовывать(不完了体)
коротенький(←коротенького:生格): [指小・表愛]
→короткий:短い
домашний(←домашнего:生格): 家の、自宅の
пиджак(←пиджака:生格):(背広の)上着、半コート、ブレザー
постоять(←постоял:過去形、男性形):(暫く)立っている、停まっている、続いている(完了体)
спина(←спиною:造格?): 背、背中
какой-то(←каким-то:複数形、与格):ある、さる、なんとかいう
едва:…したばかりで、わずかに、少し、かろうじて、どうにかこうにか
уловимый(←уловимым:複数形、与格): 知覚される、感じうる、分かる、気付く
признак(←признаками:複数形、造格):特徴、徴候、前兆
непривычный(←непривычной:女性形、与格?):不慣れな、馴染みがない
сутуловатость(←сутуловатости:生格?):猫背
лёгкий(←легкому:与格): 軽い、軽やかな、スマートな
заглушаемый(←заглушаемого:生格):受動形容分詞現在
→заглушать:(音を)消す、聞こえなくする、小さくする、落とす(不完了体)
→заглушить(完了体)
усилие(←усилием:造格):努力、骨折り
воля(←воли:生格): 意志、意思、望み、決意
телесный(←телесного:生格): 身体の、肉欲を持つ、肉体的な
тайный(←тайного:生格):秘密の、内密の、内緒の、心に秘めた、内心の
страдание(←страдания:生格):(身体的・精神的な)苦しみ、苦痛、苦悩
вздрагиваный(←вздрагиванию:女性形、造格?): 受動形容分詞過去
→вздрагивать:身震いする(不完了体)
→ вздрогнуть(完了体)
покрасневший(←покрасневшей:女性形、生格?): 能動形容分詞過去
→покраснеть:赤みを帯びる、赤くなる(完了体)
→краснеть(不完了体)
щека(←щеки:生格):頬
неловкость(←неловкости:生格):不器用さ、ぎこちさな、窮屈さ
проворный(←проворных:複数形、生格) :素早い、手早い、機敏な、敏捷な
прежде:以前に、前に、かつて
понять(←понял:過去形、男性形): 理解する(完了体)
→понимать(不完了体)
по多いな。поに色を付けてみた。ついでにちょっと文章を整理した。
Засунув руки в карман (коротенького домашнего пиджака), он постоял за её спиною, и вдруг, по каким-то едва уловимым признаками — по её непривычной сутуловатости, по легкому, (как от заглушаемого усилием воли телесного тайного страдания), вздрагиванию её покрасневшей щеки, по неловкости её всегда проворных прежде пальцев, — он понял, что она все знает.
「短い家着の上着のポケットに手を突っ込んだ後に、彼は彼女の背中の後ろに暫く立ち尽くし、不意にとある僅かに感じられる徴候によって――彼女の見慣れぬ猫背によって、身体に秘めた苦悩する意思の骨折りによって押さえ込まれ、かくも微かに震える彼女の赤い頬によって、いつもは敏捷な彼女の指のぎこちなさによって――彼は理解した、彼女は全てを知っているのだと」。
ああ、うん、どうしろって言うんだこれ。
ついでに言うと、セリョージャの父親の服装がよく分からない。さっきネクタイがどうのって言ってたよね。家着なのにネクタイ締めてんの?
まぁ、いいや。
「家着の短い上着のポケットに手を突っ込んで、彼は彼女の背後に暫く突っ立っていた。そして唐突に、妻に現れた微かな徴候――その見慣れぬ撓められた背中、肉体の奥に秘められた苦しい意思の努力によって押さえ込まれ微かに震えるだけの赤い頬、普段は敏捷に動く彼女の指のぎこちなさ――、彼は理解した。妻は全てを知っているのだと」。
日本語として崩壊したけど、でも勢いって大切やん?
Его поразило больно, что она не плачет, не бьется головою в мягких подушках постели, а сидит здесь, с младшими мальчиками, по-видимому спокойная, но так жестоко страдающая, и мальчики, помогая матери, болтают, и смеются беспечно.
