以前、「テキスト感想:『NHKラジオ まいにちロシア語 2013年10月号』」の記事を書いている時に気が付いた。私の書くбは何かがおかしい。
論より証拠。画像を一枚。
この左側が今まで私が書いていたб、右側が「何かがおかしい」と気が付いて訂正したб。以前の記事では、右側のбで書いた。
……まぁ左側のбを使っていた間もずっと「これ数字の6とどう違うんだ?」と疑問に思ってはいたのですが。
筆記体の綴りからしても、右側みたいに書く方がそれっぽい気がする。何より数字の6と混同しないで済むし。
ただ、こんな細かいところが気になるのも今だけの話で、順調に学習が進めば文字に癖があろうがなかろうが気にならなくなるだろうなぁ。
私が書く英語のqなんて酷い有様だけど、1ミリも気にしてないし。半数以上の人にgと誤読されている以上、気にするべきなのだけれど。
бを眺めながらそんなことを考えていたところ、ロシア語を勉強し始める前からこの文字と関わりがあったことを思い出した。
どこで見たのかと言えば、ソログープの名前の綴りСологу́б。末尾がこのб。
私はこのイマイチマイナーなこの作家のために、ロシア語を学んでいるんですよ。何年掛かるのか分かったもんじゃないけれど、目指すのは自由だし?
と、話がズレた。
このソログープさん、現在では「ソログープ」表記で統一されているものの、かつては「ソログーブ」だったこともあり、更には英語ではSologub表示なので、末尾は「ブ」と「プ」のどっちが実際の発音に近いんだよとずっと疑問だった。
その発音の問題であるбが気になって気になって。それでこの文字だけ、なんとなく覚えていた。
折角なので、単に眺めていただけのбについて考えてみた。
発音の規則から行けば、бは本来ならば「ブ」だけれど語末にあるので無声化されてп、つまりは「プ」の方が近い……と言うことになるのかな。
「ブ」「プ」の表記の差は単に表記揺れ、もしくは日本語の表記法に変更が入ったから動いただけの可能性も考えていたが、実は途中で無声化の規則に誰かが気付いたなんて理由だったのかもしれない。
ただ、アクセントがyにある以上、途中のoが「オ」から弱化を起こして「そろぐーぷ」ではなく「さらぐーぷ」化してそうな気がしないでもないですがね。
英語表記がSologubなのは、ロシア文字を表記のまま英語にしたらそうなるよな、と。
ただこの綴りだと、「そろぐーぶ」以外の読みをしようと思う人いなさそう。
ロシア語特有の綴りと読みが乖離を起こしている単語を英語にすると、なにやら大変なことが起こりそうだ。
そんな私が愛してやまないソログープさんの話をしたついでに、彼のことをもうちょっとご紹介。
論より証拠。画像を一枚。
この左側が今まで私が書いていたб、右側が「何かがおかしい」と気が付いて訂正したб。以前の記事では、右側のбで書いた。
……まぁ左側のбを使っていた間もずっと「これ数字の6とどう違うんだ?」と疑問に思ってはいたのですが。
筆記体の綴りからしても、右側みたいに書く方がそれっぽい気がする。何より数字の6と混同しないで済むし。
ただ、こんな細かいところが気になるのも今だけの話で、順調に学習が進めば文字に癖があろうがなかろうが気にならなくなるだろうなぁ。
私が書く英語のqなんて酷い有様だけど、1ミリも気にしてないし。半数以上の人にgと誤読されている以上、気にするべきなのだけれど。
бを眺めながらそんなことを考えていたところ、ロシア語を勉強し始める前からこの文字と関わりがあったことを思い出した。
どこで見たのかと言えば、ソログープの名前の綴りСологу́б。末尾がこのб。
私はこのイマイチマイナーなこの作家のために、ロシア語を学んでいるんですよ。何年掛かるのか分かったもんじゃないけれど、目指すのは自由だし?
