法村友井バレエ団公演「バヤデルカ Баядерка」を観に行ってきたよ

2016年10月14日 更新



 阪急電車の駅で見かけたロシア文字が気になって、そんな酷い理由で見に行って来たよ。

 初演は1978年のマリインスキー劇場。キューデコフ原作のインドを舞台とする戦士サロルと舞姫ニキヤの悲哀物語を元としているそうな。「アイーダ」と同系統の作品。
 東洋風味のこの手の物語はヨーロッパでウケそうだが、意外なことに長くロシア国内でのみ愛され、1961年にキーロフ・バレエ(マリインスキー・バレエ)のロンドン公演で初めてヨーロッパにもたらされたらしい。
 ヨーロッパでは先行作品の影響により、「ラ・バヤデール」と呼ばれるのが一般的とのこと。

 バレエは数だよ!なかつての時代を反映して、今でも結構派手派手。
 象に乗って登場する人がいたり、仕留められた虎が捧げられたり、また屋敷が倒壊するシーンもあったりして、かなりの裏方泣かせである。
 演奏は関西フィルハーモニー管弦楽団。


・第一幕
 インドのとある藩国。その有能な戦士であるサロル(ミハイル・シヴァコフ)と美しい巫女兼舞姫ニキヤ(法村珠里)は、実は相思相愛の仲にあった。
 サロルがニキヤ会いたさに僧院のそばで隠れていると、高僧たちと巫女たちが現れ儀式が始まる。
 その中の高僧(井口雅也)は、ニキヤにその激しい愛を打ち明けるが拒絶されてしまう。身分こそ高いが高慢な彼に、ニキヤは好感を抱けずにいた。
 儀式の合間に僧の一人マグダベア(奥田慎也)がニキヤに、サロルからの伝言を伝える。今宵合図をしたら僧院を抜け出すように、と。サロルに会えることに喜びを隠しきれないニキヤ。

 夜、久しぶりに顔を合わせた二人は喜び、昼の儀式で呼び出された聖火の前で、変わらぬ愛を誓うのだった。
 そんな折り、高僧がやってくる。マグダベアは二人を隠すのだが、しかし高僧はニキヤとサロルの関係を知ってしまい、サロルに対して隠しきれない憎悪を抱くのだった。


 翌日の城では、藩主ラジャ(法村圭緒)は戦で戦果を上げたサロルを、愛娘ガムザッティ(今井沙耶)に引き合わせる。サロルをガムザッティの婿にすることを決めたのだ。ガムザッティも一目でサロルを気に入る。
 ラジャの強引さと彼への遠慮、またガムザッティの純真な好意に気がとがめたサロルは強く拒絶できないまま、彼らの婚姻の約束は成立してしまうのだった。

 この目出度い席に、最も優秀な舞姫であるニキヤが呼ばれる。
 後ろめたさからニキヤからこそこそと隠れるサロル、ニキヤはガムザッティの相手が誰かも知らぬまま、彼女の婚姻を祝い舞うのだった。
 そんな中、高僧が現れ雰囲気は激変する。彼は人払いをさせ、ラジャにニキヤとサロルが恋仲であることを告げる。
 激怒するラジャ、それを盗み聞いていたガムザッティも嫉妬を隠せない。ガムザッティは召使いアイヤ(大力小百合)に命じてニキヤを呼び出させた。

 何も知らぬニキヤに、サロルが自分と婚約したことを告げるガムザッティ。サロルを諦めろと高圧的に言い張るガムザッティに、取り乱したニキヤや近くにあった短剣で襲いかかるが、それはアイヤによって未遂で終わる。
 ニキヤのその行為に激怒したガムザッティはアイヤに命じて、彼女を自身の式で舞わせるように手配するのだった。


