ナショナルジオグラフィックチャンネルの中でも私の好きな「メーデー!」シリーズからもう1話をご紹介。
今回はシーズン2の第5話。この頃のメーデー!は完全吹き替えではなく、一部字幕。
Amazonプライムでは同シリーズの9,10,11シーズンが配信中。huluではナショナルジオグラフィックチャンネルをネットを介してリアルタイム配信中。
ちなみに、同ナショジオの別番組「衝撃の瞬間」ではシーズン5の第6話で同じくこのユーバーリンゲン空中衝突事故を扱っており、こちらはAmazonプライムで見ることが出来る。
同じ事故だがアプローチの方法が異なり、それぞれの番組のコンセプトの違いが分かりやすい。そして私はやっぱり「メーデー!」の方が好きだなって。
2002年夏、ロシアのウファ市の優秀な子供達は、ユネスコのスペインでのイベントに招かれた。選ばれた子供達は大喜びで旅行に参加したが、モスクワでスペイン行きの飛行機に乗り遅れてしまう。
なんとかチャーター便が用意されることとなり、子供達と同乗を許された一般の乗客計60名は、バシキール航空2937便に乗り込みロシアを後にした。
このチャーター便には、不思議なことに機長が2人。本来の機長の仕事ぶりを評価するため、もう一人が乗り合わせていたのだ。機長が2人いる場合、危機の際にはどちらが責任を負うのだろうか?
一方、遠く離れたバーレーンからDHL611便も飛び立った。こちらは貨物便であり、乗っているのは機長と副機長の2人だけであった。
この全く異なる二つの飛行機は、ドイツ領空で同じ時間に交差することとなった。その区域の管制業務は民間委託されており、スイスのスカイガイド社が受け持っていた。
その日の夜、当該区域を管制するのは二人。内一人が休憩に入り、一人体制となった。更にメンテナンス作業が重なり、普段とは機器の機能が大幅に制限されていた。
そんな中、管制官は予想外に着陸管制に時間を割かれることとなる。
手に負えないと感じた管制官は電話で他の管制室へとヘルプを求めるが、電話は繋がらない。メンテナンス中なのだ。
もはや管制官一人では裁き切れず救援も訪れない管制区域で、子供たちを乗せたバシキール航空2937便と、DHL611便は交差しようとしていた。
結末としては二機は衝突し墜落、生存者はゼロ。バシキール航空便はDHL便の垂直尾翼により切り裂かれ分解墜落、垂直尾翼をバシキール航空便に破壊されたDHL便は2分間なんとか飛び続けた後の墜落であった。
衝突回避のために下した管制官の指示と、飛行機に装備されているTCAS(空中衝突防止装置)の指示が正反対であったこと、バシキール航空便は管制官の指示に従い、DHL便はTCASの指示に従ったことが原因であった。
悲劇はまだ続く。この事故で妻子を失った男により、件の管制官は自宅で刺殺されることとなった。
「メーデー!」では子供を失った親たちが、その悲しみと共に殺害された管制官への同情を語る。
それは、TCASの装備が義務づけられた後も、管制官の指示とTCASの指示が異なった場合にどちらを優先するのかについての国際的な基準が決まっておらず、またその管制官が己のキャパシティを超える業務を負うこととなったのは彼だけの責任だけではないと彼らが考えるからだろう。
前者の人間と機械のどちらの指示に従うのか、という問題はこの事故の1年前、日本での大型旅客機同士のニアミス(日本航空機駿河湾上空ニアミス事故)という一歩間違えれば航空事故史に大きな足跡を残す事故となりかねなかった事態が起こっていたにも関わらず、正式に制定されていなかったのだから、尚更だ。
この事故が世界的な注目を集めた後、最初にロシアのパイロットの技術が疑われ、次にロシアのパイロットの英語力が疑われるという、もういつもの流れ過ぎてかなりロシア側が可哀想な報道がされた後、事故捜査によりロシアパイロットへの疑念が払拭された次は管制官へのバッシングが続くという加熱を経て、彼は殺されることとなるのだから、本当に報道とは罪作りなものである。
管制官の死後、犯人は捕らえられるがその精神状態が責任能力を問えるのかが争点となり、精神鑑定のために入院するところで「メーデー!」は終わる。
この事故により、管制官とTCASの指示が異なる場合の国際ルールがようやく制定され、またスカイガイド社は遺族に損害賠償を支払う意思を示した。
被害者となった子供の身に付けていた真珠のネックレスを模したモニュメント、彼らの立派な墓がなんとも印象的な一話であった。
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