アレクサンドラ・マリーニナ『死刑執行人 モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ〈3〉』



 ……もう何でもアリやな、とグンニャリしてしまった今作。やたらと数あるこのシリーズから何故この作品を訳すことにしたのか割と真面目に翻訳者の吉岡ゆきさんにお訊きしたい。
 他の作品はこのグンニャリ感以上の代物だったりするんでしょうかね……。損切りするのが下手くそで塩漬けして損を重ねるタイプの私は、途中で「はぁ?」と思いつつも結局最後まで読んでしまった訳ですが。
 以下、この低テンションでお送りします。途中でキレてテンションアップする可能性はあります。
 ああでもこの似非科学っぷりが世紀末のロシアってヤツなのかもしれないなぁ。うん。日本もオウム事件前はなんか変なテンションだったし。 あの教祖様、普通にテレビに出て討論してたんだぜ、ストレートに言ってテレビ局の頭おかしいだろ。
 とは言え、過去を後から批判するのはフェアとは言い難いので、個人的にはあまりやりたくないのだが。


 作品社のアナスタシヤシリーズ邦訳3作目の本作品は、前の邦訳2作目『孤独な殺人者』がオリジナルの4作目に当たっていたのに対して、12作目に当たる。ややこしい。
 発表年では1年差でしかないが、作中では『孤独な殺人者』時点から色々と変化があり、本作のアナスタシヤは長く付き合ってきたアレクセイと結婚している。住んでいるのは、相変わらずアナスタシヤの借りているマンションである。

 舞台となっているのはエリツィン時代末期。彼が大統領に再選出来るか不安視されていた時期だ。
 レームダックの気配を漂わせる現職大統領から次の大統領の座を奪おうと有象無象が密かに牙を研ぐ中、政府機関に勤めるアナスタシヤとアレクセイ夫婦は給料の不払いに直面していた。
 海外からの割の良い、そして当然給料の不払いなどあり得ない、仕事に誘われたアレクセイはしかし新婚のアナスタシヤと離れることを嫌がり断固拒絶の構えだ。
 そんな中、アナスタシヤは尊敬する上司ゴルジェーエフから、奇妙な命令を受ける。それは刑務所での二年のお勤めを終えたサウリャクと言う男を、モスクワまで連れ帰って欲しいとの内容であった。
 サウリャクはこの大統領選の流れを大きく変える情報を知っており、それ故に故殺を恐れてあえて自分から罪を犯し刑務所に入っていたのであった。
 政治のことなど知らぬアナスタシヤは、この男をモスクワまで無事に連れ帰るべく知恵を絞る。その結果、彼の「仕事」を知ってしまうことになるとは予想していなかった。


 
 落としどころとしては、そりゃそこしかないだろうと思うと共に、何故こんな話にした?という根本的なツッコミが芽生えてしまう一作。
 既に光文社文庫のアナスタシヤシリーズを予約してしまったので、もう邦訳全部読みます……。


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