メモпоразить(←поразило:過去形、中性形):(剣などで)突く、刺す(完了体)
→поражать(不完了体)
больно:(肉体的・精神的に)痛く、痛いほどに
плакать(←плачет:現在形、三人称単数形):泣く(不完了体)
бить(←бьется:現在形、三人称単数形):打つ、たたく、ぶつかる(不完了体)
голова(←головою:造格?):頭、首
мягкий(←мягких:複数形、前置格): 柔らかい、ふわふわした
подушка(←подушках:複数形、前置格):枕、クッション
постель(←постели:前置格):寝具、ベッド
младший(←младшими:複数形、造格):より若い、年下の
по-видимому:[挿入語]多分、おそらく、きっと
спокойный(←спокойная:女性形):静かな、穏やかな、のどかな、平静な
жёстоко:厳しく、激しく、厳重に、強硬な
страдающий(←страдающая:女性形):能動形容分詞現在
→страдать:[…のことで]苦しむ、悩む、心を痛める、困る(不完了体)
помогая:副分詞
→помогать:手伝う、手助けする(不完了体)
→помочь(完了体)
мать(←матери:与格?) :母、母親
болтать(←болтают:現在形、三人称複数形): おしゃべりをする、無駄話をする(不完了体)
беспечный(←беспечно:短尾、中性形):思慮のない、屈託のない
「彼を痛いほどに突いたのは、彼女は泣くでもなく、ベッドの柔らかい枕に頭を打ち付けるでもなく、代わりにそこに静かに座っていることだった、年下の少年たちと共に、恐らくは平静に、しかしこうも激しく苦しみながら、少年たちは母親を手伝ってかき混ぜている、あえて屈託なく」。
一文が長いなぁ。ここに登場する年下の少年達と言うのは、セリョージャの弟たちのことなんだろうか。
追記:単語を二つ勘違いしていたぜ。そんなわけで訂正。
「彼女が泣くでもなく、ベッドの柔らかい枕に頭を打ち付けるでもなく、見た目は平静に、しかしこれほどに激しく苦しみながらも、幼い子どもたちと共にそこに静かに座っているということが、そして子どもたちが母親を手伝いながらおしゃべりをし屈託なく笑っていることが、彼の心を痛いほどに突いた」。
本当は「彼を痛いほど突いた」が頭に来た方が語順的に良いんだろうけれども、日本語として自然に書けなかったので諦めた。
Острое ощущение её одинокого страдания вдруг пронизало его неожиданно яркою болью. Как-то странно и нелепо сопя, он пошел быстрыми, мелкими шагами от жены, рассыпая на скользкий паркет дробный, сухой стук своих башмаков с невысокими каблуками.
メモострый(←острое:短尾?):鋭利な、鋭い、明敏な
ощущение:感じること、感覚
одинокий(←одинокого:生格):ただ一つの、孤立した、寄る辺ない
страдание(←страдания:生格):(身体的・精神的な)苦しみ、苦痛
пронизать(←пронизало:過去形、中性形):(感情などが)突然生じる(完了体)
→пронизывать(不完了体)
неожиданно:思いがけず、突然に
яркий(←яркою:女性形、造格?):明るい、光りの強い、眩しい
боль(←болью:造格):(肉体的な)痛み
странно:奇妙に、変に
нелепо:常識外れに、無意味に、馬鹿げた
сопя:副分詞
→сопеть:鼻息をたてる(不完了体)
быстрый(←быстрыми:複数形、造格):速い、迅速な
мелкий(←мелкими:複数形、造格):細かい、(動きが)小刻みの
шаг(←шагами:複数形、造格):(複数形)足音
рассыпая:副分詞
→рассыпать:ばらまく、撒き散らす、バラバラにする(不完了体)