と、話がズレた。
このソログープさん、現在では「ソログープ」表記で統一されているものの、かつては「ソログーブ」だったこともあり、更には英語ではSologub表示なので、末尾は「ブ」と「プ」のどっちが実際の発音に近いんだよとずっと疑問だった。
その発音の問題であるбが気になって気になって。それでこの文字だけ、なんとなく覚えていた。
折角なので、単に眺めていただけのбについて考えてみた。
発音の規則から行けば、бは本来ならば「ブ」だけれど語末にあるので無声化されてп、つまりは「プ」の方が近い……と言うことになるのかな。
「ブ」「プ」の表記の差は単に表記揺れ、もしくは日本語の表記法に変更が入ったから動いただけの可能性も考えていたが、実は途中で無声化の規則に誰かが気付いたなんて理由だったのかもしれない。
ただ、アクセントがyにある以上、途中のoが「オ」から弱化を起こして「そろぐーぷ」ではなく「さらぐーぷ」化してそうな気がしないでもないですがね。
英語表記がSologubなのは、ロシア文字を表記のまま英語にしたらそうなるよな、と。
ただこの綴りだと、「そろぐーぶ」以外の読みをしようと思う人いなさそう。
ロシア語特有の綴りと読みが乖離を起こしている単語を英語にすると、なにやら大変なことが起こりそうだ。
そんな私が愛してやまないソログープさんの話をしたついでに、彼のことをもうちょっとご紹介。
フョードル・ソログープ(Фёдор Сологуб)の名で通っているが、これはペンネーム。本名はフョードル・クジミチ・テテルニコフ(Фёдор Кузьмич Тетерников)。19世紀から20世紀にかけて生きた詩人かつ作家。
最初は本名で創作活動をしていたものの、お仲間のニコライ・ミンスキーに「テテルニコフ」は詩的ではないと判断され、貴族的な名前"Соллогуб"がペンネームとして考え出されたらしい。
ただし、19世紀に実在した文筆家ウラジミール・ソログープ伯爵との混同を避けるために、лを一つ減らした"Сологуб"とした。
が、まぁ日本語表記ではどちらも「ソログープ」なので、日本人的には全く意味はないですね。
ちなみに、ソログープ伯爵は英語版Wikipediaでは"a minor Russian writer"なんて説明されちゃっているけれど、一応、詩が数編にエッセイが一編ほど日本語に翻訳されていたりするので、そうマイナーでもないんじゃないかなー。
本当にマイナーなら、この極東の日本で日本語に翻訳されたりはしないだろうし。
ソログープを調べる過程で何度かソログープ伯爵にブチ当たった程度の私の情報によると、どうやら旅行記が有名なようだ。ロシアから西側を馬車で旅したらしい(テキトー)。
と、話がズレだが、このフョードル・ソログープは貴族どころか貧しい靴屋の息子として生まれ、しかもその父親が早くに亡くなってしまうなんて恵まれない身の上。父親には他所に愛人と娘がいたとかいないとか。
母一人、妹一人の極貧三人家族として子供時代を生き抜いたソログープながら、母が仕えていた上流階級の一家に気に入られ、教育と教養を得る機会に恵まれる幸運を得る。
利発な子であったソログープは、件の一家の祖母に特に可愛がられたそうだ。
その後、彼らの援助もあり教師学校を卒業したソログープは教師としての職を得、母親と妹を養えるようになった。加えて、働きながら創作活動に励み、遂には文筆業一本で身を立てるまでに成功する。
長年彼を支えていた妹が肺を患って亡くなった時には相当な衝撃を受けたようだが、その後、社交的な性格で作家志望の女性と結婚。
彼女は内気な性格のソログープを盛り立て、家政を切り回し、彼らの住居を作家たちの社交場へと変貌させるまでになる。
が、そんな幸福な生活はロシア革命により、一気に揺らぐ。
当初は革命を支持していたソログープだが、二月革命の現実を見て立場を変え、ボリシェヴィキを指弾する内容の記事を発表。しかし十月革命の後、ボリシェヴィキが出版に関する全権を掌握してしまう。
そうなるとどうなるかは明白で、彼らに楯突いたソログープには不愉快などころか致命的な事態が持ち上がった。
ボリシェヴィキの妨害により、彼はもはや今までのように文筆業で生計を立てられないどころか、収入の全てを失う事態に陥ったのだ。
