2014年06月23日
そんなわけで最終回。今回は複数の章を一気に扱ったため、章番号が入っている。
今までは一回の更新分=一章分。
出典は以下: «Собрание сочинений в восьми томах Том 3. Слаще яда»収録、«Книга стремлений»項目内«Сон утешающий» (БИБЛИОТЕКА РУССКОЙ КЛАССИКИサイト内、Федор Кузьмич Сологубのページより)
今回も、
『パスポート初級露和辞典』(白水社)
『岩波ロシア語辞典』(岩波書店)
『NHK新ロシア語入門』(日本放送出版協会) にお世話になりました。
『岩波ロシア語辞典』(岩波書店)
『NHK新ロシア語入門』(日本放送出版協会) にお世話になりました。
加えて既存の日本語訳
「樂しき夢」 馬場哲哉・訳(「奇蹟 第二巻第一號」収録)も参考にさせていただきました。
例によってツッコミ等は歓迎しております。
以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。
注:色つき文字部分は、私(春色)の独り言。
太字は原文、もしくは最終的な日本語訳。
III
Сережа проснулся, весь облитый липким потом.
メモпроснуться(←проснулся:過去形、男性形):目覚める(完了体)
→просыпаться(不完了体)
облитый:受動形容分詞過去
→облить:注ぎかける、浴びせかける、(汗・涙・露などが)たっぷり注ぐ、すっかり濡らす(完了体)
→обливать(不完了体)
липкий(←липким:造格):べたべたする、粘着性の
пот(←потом:造格):汗、発汗
ここから三章。
「セリョージャは目覚めた、すっかり濡れてべたついた汗によって」。
「セリョージャは目覚めた。べたつく汗に、すっかり濡れていた」。
Мучительная боль в груди, и дышать тяжело, — но где же ты, милая птичка? Та, которую я создал? Вот, она за окном щебечет, трепещет крылышками, и улетает.
メモ
мучительный(←мучительная:女性形):苦痛を与える、苦しい、苦しそうな
боль:(肉体的、精神的な)痛み
грудь(←груди:生格):胸
дышать:息をする、呼吸をする
тяжело:重く、重々しく、息苦しく、深刻に、酷く
который(←которую:女性形、対格):[関係](時に文中のтотなどと呼応して)…することろの
создать(←создал:過去形、男性形):創造する、創り出す(完了体)
→создавать(不完了体)
щебечть(←щебечет:現在形、三人称、単数形):(ツバメ・ヒワなどが)さえずる(不完了体)
трепещет(←трепещет:現在形、三人称、単数形):(小刻みに)震える、揺れる、体をぴくぴく動かす(不完了体)
крылышко(←крылышками:複数形、造格):[指小形]
→крыло:(鳥・昆虫などの)羽、翼
улетать(←улетает:現在形、三人称、単数形):飛び立つ、飛び去る(不完了体)
→улететь(完了体)
「胸の苦しい痛み、そして重々しく息をしようとする、――しかし君は一体どこに、かわいい鳥よ? 僕が創ったそれは? そこ、彼女は窓の向こうでさえずり、羽を震わせ、そして飛び立った」。
おい、なんか壮絶にキツイぞ精神的に。
「胸の苦しい痛み、重々しい呼吸――だけど君、かわいい鳥は一体どこに? 僕が創った鳥は? ほらそこ、窓の向こうで彼女は囀り、羽を震わせ、そして飛び立った」。
вотをどうしていいのか良く分からない。
Моя птичка!А кто же я?
「僕の鳥! けれど僕は一体誰なんだ?」
Приподнялся Сережа, и опять упал на подушку. Бредит, шепчет:— А кто же я?