・第二幕
 ガムザッティとサロルの婚約披露の宴が華やかに行われていた。各国の踊り子による様々な舞が次々に振る舞われる。
 ついにニキヤの番が訪れる。彼女は舞姫としての仕事を全うしようとするが、しかしサロルの裏切りから立ち直れない彼女は、つい悲しみを露わにしてしまうのだった。そんなニキヤの姿を、サロルは見ていられない。一方のガムザッティは自慢げにサロルの腕をとるのだった。
 三人の姿を目にしたラジャは、アイヤに残酷な命令を下す。躊躇するアイヤを叱りつけ、ニキヤに渡させたのは、花籠。
 サロルからの花籠だと勘違いしたニキヤは喜び、一転して華やかな舞を踊り始める。だがその時、花籠に仕込まれた毒蛇がニキヤにかみつき、事態は一変する。

 瀕死のニキヤを前に人払いをした高僧は、彼女に自分に愛を誓うなら解毒薬をやろうと囁くが、全てに絶望したニキヤは自ら死を選ぶのだった。


・第三幕
 ニキヤの突然の死に悲しみに耽るサロルは、一人部屋で鬱々としていた。そんな彼の姿を見かねたマグダベアが、彼にクスリを勧める。
 クスリに手を出したサロルは、死の世界をのぞき見るのだった。

 サロルが最初に見たのはニキヤの姿。だが近づくとそこには別人がいた。後から後から現れる彼女たちは死人。
 その列の最後にようやくサロルの愛しい人ニキヤが現れる。
 ニキヤはサロルを赦し、二人は仲良く踊り始めるが、しかしその最中に死人たちは皆消え失せてしまうのだった。

 目が覚めたサロルは、全てはクスリが見せた夢であることを知り落胆する。
 だがそんな彼の心情とは関係なく、結婚式は迫っていた。乗り気ではないサロルを、ラジャは半ば無理矢理に式場へと送り出すのだった。

 婚約披露が人死で終わったことなど忘れ去られ、結婚式は華やかに行われる。
 象に乗った黄金の神(豊永太優)、豪華な輿で現れるラジャにガムザッティ、ついさっきまでクスリをキめていたサロルも、立派な虎の捧げ物を持って登場する。
 ……結婚に対する態度がイマイチ分からないよ、サロルさん。
 祝宴の最中に現れたニキヤの霊はサロルに纏わり付き、聖火の前での誓いのことを思い出させようとするのだが、彼女の思惑とは異なり、式は豪華に華やかに進行していく。
 式の最後、ラジャ自らの手でサロルとガムザッティの結婚を祝福しようとしたその時、渡された花籠を目にしたサロルは、ニキヤに毒蛇を仕向けた犯人を知る。
 激怒するサロル、取り成そうとするガムザッティ、その瞬間に屋敷が倒壊。祝いの席に参列した者の全てが犠牲となった。

 遅れて駆けつけた高僧が見たのは、かつてのラジャの屋敷の上に残る聖火。そう全ては、聖火の前での誓いを反故とした人間たちに対する、バラモンの神の怒りであったのだ。
 ニキヤとサロルの二人の魂は、ベールに乗って空へと登っていく。



 何度も行っているフェスティバルホールなのに、今回は派手に迷った。ちょっと焦ったぜ。
 安いチケットばかり買っているはずなのに、今回初めて三階席になった。廊下が結構狭くて、さらに壁の反対側は手すりの下がオールガラス張りなので、高所恐怖症のうちの父親なら震えるんじゃないかと思いました。
 それと三階席の階段が強烈な傾きで、ちょっと怖いが、その分だけ座席に傾斜が付いていて舞台が見やすい。 角度がついているだけに、普段はあまり見えないオーケストラピットもかなりの部分が見えて、金管楽器がたまにキラキラと光を反射するのが若干気になる。

 ただフェスティバルホールの舞台はバレエをやるには若干狭いような……。結構ギリギリに見えた。
 とは言え、予想以上に舞台美術が素晴らしかった。影の世界の冒頭でサロルが夢見るニキヤの姿がプロジェクターで投影されるのはちょっと安易すぎない?なんて私が思った瞬間に動き出して、それが実は投影された映像などではなくて本物の人間であることが分かったりと、意表を裏切ってくれて楽しかった。
 最後の屋敷の倒壊も結構頑張っていたし。ただ高僧、お前だけ生き残るのかよと思わず突っ込んでしまったが。


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