随分と間が開いてしまったけれど、「イヴァン・イヴァノヴィッチは甦れり」の続き。
出典は以下: «Собрание сочинений в восьми томах Том 3. Слаще яда»収録、«Книга стремлений»項目内«Иван Иванович воскрес» (БИБЛИОТЕКА РУССКОЙ КЛАССИКИサイト内、Федор Кузьмич Сологубのページより)
今回も、
例によってツッコミ等は歓迎しております。
以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。
注:色つき文字部分は、私(春色)の独り言。
太字は原文、もしくは最終的な日本語訳。
Наконец, когда жалованье Ивану Ивановичу прибавили, нанял он свою квартиру в четыре комнаты, и завел обстановку. Квартира на Петербургской стороне, но близ линии трамвая. Комнаты маленькие, обстановка не Бог весть какая, но для холостяка чего же больше? Живет!
メモ
наконец:遂に、とうとう、やっと結局
жалованье:(廃)俸給、給金、手当
прибавить(←прибавили:過去形、複数形):追加する、付け足す;(大きさ・量・速度などを)広げる、長くする(完了体)
→不完了体:прибавлять
нанять(←нанял:過去形、男性形):(人を)雇う、雇用する;(料金を払って)借りる、賃貸する、雇う(完了体)
→不完了体:нанимать
завести(←завел:過去形、男性形):導き入れる、連れて行く;手に入れる、持つ(完了体)
→不完了体:заводить
обстановка(←обстановку:対格):[集合]家具調度、造作
близ:…の近くに、…のそばに
линия(←линии:生格):線、すじ
не бог весть[знает] как[какой, что ]:あまりよくなく、あまりよくない;大して…ではない
весть:知らせ、通知、消息、便り
холостяк(←холостяка:生格):(ふつう中年以上の)独身者
「遂に、イヴァン・イヴァノヴィッチの給金が上がった時、四つの部屋を持つ自分の住居を彼は借り、家具調度を手に入れた。住居はペテルブルグの地にあったが、しかし路面電車の路線の近くであった。部屋は小さく、家具調度はあまり良いものではなかったが、しかし独身者には大きすぎるのではないか? 生きる!」
最後のЖивет!をどうして良いのか分からないので、もうそのままにしておいたヨ。
「イヴァン・イヴァノヴィッチの給料が遂に上がった時、彼は四つの部屋を有する住まいを自分のために借り、家具調度をも入れた。住居はペテルブルグにあったが、路面電車の路線の側だった。部屋は小さく、家具調度は上等とは言えなかった。だが独身者には立派すぎるのではないだろうか? 生きる!」
На полу в кабинете Иван Иванович ковер разостлал. На стену в гостиной повесить купил гравюр и фотографий, и заказал к ним красивые рамочки, — все вроде тех гравюр, фотографий и рамок, который видел он у своих семейных знакомых. Провел электрическое освещение.
メモ
кабинет(←кабинете:前置格):書斎、仕事部屋
ковёр:絨毯、カーペット
разостлать(←разостлал:過去形、男性形):(広げて)敷く、一面に並べる;広げる(完了体)
→不完了体:расстилать
стена(←стену:対格):壁、障壁、壁面
гостиная(←гостиной:前置格?):客間、応接間
повесить:掛ける、吊す(完了体)
→不完了体:вешать
гравюра(←гравюр:複数形、生格):版画;その下絵
заказать(←заказал:過去形、男性形):注文する、誂える(完了体)
→不完了体:заказывать
рамочка(←рамочки:生格?):рамкаの指小形:(小さな)縁、枠
вроде:(ふつう不定代名詞что-то, нечтоと共に)…のような、…に似た
семейный(←семейных:複数形、生格):家族を持つ、家庭を持つ
знакомый(←знакомых:複数形、生格):知っている、聞き覚えのある;知り合いの
провести(←провел:過去形、男性形):(誘導して)通らせる;(線を)引く、印を付ける(完了体)
→不完了体:проводить
электрический(←электрическое:中性形):電気の;電動の
освещение:照らすこと、明るくすること;照明、明かり、光
「部屋の床の上にイヴァン・イヴァノヴィッチはカーペットを敷いた。書斎の壁に掛けるために版画と写真を買い、それらに美しい枠を注文した――これらの版画と写真と枠とは全く似ていた、自分の家庭持ちの知り合いたちのところで彼が見たものと。電気の照明を引いた」
日本語として整理して。
「イヴァン・イヴァノヴィッチは部屋の床にカーペットを敷いた。書斎の壁に飾るために版画と写真をと購入し、それらに美しい枠を注文した。この版画、写真、枠の全ては家庭を持つ彼の知り合いのところで見たものに似ていた。照明の電気を引いた」
照明の電気ってなんか日本語としてアレだな。単に電気じゃ駄目なんだろうか。
В кабинете на столе Иван Иванович телефон поставил. Как же, нельзя без телефона! У всех есть. Чуть что, сейчас позвонишь, соединят, спросишь:
— Это дирекция итальянской оперы?
— Да.
— Билеты на Таису есть?
— Сколько угодно.