メモ
приподняться(←приподнялся:過去形、男性形):ちょっと持ち上がる、ちょっと起き上がる(完了体)
→приподниматься, (口)приподыматься(不完了体)
упасть(←упал:過去形、男性形):落ちる、倒れる、悪化する(完了体)
→падать(不完了体)
подушка(←подушку:対格):枕、クッション
бредить(←бредит:現在形、三人称、単数形):うわ言を言う、寝言を言う(不完了体)
шептать(←шепчет:現在形、三人称、単数形):囁く、かすかな音を立てる(不完了体)
→шепнуть(完了体・一回)
「少し体を持ち上げたセリョージャは、しかし再び枕の上へと落ちた。うわごとを言い、囁いた。『けれど僕は一体誰なんだ?』」
「体を少し持ち上げたセリョージャは、しかし再び枕へと沈んだ。うわごとを囁いた。『けれども僕は一体誰なんだ?』」
Мать наклонилась над ним. — не видит её Сережа. Не видит стен своей комнаты, — опять отошло обставшее его сегодня.
メモ
наклониться(←наклонилась:過去形、女性形):曲がる、傾く、体を曲げる、頭を下へ向ける(完了体)
→наклоняться(不完了体)
стена(←стен:複数形、生格):壁
отойти(←отошло:過去形、中性形):離れる、出発する(完了体)
→отоходить(不完了体)
обставший(←обставшее:中性形):能動形容分詞過去
→обстать(廃)取り巻く、囲む(完了体)
→обставать(不完了体)
сегодня:今日、本日、現在、今
「母親が彼の上に身を傾けた―彼女がセリョージャには見えなかった。彼は自分の部屋の壁を見ていなかった―再び離れた彼を今取り巻いていたものが」。
「母親が彼の上に身を屈めていたが、セリョージャには彼女が見えていなかった。部屋の壁も見えてはいなかった。今、彼を取り巻いていたものが再度離れた」。
IV
Он на горе один.
メモ
гора(←горе:前置格):山
ここから四章。
「彼は山に一人でいた」。
セリョージャの夢の中での話かな。
Широкие простерлись перед ним просторы, осиянные знойным полуднем. Изношенная бедна его одежда, усталые ноги его покрыты дорожною пылью, и серая в короткой, золотистой бороде его пыль.
メモ
широкий(←широкие:複数形):幅の広い、(衣服が)ゆったりした、広々とした
простереться(←простерлись:過去形、複数形):(手などが)差し伸ばされる(完了体)
перед:…の前に
простор(←просторы:複数形):広々とした場所
осиянный(←осиянные:複数形):(廃)(雅)照らされた
знойный(←знойным:複数形、与格):非常に熱い、火のような、熱烈な
изношенный(←изношенная:女性形):(履物・衣服が)履き古した、着古した
бедный(←бедна:短尾形、女性形):貧乏な、貧しい
одежда:衣服
усталый(←усталые:複数形):疲れた、疲労した、やつれた
покрытый(←покрыты:短尾形、複数形):受動形容分詞過去
→покрыть:覆う、覆いをかける(完了体)
дорожный(←дорожною:女性形、造格?):道路の、旅行の
пыль(←пылью:造格):ほこり、塵
серый(←серая:女性形):灰色、ねずみ色
короткий(←короткой:女性形、前置格):短い
золотистый(←золотистой:女性形、前置格):金色の、金色に輝く
борода(←бороде:前置格):あごひげ
「広々とした場所が彼の前にゆったりと広がっていた、照らされていた火のような昼に。着古した貧しい彼の服、疲れた彼の足は道路の埃に覆われ、短い金色のあごひげの中には灰色の埃が」。
「彼の前には広々とした場所が広がり、火のような昼に照らされていた。彼の服は着古された貧相なものであり、彼の足は道の埃に覆われ、短い金色の顎鬚には灰色の埃が」。
Спутники его остались далеко внизу, в тени олив, и спят, усталые.