скользкий:(立っていられないほど)つるつる[すべすべ]する
дробный:(音・歩調が)小刻みな、細分された、分割された
сухой:乾燥した、乾いた
стук:硬い物がぶつかる音、こつこと叩く音、ぽとぽと落ちる音
башмак(←башмаков:複数形、生格):(主として婦人・子ども用の踝の上まである)短靴、ショートブーツ
невысокий(←невысокими:複数形、造格):(丈などが)あまり高くない、低い
каблук(←каблуками:複数形、造格):(靴の)かかと
「彼女の寄る辺ない苦痛の鋭い感覚が、突然彼に思いがけぬ眩い痛みを生み出した。どこか奇妙で無意味に鼻息を立てながら、彼は素早く小刻みな足音で妻の元から移動し、つるつるした寄せ木細工(の床の)上に小刻みに撒き散らしながら、低い踵が付いた自身の短靴の乾いたコツコツ音を」 。
何か重複しているような。
「彼女の孤独な苦痛の感覚が、突如、彼に思いがけず眩い痛みを生じさせた。なにやら奇妙で意味のない鼻息を立てながら、彼は小刻みな足音と共に妻の元から離れた。つるつるに磨き上げられた寄せ木細工の床の上に、低い踵をした彼の短靴の立てる乾いたコツコツ音が撒き散らされた」。
Серенький, маленький, бежал он по гулкому коридору в свой кабинет, — броситься на диван, лицом к его высокой спинке, метаться по его темно-зеленой коже, томиться и вздыхать.
メモсеренький:[指小・表愛]
→серый:灰色の、薄墨色の
маленький:小さい、背の低い
бежать(←бежал:過去形、男性形):(人・動物が)(一定の時に・一定の方向に)走る、駆ける、(口)(どこかへ・どこかから)急いで行く(不完了体)
гулкий(←гулкому:与格):遠くまで聞こえる、響き渡る
коридор(←коридору:与格):廊下
кабинет:書斎、仕事部屋
броситься:飛び込む(完了体)
→бросаться(不完了体)
диван:ソファー、柔らかい長椅子
высокий(←высокой:女性形、与格?):(高さが)高い、高いところにある
спинка(←спинке:与格):(椅子・ソファーなどの)背もたれ
метаться:足掻く、寝返りを打つ、のたうつ、狼狽する、取り乱す(不完了体)
темно-зеленый(←темно-зеленой:女性形、生格?):深緑色の、くすんだ緑色の
кожа(←коже:与格):皮革
томиться:苦しむ、悩む(不完了体)
вздыхать:大きく息をする、ため息をつく、嘆息する(不完了体)
лицом к……、кなぁ。к+与格で方向性を示すとあるけれど、うーん。
「灰色の、背の低い、彼は響き渡る廊下に沿って自分の書斎へと急いだ――ソファーに飛び込み、高い背もたれに顔を伏せ、深緑色の皮革に沿ってのたうち、苦しみため息を吐くために」。
「灰色の背の低い(серенький, маленький)」とある部分が、どこに掛かっているのか分からない。
廊下(коридор)かと思ったけれど、廊下は与格になっているしなぁ。主語онに掛かっているんだろうか。でも灰色の人間ってナニ。比喩ってことか。
「活気を欠いた様子の背の低い彼は、音の響く廊下を通って己の書斎へと急いだ。ソファーに飛び込んでその背もたれに顔を伏せ、深緑色の皮革の上をのたうち、苦しみ、大きな息を零したかった」。
奥さんが必死に平静を装っているから、旦那の方も狼狽をおおっぴろげに出来ないんだろうね。
Услышав за спиною дробный стук его шагов, жена его покраснела еще сильнее, и что-то билось и дрожало в её лице. Но она сидела прямая и спокойная. Кончила с миндалем. Вытерла полотенцем мягкие, белые руки. Неторопливо пошла в его кабинет.