他の作家たちが次々とロシアを離れる中、ここまで国内に踏みとどまっていたソログープだが、ついに亡命を決意する。しかし、彼のような権力に逆らう輩にその許可が簡単に出るはずもない。
国内亡命の果てに、ようやく友人のツテからロシアから逃げ出せる算段をソログープが立てたにも関わらず、その実行の直前にソログープの妻が突如身投げし、自殺を遂げてしまう。辛い国内亡命生活が、彼女の精神を追い詰めていたのだ。
妻の死に衝撃を受けたソログープは、もはや亡命を果たす意義を失い、最期までロシアで暮らした。
その晩年は、かつての栄光とは遠くても、仲間に囲まれた和やかなものだったらしい。彼は最期まで創作を続けたが、それらが彼の生前に出版されることはなかった。
とまぁ、そんな経緯の作家なので、ソ連時代は冷遇され彼の作品も随分と散逸してしまったそうな。
ロシア時代になってからは整理され始めたなんて話もあるけれど、実際のところはどうなんですかね。
我らが日本にソログープが紹介されたのは比較的早く、彼が生きていた明治の終わり頃。以来評価が高く、昭和前半までは良く紹介されていたものの、その後下火に。
最近になり「光と影」が複数のアンソロジーに収録されたのを契機として、ソログープの名前を知る人が増えた(私もその一人)。
とまぁ、現状はそんな感じじゃないでしょうか。
以上、ソログープの情報に関しては、英語版のWikipediaを参考にしました。
ソログープの初期作にして最も有名な「光と影」を収録する短編集から、今でも買えるものをご紹介。
最初は本名で創作活動をしていたものの、お仲間のニコライ・ミンスキーに「テテルニコフ」は詩的ではないと判断され、貴族的な名前"Соллогуб"がペンネームとして考え出されたらしい。
ただし、19世紀に実在した文筆家ウラジミール・ソログープ伯爵との混同を避けるために、лを一つ減らした"Сологуб"とした。
が、まぁ日本語表記ではどちらも「ソログープ」なので、日本人的には全く意味はないですね。
ちなみに、ソログープ伯爵は英語版Wikipediaでは"a minor Russian writer"なんて説明されちゃっているけれど、一応、詩が数編にエッセイが一編ほど日本語に翻訳されていたりするので、そうマイナーでもないんじゃないかなー。
本当にマイナーなら、この極東の日本で日本語に翻訳されたりはしないだろうし。
ソログープを調べる過程で何度かソログープ伯爵にブチ当たった程度の私の情報によると、どうやら旅行記が有名なようだ。ロシアから西側を馬車で旅したらしい(テキトー)。
と、話がズレだが、このフョードル・ソログープは貴族どころか貧しい靴屋の息子として生まれ、しかもその父親が早くに亡くなってしまうなんて恵まれない身の上。父親には他所に愛人と娘がいたとかいないとか。
母一人、妹一人の極貧三人家族として子供時代を生き抜いたソログープながら、母が仕えていた上流階級の一家に気に入られ、教育と教養を得る機会に恵まれる幸運を得る。
利発な子であったソログープは、件の一家の祖母に特に可愛がられたそうだ。
その後、彼らの援助もあり教師学校を卒業したソログープは教師としての職を得、母親と妹を養えるようになった。加えて、働きながら創作活動に励み、遂には文筆業一本で身を立てるまでに成功する。
長年彼を支えていた妹が肺を患って亡くなった時には相当な衝撃を受けたようだが、その後、社交的な性格で作家志望の女性と結婚。
彼女は内気な性格のソログープを盛り立て、家政を切り回し、彼らの住居を作家たちの社交場へと変貌させるまでになる。
が、そんな幸福な生活はロシア革命により、一気に揺らぐ。
当初は革命を支持していたソログープだが、二月革命の現実を見て立場を変え、ボリシェヴィキを指弾する内容の記事を発表。しかし十月革命の後、ボリシェヴィキが出版に関する全権を掌握してしまう。
そうなるとどうなるかは明白で、彼らに楯突いたソログープには不愉快などころか致命的な事態が持ち上がった。
ボリシェヴィキの妨害により、彼はもはや今までのように文筆業で生計を立てられないどころか、収入の全てを失う事態に陥ったのだ。
