「潜入!ロシアの凶悪受刑者たち」


 私が大好き、ナショナルジオグラフィックチャンネルからまた一番組。相変わらずhuluを介して見ているが、最近は無線LAN接続でも切れにくくなってて割と快適。
 まぁ画質はお察しなのだが……。


 今回の番組は「潜入!ロシアの凶悪受刑者たち」という1回完結のもの。ロシア国外からの取材を初めて受け入れた刑務所を含む。
 登場する刑務所は全部で3箇所。一番最初が一番凶悪で、段々と軽い刑の受刑者のための刑務所になるという謎構成。



 最初の刑務所はカザフスタン国境近郊の、ド田舎にあるブラック・ドルフィン刑務所。
 名前の通り刑務所の前には黒いイルカの像が鎮座ましている。
 ……最近、ポケモンGOのために天保山に行った身には、マーケットプレイスの前にこんな感じでカラーな居るが像があったなぁと、変な親近感が。
 ここはロシアの凶悪犯が最後に辿り着く地。全員が終身刑だ。どうやらロシアには死刑はないらしい。
 収容者約700人に対して、彼らの被害者は3500人。1人頭5人殺している計算になるのだから、凄まじい。

 受刑者に自由を与えているアメリカの刑務所は生ぬるい、と取材を受けた刑務官は言う。彼には受刑者が自分と同じ人間なのか、分からない。
 彼の言う通り、ブラック・ドルフィンには食堂はない。受刑者は2人1組で監房に入れられ、そこで一日を過ごす。食事もこの監房で行うのだ。同室の人間以外を見ることはない。
 とは言え、彼らにも監房を出られる時間がある。運動の時間だ。
 監房から出た彼らは3人の刑務官と犬に囲まれ、腰を折って歩く。腰を折らせるのは警務のためであり、方向感覚を狂わせるためでもある。棟を渡る際には目隠しまでする念の入れようで、ブラック・ドルフィン刑務所の構造を彼らが知ることはない。
 運動場は屋内で、彼らが外の空気を胸一杯に吸うことは出来ない。運動器具などはなく、ただ運動場をぐるぐる歩くのが精一杯だ。
 その間に、監房は刑務官により徹底的に検査される。受刑者の運動のために、ではなく、監房を調査するために彼らが運動場に連れて行かれるとの印象を受けた。

 ブラック・ドルフィン刑務所の受刑者の内、取材を受けてくれた一人は、人肉喰いの男だ。
 口喧嘩の末に衝動的に人を殺した彼は、証拠隠滅のために死体をバラしている最中に、ふと思ったと言う。「どんな味がするのだろう」と。そして彼は今、ブラック・ドルフィン刑務所に居る。
 刑務官の言う「彼らが自分と同じ人間なのか分からない」との弁が嫌な説得力を持つ。 脱獄不可能なこのブラック・ドルフィンを終身刑の彼ら受刑者が出られるのは、棺桶に入った後のみだ。



 続いては、ロシア最古の刑務所であるウラジーミル中央刑務所。228年の歴史を持つ。歴史を裏切らず建物は古い。それを数多の空中回廊たちが繋いでいる。構造は複雑だ。
 ここに収容されている受刑者は、ブラック・ドルフィン刑務所よりも刑は軽い。その一人は姉とその夫を殺した男だ。同居していた姉夫婦の騒音に悩まされた彼は注意をしに行き、そして彼は殺人犯となった。
 彼らはみな、入れ墨を入れている。それぞれの罪と人生に合わせて絵柄は決まる。体中に入れられた墨は、彼らの歩んできた人生そのものである。
 ……アメリカの刑務所でも思ったが、そもそも、どうやって、誰が入れ墨を入れるのだろう。


 最後に取材クルーが訪れるのは、シベリア第17刑務所。かつて政治犯を収容していた悪名高き刑務所は、今では初犯の受刑者を主に受け入れている。
 ここではちゃんと食堂があり、受刑者たちは好きな席で食事を摂る。
 運動場も屋外だ。朝6時から軽い体操が行われている。が、温度はマイナス45℃である。
 この刑務所で主役となるのは、盗みで捕まったドミートリと麻薬所持で捕まったジョージの二人だ。
 人生の再出発を目指すドミートリは、仮釈放申請の結果を待っていた。仮釈放申請が通って初めて、仮釈放についての審判が始まるようだ。
 彼の楽しみは、家族との面会だ。遠くに住んでいるために一年に一度程度しか来られないが、しかし面会室は食堂のようにオープンで、ガラス越しではない。インスタントコーヒーも焼き菓子もある。
 仮釈放申請の返事を待つドミートリを、同室のジョージが支える。刑務所で出会った二人は友情を育み、今では無二の親友だ。
 彼らが刑期を終えた後も友人関係を続け、幸福な生活を築けることを祈りたくなる。


 国外からの取材クルーに対して、受刑者からは人権侵害の申し立てがなされるのが今までの恒例であったが、今回はその手の申し立てはなかったそうだ。
 ロシアの刑務所も時代と共に変わっているのかもしれない。


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