メモуслышав:副分詞
→услышать:聞こえる、聞く(完了体)
→слышать(不完了体)
спина(←спиною:造格?):背中、背
дробный:(音・歩調が)小刻みな
покраснеть(←покраснела:過去形、女性形):赤みを帯びる、赤くなる(不完了体)
ещё:さらに、そのほか、また、すでに、もう、まだ
сильный(←сильнее:比較級):体力の強い、よく発達した、強力な、意思の強固な
биться(←билось:過去形、中性形):戦う(不完了体)
дрожать(←дрожало:過去形、中性形):震える、(心臓が)どきどきする、恐れる、戦く、心配する、憂慮する(不完了体)
прямой(←прямая:女性形):まっすぐに、直線の、文字通りの
спокойный(←спокойная:女性形):静かな、穏やかな
кончить(←кончила:過去形、女性形):終える、完了する、完成する(完了体)
→кончать(不完了体)
миндаль(←миндалем:造格):アーモンド
вытереть(←вытерла:過去形、女性形):拭う、拭く(完了体)
→вытирать(不完了体)
полотенце(←полотенцем:造格):手ぬぐい、タオル
неторопливо:急がず、のんびりと、ゆったりと
「背後で彼の足音の小刻みなコツコツ音を聞き終わった後に、妻は彼に対してさらに強く赤くなった、何かが彼女の顔の中で戦い、慄いていた。しかし彼女は文字通りに静かに座っていた。アーモンドが終わった。タオルで柔らかく青白い手を拭った。ゆっくりと彼の書斎へと向かった」。
жена его покраснелаのегоが分からな……、あれもしかして単に「彼の妻」ってことか? なんかそうっぽいな。深刻に悩んでいたんですけど。後ろから形容されると「おお?」ってなるわ。英語は常に前から形容するもの。
まぁいいや。ちょっと整理して。
「背後の彼の小刻みなコツコツとした足音が去った後に、妻は更に強く赤くなった。その顔の上では何かが戦い慄いていた。しかし、彼女はただ静かに座っていた。アーモンドの支度が終わった。青白い柔らかな手をタオルで拭った。ゆっくりと彼の書斎へと向かった」。
И там они сидели рядом, и плакали оба, и не знали никакого себе утешения, и тосковали…
рядом:並んで、そばに、隣に
плакать(←плакали:過去形、複数形):泣く(不完了体)
оба:ふたつの、双方の
никакой(←никакого:生格):(неとともに名詞の前に置かれて)(口)全然…でない
утешение(←утешения:生格):慰め、慰めること
тосковать(←тосковали:過去形、複数形):憂愁に沈む、ふさぐ(不完了体)
「そこに彼らは並んで腰掛け、双方ともに涙した、自身の慰めなど全く知らなかった、憂愁に沈んだ……」。
同じ苦悩を抱えた二人なのに一緒にいても、一緒に泣いても、全く慰めにならない。それほどまでに悲しみは強い。との話なのだろう。
「彼らは並んで腰掛け、双方ともに涙した。だがそれも慰めとはならず、ただ塞ぎ込むのだった」。
目出度き祭日は迫り、外では春が芽吹く。家の中でも祭りに向けての準備におおわらわ、若い娘たちはキスを夢見て笑ったりしかめっ面をしてみたり。
けれどもその一角でセリョージャは死に掛けている。みんなの愛するセリョージャが。まだたったの15歳なのに。
……な第一部でした。
淡々と語られるだけで、特別強烈な文章や単語があるわけでもないのに、読み進めるにつれて状況の切実さが突き刺さってくるのはどうしてなんだろう。
春の到来を祝う土着の祭りを起源とし、キリストに対する暴力とキリストによる許し、死、それからの復活を主題に頂く受難週間をわざわざ舞台に選んでいるだけはあり、これらを重ねて、セリョージャの容態は以後も変化していくのだが、その宗教儀式に疎いせいで、ぶっちゃけよく分からない。
物語が設定されている季節にあまりにもそむくのもアレなので、可能ならば6月中には最後までたどり着きたいところ。
東京ディズニーランドのイースターは6月下旬までやってるし、きっと日本でなら6月まで春なんだよ(目を逸らしながら)。
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