メモ
телефон:電話
поставить(←поставил:過去形、男性形):立てる、(立てて)置く(完了体)
→不完了体:ставить
как
же:(口)もちろんだ、当然だ;(喜び・誇りなどの気分を表して)当然だ、無理もない
нельзя:[無人述]…できない(不可能) ;…してはいけない(禁止)
чуть:(副詞)ほんの少し、わずかに、かすかに;かろうじて、やっと;(接続詞)…するやいなや
чуть что:何かあると、ちょっとしたことですぐ
позвонить(←позвонишь:現在形、二人称、単数形):(鐘・鈴などを)鳴らす(不完了体)
→不完了体:звонить
соединить(←соединят:現在形、三人称、複数形):一つにまとめる、結合させる、結集する、統合する、合体する(完了体)
→不完了体:соединять
дирекция:(企業・学校などの)管理部門、監督機関;管理室、理事室
итальянский(←итальянской:女性形、生格?):イタリア人の、イタリアの
опера(←оперы:生格):オペラ
билет(←Билеты:複数形):切符、入場券
сколько угодно:思う存分、心ゆくまで
「書斎の机の上に、イヴァン・イヴァノヴィッチは電話を置いた。当然だ、電話がなくてどうする! 全てのものがあった。ちょっとしたことですぐ、今は電話が鳴る、繋がる、尋ねる。
『イタリアオペラの管理室ですか?』
『はい』
『タイスのチケットはありますか?』
『お好きなだけ』」
詩的な表現って翻訳するの難しいな。
Или к знакомым:
— Петр Петрович дома?
— Его нет. А кто говорит?
— Это я говорю, Завидонский.
— А, Иван Иванович, здравствуйте. Узнаете по голосу?
— Как же! Здравствуйте, Анна Алексеевна. Вечером собираетесь в оперу?
— Нет, сегодня мы дома. Приходите. Свободны?
— О, да, благодарю очень. С большим удовольствием.
— Кстати, я еще кое к кому позвоню.
Вот и позвали. Вот вечер и наполнен.
メモ
узнать(←узнаете:現在形、二人称、複数形):(見て・聞いて)…だと分かる、…だと気付く(完了体)
→不完了体:узнавать
собираться(←собираетесь:現在形、二人称、複数形):集まる;…することに決める、…するつもりである(不完了体)
→完了体:собраться
приходить(←приходите:現在形、二人称、複数形):(歩いて)来る、やって来る(不完了体)
→完了体:прийти
свободный(←свободны:短尾形、複数形):自由な;(時間が)仕事で塞がっていない、自由な
благодарить(←благодарю:現在形、一人称、単数形):(廃)(方)…に礼を言う、感謝する(不完了体)
→完了体:поблагодарить
удовольствие(←удовольствием:造格):満足、喜び
кстати:折良く、ちょうどよい時に;ついでに、ちょうどよい機会だから
кой(←кое:中性形):[疑問](廃)(方)いずれの、何番目の;いかなる;…するところの
кое-кто:何人かの人たち、ある人々、だれかかれか;(特にその名を挙げたくない場合に)ある人
позвонить(←позвоню:現在形、一人称、単数形):電話を掛ける(完了体)
→不完了体:звонить
позвать(←позвали:過去形、複数形):しばらく呼びかける(完了体)
→不完了体:звать:呼ぶ、呼びかける;招く、招待する
наполненный(←наполнен:短尾形、男性形):受動形容分詞過去
→наполнить:…でいっぱいにする、…で満たす(完了体)
→不完了体:наполнять
「あるいは知り合いに。
『ピョートル・ペトロヴィッチは家にいますか?』
『彼はいません。どなた?』
『ザビダンスキーです』
『あら、イヴァン・イヴァノヴィッチ、こんにちは。声で誰か分かるかしら?』
『もちろん! こんにちは、アンナ・アレクセヴナ。晩はオペラにしない?』
『ないわ。今日は私たち家で過ごすのよ。行ってらっしゃいな。時間はあるんでしょ』
『ええ、どうもありがとう。大きな感謝を』
『ちょうど良い折だから、私ももうある人に電話を掛けるわね』
ついに呼びかけ終わった。ついに晩は満たされた」
なんとも訳しにくいなー。
「あるいは知り合いに対して。
『ピョートル・ペトロヴィッチはご在宅ですか?』
『彼ならいません。どなたです?』
『ザビダンスキーです』
『あらイヴァン・イヴァノヴィッチ、こんにちは。声で私が誰か分かるかしら?』
『もちろん! こんにちは、アンナ・アレクセヴナ。晩にオペラに行くつもりはない?』
『ないわ。今日は私たち家で過ごすのよ。行ってらっしゃいな。時間はあるんでしょう?』
『ええ、どうもありがとう。大きな感謝を』
『ちょうど良い折だから、私ももうある人に電話を掛けようかしら』
ついに電話は終わった。ついに晩は満たされた」。
最後の満たされたってのは皮肉が何かかなのかな。
なんだか話がよく分からない。既存訳は存在しないので、そちらに頼ることも出来ない。結構辛い。
ただ、この翻訳自体は去年の6月に終わっていて、それを見ながら今こうやってブログに書いている訳なんですが、自分でも結構翻訳のミスが分かってちょっと自分の進化を感じる。
関連記事:
・試訳の裏側:ソログープ「イヴァン・イヴァノヴィッチは甦れり 1/7」
・試訳の裏側:ソログープ「イヴァン・イヴァノヴィッチは甦れり 2/7」
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