メモ
спутник(←спутники:複数形):道連れ、同行者、連れ合い
остаться(←остались:過去形、複数形):残る、居残る(完了体)
→оставаться(不完了体)
далеко:遠くに、遙かに
внизу:下に、下部に
тень(←тени:複数形、対格):影、投影
олива(←олив:複数形、対格):オリーブ、オリーブの実
спать(←спят:現在形、三人称、複数形):眠る、睡眠する、寝入っている(不完了体)
「彼の同行者は残っていたはるか下に、オリーブの影の中で、眠っていた、疲れて」。
今回の夢のセリョージャには道連れがいるらしい。
「彼の同行者は、はるか下に居残っていた。オリーブの影の下で疲れて眠っていた」。
А вокруг него все ярче свет, и все торжественнее сияние широких небес. Прозрачно рея в воздухе, и небесную прохладу неся в широко взвеваемых складках своих одежд, два светозарные мужа предстали и беседуют с ним.
メモ
вокруг:まわりを、まわりに
яркий(←ярче:比較級):明るい、光の強い
торжественный(←торжественнее:比較級?):儀式の、荘厳な、壮大な
сияние:輝き、光、閃光
прозрачный(←прозрачно:短尾形、中性形):透明な、澄んだ
рея:副分詞
→реять:(滑るように)進む、流れる、飛ぶ
небесный(←небесную:女性形、対格):空の、天の、天国の
прохлада(←прохладу:対格):涼しさ、涼気
неся:副分詞
→нести:(一定の方向へ)運ぶ、手に持って運んでいく(不完了体)
широко:広範囲に、派手に
взвеваемый(←взвеваемых:複数形、前置格):受動形容分詞現在
→взвевать:吹き上げる(不完了体)
→взвеять(完了体)
складка(←складках:複数形、前置格):ひだ
светозарный(←светозарные:複数形):(詩)照り映える、燦然たる、煌く
муж(←мужа:生格):夫、(廃)(雅)成人男子
предстать(←предстали:過去形、複数形):(…の眼前に)現れる、姿を現す、思われる(完了体)
→представать(不完了体)
беседовать(←беседуют:現在形、三人称、複数形):…と会談する(不完了体)
「彼の周りにはますます明るくなる光が、ますます荘厳となる輝きが、広々とした空の。澄んだ空を飛びながら、天国の涼しさを運びながら、広範囲に自分の服の襞を吹き上げた二人の燦然たる成人男子が現れ彼と会談した」。
成人男子って……。既存の訳では天使となっていたけれど、мужにそんな意味があるとはあんまり。それに天使と書くとキューピット的な子供の姿を想像するしなぁ。
「彼の周りでは、光が更に明るくなり、広々とした空の輝きは更に荘厳となった。澄んだ空を飛び、天国の涼しさを運びながら、派手に己の衣服の襞を吹き上げた二人の燦然たる男性が現れ、彼と話した」。
衣服の襞を吹き上げる、って光景がかなり謎。
И спрашивает он:— А кто же я?— Не бойся, — говорят ему светозарные мужи, — ты в третий день воскреснешь.
メモ
спрашивать(←спрашивает:現在形、三人称、単数形):問う、尋ねる、質問する(不完了体)
→спросить(完了体)
бояться(←бойся:命令形):恐れる、怖がる(不完了体)
воскреснуть(←воскреснешь:現在形、二人称、単数形):(死者が)蘇る、復活する(完了体)
→воскресать(不完了体)
「彼が問うた。『けれども僕は一体誰なんだ?』『恐れてはなりません』。輝く男性たちが彼に言った。『君は第三の日に甦る』」。
第三の日に復活すると予言された(自分でしたんだっけ)のはキリストじゃないですか、やだー。これが「僕は一体誰なの?」に対する答えなのか?
「彼は尋ねた。『けれども僕は一体誰なんだ?』『恐れてはなりません』。光り輝く二人が彼に言った。『第三の日に君は復活する』」。
И уже пламенно белы его одежды, и уже огненный нимб над его головою, и огнем вся в теле пламенеет его кровь, и несказанный восторг исторгает из его груди громкий вопль.
