森は生きている (岩波少年文庫) | |
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継母による継子虐めというテーマは、もう一種の人間の本能なんじゃないかというレベルで普遍的なテーマでして、作品を挙げればきりがありません。最も有名なのは『シンデレラ』、日本では『落窪物語』が代表選手になるでしょうか。
シンデレラが魔法使いの手を借りたとは言えど、自分で王子様のいる城まで辿り着いたのに対して、『落窪物語』のヒロインは侍女が王子様をヒロインの部屋まで手引きしているあたりに、時代と地域の差を感じられて良いですね。
落窪はラストが「侍女はとても長生きしました」で終わるのがまた更に面白いのですが。主人公は侍女なのかもしれない。まぁ落窪さん、基本的に何もしないし……いや色ボケ爺の攻撃に必死に耐えるシーンがあったな。
話がいつものように盛大にズレたので戻すと、継子虐め物語のロシアでの代表選手は、この『森は生きている』のようです。
こちらにはシンデレラや落窪に見られた「結婚」の文字が一ミリも見えないのが、なかなかに新鮮。
ただまぁここらあたりは物語の成立の歴史と、誰が誰のために書いたのかも加味しないとならないのだけれど。
ロシア版継子虐め物語の主人公は「ままむすめ」。名前がない。基本的にみんな名前がない。そもそも小説ではなくて戯曲である。
物語となるのは大晦日から新年にかけて。大晦日とは不思議な日であり、どんな奇妙も起こりえる。
継母に薪拾いに冬の森に出されたままむすめは、大晦日の奇妙を体験する。その頃、彼女の住まう国のままむすめと歳の変わらぬ女王様は、唐突に「マツユキソウ」が新年の祝いの席に必要だと言い出した。
マツユキソウは4月にならねば咲かぬと周囲の者は必死に説得するのだが、それがますます彼女の我が侭に火を点ける。
どうしても手に入れたくなった女王は、マツユキソウを城に持ってきた者には金貨をやるとのお触れを出した。
これを見て欲を出したのは、ままむすめの義理の母と姉。ままむすめの抵抗も虚しく、彼女は夜の森へと出されてしまうのだった。しかも見付かるはずのないマツユキソウを探して。
だが今日は大晦日。大晦日にはどんな奇妙な出来事だって起こりえるのである。
罪もないのにただ継子だというだけで虐められる娘が幸せを掴む、という主題は同じなのだが、シンデレラや落窪と違い、それをもたらすのが人知を越えた存在だと言うのが、なんともロシア的。
ちなみに原題は"Двенадцать Месяцев"なので、『12か月』。
日本語にすると何だかイマイチなので、タイトルを変えたと翻訳者の弁があとがきに載っている。個人的にはこのタイトルも、まるで環境問題を扱った本のようで何だかイマイチな気が。
元のタイトルで検索したら、ソ連時代に作られたアニメがヒットしたのでご紹介。まだ全部見た訳ではないが、女王様のしゃべり方がムカつく上に聞き取りにくすぎる。
今回この本を読んだ理由は、ロシア語の発音練習の題材として『森は生きている』の絵本を読んでいて続きが気になったからなのですが、結構物語の流れが違う。
私が読んでいる絵本の方が、継母&義妹の殺意が明確だ。「思い立ったら吉日。あいつ殺そう」とか言っちゃってるし。
……よく考えたら、凄い絵本だなコレ。
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