他の作家たちが次々とロシアを離れる中、ここまで国内に踏みとどまっていたソログープだが、ついに亡命を決意する。しかし、彼のような権力に逆らう輩にその許可が簡単に出るはずもない。
国内亡命の果てに、ようやく友人のツテからロシアから逃げ出せる算段をソログープが立てたにも関わらず、その実行の直前にソログープの妻が突如身投げし、自殺を遂げてしまう。辛い国内亡命生活が、彼女の精神を追い詰めていたのだ。
妻の死に衝撃を受けたソログープは、もはや亡命を果たす意義を失い、最期までロシアで暮らした。
その晩年は、かつての栄光とは遠くても、仲間に囲まれた和やかなものだったらしい。彼は最期まで創作を続けたが、それらが彼の生前に出版されることはなかった。
とまぁ、そんな経緯の作家なので、ソ連時代は冷遇され彼の作品も随分と散逸してしまったそうな。
ロシア時代になってからは整理され始めたなんて話もあるけれど、実際のところはどうなんですかね。
我らが日本にソログープが紹介されたのは比較的早く、彼が生きていた明治の終わり頃。以来評価が高く、昭和前半までは良く紹介されていたものの、その後下火に。
最近になり「光と影」が複数のアンソロジーに収録されたのを契機として、ソログープの名前を知る人が増えた(私もその一人)。
とまぁ、現状はそんな感じじゃないでしょうか。
以上、ソログープの情報に関しては、英語版のWikipediaを参考にしました。
ソログープの初期作にして最も有名な「光と影」を収録する短編集から、今でも買えるものをご紹介。
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この2冊に収録されているのは、「光と影」のみ。
かくれんぼ・毒の園 他五篇 (岩波文庫) | |
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『かくれんぼ・毒の園 他五篇(岩波文庫)』はソログープの短編集。
「光と影」の他に、「かくれんぼ」、「白い母」、「小羊」、「白い犬」、「毒の園」、「悲劇 死の勝利」を収録。
「白い母」以外は全てネガティブな、しかし当事者たちは奇妙に幸福そうな終わりを迎えるという、日照時間の減る冬に読むと特にメンタルに来そうな物語たちとなっております。
他にも、盛林堂書店が出版した『いい香のする名前 -ソログーブ童話集-』も存在している。底本が古い本なので、ソログー「ブ」表記となっている模様。
収録作は、「翼」、「いい香のする名前」、「森の主」、「少年の血」、「捜索」、「地のものは地へ」、「花冠」、「魂の結合者」、「獣の使者」。
死の賛美者と称されることの多いソログープの別の一面、生の肯定を感じることの出来る作品が多く、岩波文庫の『かくれんぼ・毒の園 他五篇』とは異なる読書感になるだろう。
死の賛美者、幻想文学者としてのソログープが好みならば、長編小説『小悪魔』もオススメ。
どれも絶版だが、齋藤紘一翻訳、文芸社のものならば大抵の図書館にある。
ソログープ作品の日本語訳は他にも存在はしているのだが、遙か昔の雑誌に掲載されたきりのものが多く、入手が面倒なのが残念だ。
英訳ならばいくつかあるのだが、この記事の長さももう大概なので、省略。
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ほほほ、ついついまた来てしまいました。
返信削除「サラグープ」ですね。絶対。^^。
「ゴルバチョフ」は、「ガルバチョーフ」、「レニングラード」は「リニングラート」。
サンクトペテルブル「ク」が正解なのに、サンクトペテルブル「グ」になっている。
正確に言えば「ピチルブールク」。「チェーハフ」とか。
枚挙にいとまがない。
あ、こちらもブログやっています。お暇があればぜひ来てください。私もロシア語初心者です。
http://sutdy-luntik.seesaa.net/
エフエスさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
返信削除ソログープさんがサラグープさんになってしまうと、全くの別人感がありますね……。
エフエスさんもブログをお持ちだったのですね! 早速見せていただきました。
私も早く聞き取りはともかく、少しくらい読めるようになりたいものです。