メモ
пламенный(←пламенно:短尾形、中性形):(廃)炎の、炎による、燃え盛る
огненный:火の、火の色をした、真っ赤な、激しい、熱のこもった
нимб:(イコンなどの)後光、光背、光輪
огонь(←огнем:造格):(単)光、炎;明かり、目の輝き
пламенеть(←пламенеет:現在形、三人称、単数形):燃え上がる、めらめら燃える、赤々と輝く(不完了体)
кровь:血、血液
несказанный:言うに言われない、言い表せないほどの、言語に絶する、極度の
восторг:狂喜、歓喜、有頂天、感激、恍惚、エクスタシー
исторгать(←исторгает:現在形、三人称、単数形):(雅)追放する、(詩)引き抜く、(音などを)生じさせる(完了体)
→исторгнуть(不完了体)
громкий:大きな音の、大声の
вопль:(大きな)叫び声、泣き声
「既に彼の白い服は燃え盛り、既に彼の頭の上には火の色をした光の輪が、そして炎によって体の中の彼の血液全てが燃え上がり、言語に絶する狂喜は彼の胸から大きな叫び声を生じさせた」。
これ単純に、病状の猛烈な悪化が夢に激烈な影響を与えているだけなんじゃないか疑惑が。
「彼の白い服は既に燃え盛り、彼の頭の上には既に火の色をした光の輪が、そして体の中の全ての血液が炎により燃え上がった。言葉に尽くせぬほどの激しい喜びが、彼の胸から大きな叫び声を生じさせしめた」。
動詞исторгатьは何となくカッコよく訳してあげたいのだけど、特に良い日本語を思いつかない。
V
Очнулся. Сбежались на его крик, испуганные стоят у его постели.
メモ
очнуться(←очнулся:過去形、男性形):目を覚ます、我に返る、正気づく(完了体)
сбежаться(←сбежались:過去形、複数形):(一ヵ所に)駆け集まる(完了体)
→сбегаться(不完了体)
крик:叫び声
испуганный(←испуганные:複数形):驚いた、驚いた様子の
「目を覚ました。彼の叫び声に駆け集まってきた、驚いた様子で彼のベッドの近くに立っていた」。
動詞の活用形を見れば主語が分かるから略しました、ってことなのだろうが全力で主語が失踪。
主語を補うなら「(セリョージャは)目を覚ました。彼の叫び声に(彼ら=家族?)が駆け集まって来た、驚いた様子で彼のベッドの近くに立っていた」かな。
日本語として成り立つ程度に整理して、「彼は目を覚ました。彼の叫び声に、驚いた皆がベッドへと駆けつけた」。
струйка[指小形]
→струя:(水・空気・光などの)細い流れ
течь(←течет:現在形、三人称、単数形):(液体が)流れる、流れ出る(不完了体)
рот(←рта:生格):(人の)口、口腔
выливаясь:副分詞
→выливаться:流れ出す、こぼれる、溢れる(不完了体)
→вылиться(完了体)
левый(←левого:生格):左の、左側の
край(←края:生格):端、へり、ふち
побледневший(←побледневших:複数形、生格):能動形容分詞過去
→побледнеть:蒼白になる、青ざめる(完了体)
→бледнеть(不完了体)
губа(←губ:複数形、生格):唇
выше:超えている、超越する、…よりも優れている
собравшийся(←собравшихся:複数形、生格):受動形容分詞過去
→собрать:集める、集合させる、招集する(完了体)
→собирать(不完了体)
смертный(←смертного:生格):死の、死に関わる、死者の、死すべき
ложе(←ложа:生格):横臥するための場所
широкий(←широкие:複数形):幅の広い、動きの大きな、大ぶりな
неподвижный:動かない、静止した
ужас:恐怖、戦慄
「細い血の流れが流れ出た彼の口から、青ざめた唇の左端から溢れながら。彼の顔は生気の無い白、眼は驚いた様子で見ていた、懐かしい自分の、彼の死の床に集められた、を超越したものを―動きの大きな眼、動かない恐怖」。
分からない。なんか名詞が足りない気がする。敢えて外しているんだろうけれど。
「青ざめた唇の左端から溢れた血液が、細い筋となって流れた。彼の顔は生気のない白、その眼は驚いた様子で見ていた。彼の死の床に集められた懐かしい己の家族を超越したものを。――大きく開かれた眼、静止した恐怖」。
широкийとнеподвижныйが対になっているのだろうけれど、上手い日本語を思いつかないな。
безглазый(←безглазая:女性形):片[両]目を失った、盲目の
только:ただ、単に、たった、僅かに、ただ…だけ、もっぱら
страшный(←страшными:複数形、造格):恐ろしい、恐るべき
сверкая:副分詞
→сверкать:輝く、きらきら光っている
зуб(←зубами:複数形、造格):歯
неумолимый(←неумолимая:女性形):仮借ない、容赦ない、避けがたい
вея:副分詞
→веять:(空中に)漂う、広がる(不完了体)
вечный(←вечным:造格):永遠の、永久の、不滅の
холод(←холодом:造格):寒さ、寒気、冷たさ
тьма(←тьмою:造格):闇、暗黒
громадный(←громадная:女性形):巨大な、多数の、大量の
выпить(←выпила:過去形、女性形):飲む(完了体)
→выпивать(不完了体)
туча:雨雲、黒雲、(空気中に密集して漂う)ほこり、蒸気、煙
колыша:副分詞
→колыхать:軽く揺らす、そよがせる、ひらひらさせる(不完了体)
→колыхнуть(完了体・一回)
тяжёлый(←тяжелые:複数形):重い、重量のある、厚手の
складка(←складки:生格):襞
стремится(←стремится:現在形、三人称、単数形):突進する、ばく進する、急行する(不完了体)
прямо:一直線に
ややこしいので、まずは一文目だけ。性と数で名詞・形容詞を色分け。青=男性形、赤=女性形、緑=複数形、太字は名詞。紫色は副分詞、紫色で下線を付けたのは三人称単数形の動詞。
Черная, безглазая, только страшными, белыми сверкая зубами, подходит к нему неумолимая, вея вечным холодом и вечною тьмою.
女性形の名詞はтьмаだけだが、造格。これではその直前のвечный以外の女性形形容詞の受け手とはなれない……よね?
вечный以外の女性形の形容詞は主格形でもあるから、これらを受ける女性名詞こそが、この文の主語のはず。でも居ないからもう「彼女」として訳そう。
「黒く盲目で避けがたい彼女、ただ恐ろしく白い歯を輝かせるだけの、が彼に近づいてきた、永遠の寒さと永遠の闇を漂わせながら」。
なるほど日本語としては意味不明になりましたね。言いたい所はたぶん分かるけれど、どうしたものかな。
「黒き盲目の、避けがたき彼女。恐ろしい歯だけを白く輝かせながら、彼へと近づいた。永遠なる寒さ、永遠なる闇を漂わせながら」。造格なら殺した。
二行目。ここで原文にも彼女という主語が登場。「彼女は巨大で、彼女はセリョージャの空気を全て飲み、まるで黒い雲のように、よそがせていた重そうな自分の服の襞を、彼女はまっすぐにセリョージャへと突進した」。
だから襞って何よ。何なのさ。吹き上げたりそよがせたりしてるけど!
「彼女は巨大であり、セリョージャの息を全て呑んでしまった。まるで黒雲のように、重たげな服の襞を揺らしていた。彼女は真っ直ぐにセリョージャへと突進した」。
слышеный(←слышен:短尾形、男性形):聞こえる、聞き取れる
подобный:…に似た、…に類似の、…と同様の
гром(←грому:与格):雷、雷鳴
「しかし燦然たる成人男性の声が聞こえた、雷にも似た。『第三の日に甦る』」。
雷に似た声ってなんだかとんでもなく耳に悪そう。
「しかし、燦然たる男性の雷に似た声が聞こえた。『第三の日に甦る』」。
мантия(←мантиею:造格):(踵まで届く)長いマント
гостья(←гостьи:生格):客(女性形)
мертвый(←мертвой:女性形、生格?):死んだ、死んでいる、死人のような、生気のない
загораться(←загораются:現在形、三人称、単数形):火がつく、燃え出す、灯がともる、輝く(不完了体)
→загореться(完了体)
золотый(←золотые:複数形):金の、金色の、優れた、素晴らしい
молния(←молнии:複数形):稲妻、電光
воскресный(←воскресного:複数形、生格):日曜日の
радуя:副分詞
→радовать:喜ばせる、(耳目・心などを)楽しませる(不完了体)
→обрадовать(完了体)
око(←очи:複数形):眼、目
бледный(←бледное:中性形):(顔が)青白い、土気色の、色の薄い、ぼんやりした
озаряться(←озаряется:現在形、三人称、単数形):(照らされて)明るくなる、(感情などで)輝く(不完了体)
→озариться(完了体)
радость(←радостью:造格):喜び、愉悦、歓喜
шептать(←шепчет:現在形、三人称、単数形):囁く、かすかな音を立てる(不完了体)
задыхаясь:副分詞
→задыхаться:息を切らせる、息を弾ませる、苦悶する、苦しむ(不完了体)
→задохнуться(完了体)
「死の女客の黒い長いマントの後ろで、日曜日の日の金色の稲妻が輝いた、セリョージャの目を楽しませながら。セリョージャの青白い顔は輝いた、稲妻の金色の喜びによって、そして彼の目の中にはかすかな歓喜が。彼は囁いた、息を切らせながら」。
ロシア語では問題なくとも、日本語になると割と意味不明。なので手を入れた。
「死の女客の黒いマントの後ろで、聖日曜日の金色の稲妻が閃き、セリョージャの眼を喜ばせた。セリョージャの青白い顔は、電光の金の喜びによって輝き、彼の眼の中にはかすかな歓喜が。彼は息を切らせながら、囁いた」。
「『第三の日に甦る』。そして、死に行った……」。
хоронить(←хоронили:過去形、複数形):埋葬する、埋葬の儀式を行う(不完了体)
очнуться(←очнулся:過去形、男性形):目を覚ます、我に返る、正気づく(完了体)
сбежаться(←сбежались:過去形、複数形):(一ヵ所に)駆け集まる(完了体)
→сбегаться(不完了体)
крик:叫び声
испуганный(←испуганные:複数形):驚いた、驚いた様子の
「目を覚ました。彼の叫び声に駆け集まってきた、驚いた様子で彼のベッドの近くに立っていた」。
動詞の活用形を見れば主語が分かるから略しました、ってことなのだろうが全力で主語が失踪。
主語を補うなら「(セリョージャは)目を覚ました。彼の叫び声に(彼ら=家族?)が駆け集まって来た、驚いた様子で彼のベッドの近くに立っていた」かな。
日本語として成り立つ程度に整理して、「彼は目を覚ました。彼の叫び声に、驚いた皆がベッドへと駆けつけた」。
Тонкая струйка крови течет из его рта, выливаясь из левого края побледневших губ. Лицо его мертвенно-бело, глаза испуганно смотрят выше милых своих, собравшихся у его смертного ложа, — широкие глаза, неподвижный ужас.
メモструйка[指小形]
→струя:(水・空気・光などの)細い流れ
течь(←течет:現在形、三人称、単数形):(液体が)流れる、流れ出る(不完了体)
рот(←рта:生格):(人の)口、口腔
выливаясь:副分詞
→выливаться:流れ出す、こぼれる、溢れる(不完了体)
→вылиться(完了体)
левый(←левого:生格):左の、左側の
край(←края:生格):端、へり、ふち
побледневший(←побледневших:複数形、生格):能動形容分詞過去
→побледнеть:蒼白になる、青ざめる(完了体)
→бледнеть(不完了体)
губа(←губ:複数形、生格):唇
выше:超えている、超越する、…よりも優れている
собравшийся(←собравшихся:複数形、生格):受動形容分詞過去
→собрать:集める、集合させる、招集する(完了体)
→собирать(不完了体)
смертный(←смертного:生格):死の、死に関わる、死者の、死すべき
ложе(←ложа:生格):横臥するための場所
широкий(←широкие:複数形):幅の広い、動きの大きな、大ぶりな
неподвижный:動かない、静止した
ужас:恐怖、戦慄
「細い血の流れが流れ出た彼の口から、青ざめた唇の左端から溢れながら。彼の顔は生気の無い白、眼は驚いた様子で見ていた、懐かしい自分の、彼の死の床に集められた、を超越したものを―動きの大きな眼、動かない恐怖」。
分からない。なんか名詞が足りない気がする。敢えて外しているんだろうけれど。
「青ざめた唇の左端から溢れた血液が、細い筋となって流れた。彼の顔は生気のない白、その眼は驚いた様子で見ていた。彼の死の床に集められた懐かしい己の家族を超越したものを。――大きく開かれた眼、静止した恐怖」。
широкийとнеподвижныйが対になっているのだろうけれど、上手い日本語を思いつかないな。
Черная, безглазая, только страшными, белыми сверкая зубами, подходит к нему неумолимая, вея вечным холодом и вечною тьмою. Она громадная, она весь выпила Сережин воздух, и, как черная туча, колыша тяжелые складки своих одежд, стремится она прямо на Сережу.
メモбезглазый(←безглазая:女性形):片[両]目を失った、盲目の
только:ただ、単に、たった、僅かに、ただ…だけ、もっぱら
страшный(←страшными:複数形、造格):恐ろしい、恐るべき
сверкая:副分詞
→сверкать:輝く、きらきら光っている
зуб(←зубами:複数形、造格):歯
неумолимый(←неумолимая:女性形):仮借ない、容赦ない、避けがたい
вея:副分詞
→веять:(空中に)漂う、広がる(不完了体)
вечный(←вечным:造格):永遠の、永久の、不滅の
холод(←холодом:造格):寒さ、寒気、冷たさ
тьма(←тьмою:造格):闇、暗黒
громадный(←громадная:女性形):巨大な、多数の、大量の
выпить(←выпила:過去形、女性形):飲む(完了体)
→выпивать(不完了体)
туча:雨雲、黒雲、(空気中に密集して漂う)ほこり、蒸気、煙
колыша:副分詞
→колыхать:軽く揺らす、そよがせる、ひらひらさせる(不完了体)
→колыхнуть(完了体・一回)
тяжёлый(←тяжелые:複数形):重い、重量のある、厚手の
складка(←складки:生格):襞
стремится(←стремится:現在形、三人称、単数形):突進する、ばく進する、急行する(不完了体)
прямо:一直線に
ややこしいので、まずは一文目だけ。性と数で名詞・形容詞を色分け。青=男性形、赤=女性形、緑=複数形、太字は名詞。紫色は副分詞、紫色で下線を付けたのは三人称単数形の動詞。
Черная, безглазая, только страшными, белыми сверкая зубами, подходит к нему неумолимая, вея вечным холодом и вечною тьмою.
女性形の名詞はтьмаだけだが、造格。これではその直前のвечный以外の女性形形容詞の受け手とはなれない……よね?
вечный以外の女性形の形容詞は主格形でもあるから、これらを受ける女性名詞こそが、この文の主語のはず。でも居ないからもう「彼女」として訳そう。
「黒く盲目で避けがたい彼女、ただ恐ろしく白い歯を輝かせるだけの、が彼に近づいてきた、永遠の寒さと永遠の闇を漂わせながら」。
なるほど日本語としては意味不明になりましたね。言いたい所はたぶん分かるけれど、どうしたものかな。
「黒き盲目の、避けがたき彼女。恐ろしい歯だけを白く輝かせながら、彼へと近づいた。永遠なる寒さ、永遠なる闇を漂わせながら」。
二行目。ここで原文にも彼女という主語が登場。「彼女は巨大で、彼女はセリョージャの空気を全て飲み、まるで黒い雲のように、よそがせていた重そうな自分の服の襞を、彼女はまっすぐにセリョージャへと突進した」。
だから襞って何よ。何なのさ。吹き上げたりそよがせたりしてるけど!
「彼女は巨大であり、セリョージャの息を全て呑んでしまった。まるで黒雲のように、重たげな服の襞を揺らしていた。彼女は真っ直ぐにセリョージャへと突進した」。
Но слышен голос светозарного мужа, подобный грому:— В третий день воскреснешь.
メモслышеный(←слышен:短尾形、男性形):聞こえる、聞き取れる
подобный:…に似た、…に類似の、…と同様の
гром(←грому:与格):雷、雷鳴
「しかし燦然たる成人男性の声が聞こえた、雷にも似た。『第三の日に甦る』」。
雷に似た声ってなんだかとんでもなく耳に悪そう。
「しかし、燦然たる男性の雷に似た声が聞こえた。『第三の日に甦る』」。
И за черною мантиею мертвой гостьи загораются золотые молнии воскресного дня, радуя Сережины очи. Сережино бледное лицо озаряется радостью золотых молний, и в глазах его тихий восторг. Он шепчет, задыхаясь:
メモмантия(←мантиею:造格):(踵まで届く)長いマント
гостья(←гостьи:生格):客(女性形)
мертвый(←мертвой:女性形、生格?):死んだ、死んでいる、死人のような、生気のない
загораться(←загораются:現在形、三人称、単数形):火がつく、燃え出す、灯がともる、輝く(不完了体)
→загореться(完了体)
золотый(←золотые:複数形):金の、金色の、優れた、素晴らしい
молния(←молнии:複数形):稲妻、電光
воскресный(←воскресного:複数形、生格):日曜日の
радуя:副分詞
→радовать:喜ばせる、(耳目・心などを)楽しませる(不完了体)
→обрадовать(完了体)
око(←очи:複数形):眼、目
бледный(←бледное:中性形):(顔が)青白い、土気色の、色の薄い、ぼんやりした
озаряться(←озаряется:現在形、三人称、単数形):(照らされて)明るくなる、(感情などで)輝く(不完了体)
→озариться(完了体)
радость(←радостью:造格):喜び、愉悦、歓喜
шептать(←шепчет:現在形、三人称、単数形):囁く、かすかな音を立てる(不完了体)
задыхаясь:副分詞
→задыхаться:息を切らせる、息を弾ませる、苦悶する、苦しむ(不完了体)
→задохнуться(完了体)
「死の女客の黒い長いマントの後ろで、日曜日の日の金色の稲妻が輝いた、セリョージャの目を楽しませながら。セリョージャの青白い顔は輝いた、稲妻の金色の喜びによって、そして彼の目の中にはかすかな歓喜が。彼は囁いた、息を切らせながら」。
ロシア語では問題なくとも、日本語になると割と意味不明。なので手を入れた。
「死の女客の黒いマントの後ろで、聖日曜日の金色の稲妻が閃き、セリョージャの眼を喜ばせた。セリョージャの青白い顔は、電光の金の喜びによって輝き、彼の眼の中にはかすかな歓喜が。彼は息を切らせながら、囁いた」。
— В третий день воскресну.И умирает…
「『第三の日に甦る』。そして、死に行った……」。
VI
В третий день его хоронили.
メモхоронить(←хоронили:過去形、複数形):埋葬する、埋葬の儀式を行う(不完了体)
ここから六章。
「第三の日に彼を葬った」。
ソログープさんの特徴は、繊細な表現力と、それと同居する通り魔的な物語展開。
さりげない一行で殺しに来ると申しますか。
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