2015年10月11日更新
元の作品は二章しかないのだが、私の都合で七分割。今回は二章の頭2/4から真ん中までをお送りします。
バリケードってどんなのなのさ?と疑問に思っていたら、たぶんこんなのと教えていただきました。→イメージ
想像よりも断然大きい! そしてこっちにも電信柱が組み込まれている。なんか撓ってる。
出典は以下:
《ТОМ 3. ПОВЕСТИ, РАССКАЗЫ И ПЬЕСЫ 1908-1910》収録《Повести и рассказы》項目内《Иван Иванович》(БИБЛИОТЕКА РУССКОЙ КЛАССИКИサイト内、Леонид Николаевич Андреевのページより)
今回も、
『岩波ロシア語辞典』(岩波書店)
『NHK新ロシア語入門』(日本放送出版協会) にお世話になりました。
加えて『ロシア文学鑑賞ハンドブック』(群像社)、『現代ロシア話しことば辞典』(NISSO)にもお世話になりました。
例によってツッコミ等は歓迎しております。
以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。
以下は、いつもの七転八倒な和訳への道。
注:色つき文字部分は、私(春色)の独り言。
太字は原文、もしくは最終的な日本語訳。
Лавочник вышел. Впереди себя он катил огромную пустую бочку, подкатил ее к баррикаде и поставил. Поглядел издали, подперши щеку рукой, выхватил у соседа топор и разбил бочку, так что острыми ребрами своими она расползлась в стороны как своеобразный букет. И среди других голосов и смеха послышался и его густой и самодовольный смех:
– Попробуй-ка, перескочи!
メモвпереди:少し前方に、先に立って;将来に、今後に
катить(←катил:過去形、男性形):[定](一定の時に・一定の方向に)転がしていく、(車輪のついた物を)押して行く(不完了体)
→[不定]катать
пустой(←пустую:女性形、対格):(中身が)空の、中空の、がらんどうの;軽薄な、浅薄な
бочка(←対格):樽
подкатить(←подкатил:過去形、男性形):転がして寄せる、下へ転がし込む(完了体)
→不完了体:подкатывать
поставить(←поставил:過去形、男性形):立てる、(立てて)置く(完了体)
→ставить
поглядеть(←поглядел:過去形、男性形):見る(完了体)
→不完了体:глядеть
издали:遠くから、離れて、脇から
подперши:副分詞
←подпереть:(何かで)支える、(頭・顎などを手などで)支える(完了体)
→不完了体:подперать
выхватить(←выхватил:過去形、男性形):奪い取る、もぎ取る、ひったくる;素早く引き出す、引き抜く(完了体)
→不完了体:выхватывать
сосед(←соседа:対格):隣人、隣の人
топор:斧
разбить(←разбил:過去形、男性形):たたき割る、打ち壊す;打撲傷を与える、傷付ける(完了体)
→不完了体:разбивать
так что:それ故、だから、その結果
ребро(←ребрами:造格):肋骨、あばら骨;ふち、ヘリ、エッジ
расползтися(←расползлась:過去形、女性形):(多数の動物・昆虫が)方々へ這って去る、這って散る(完了体)
→不完了体:расползаться, (口)расползываться
своеобразный:あたかも…のような、一種の;独特の、特色ある、奇抜な、独創的な
букет:花束、ブーケ
послышаться(←послышался:過去形、男性形):聞こえ始める、聞こえ出す;[無人動]…と思える、気がする(完了体)
густой:密集した、密生した;濃厚な;密な、厚い
самодовольный:自己満足した、独りよがりの;得意げな
попробовать(←попробуй:命令形):試す、テストする;試みる、勤める、…してみる(完了体)
→不完了体:пробовать
попробуй(те):(口)(脅し・警告の意味で)やってみやがれ、(できるものなら)やってみな
перескочить(←перескочи:命令形):飛び越える(完了体)
→不完了体:перескакивать
「売り子が出て来た。自身の前に彼は巨大な空っぽの樽を転がしており、それを転がして寄せたバリケードの傍に、そして置いた。遠くから見た、頬を腕で支えながら、隣人から斧を奪い取ると樽を叩き割った、その結果尖ったあばら骨自身のようにそれは這って散った方々に、まるで一種の花束のように。別の声と笑いの中心では聞こえ始めた彼の濃厚な得意気な笑いが。
『できるものなら飛び越えてみろ!』」
最後の台詞は誰に向けたものなんだろう。
そして樽が叩き割られる様子が突然詩的になるのは何故。びっくりしたじゃないか。
「売り子が姿を現した。彼はその前方に巨大な空樽を転がしており、それをバリケードの傍に寄せると、立てて置いた。顎を腕で支えながら遠くから眺めると、隣人から斧を奪い取り樽を叩き割った。そのために樽は尖ったあばら骨のように方々に這い散った、まるで一種の花束であるかのように。別の声と笑いの中心で聞こえ始めたのは、売り子の厚い得意気な笑いであった。
『飛び越えてみやがれってんだ!』」
Пытался Иван Иванович для доклада приставу запомнить работавших, но, кроме седого лавочника да одного дворника, который со двора таскал один какие-то огромные бревна, никого признать не мог.
メモпытаться(←пытался:過去形、男性形):…しようと試みる、務める(不完了体)
→完了体:попытаться
доклад(←доклада:生格):(公開の場での)報告、演説、講演
пристав(←приставу:与格):(帝政ロシアの)警察署長;(モスクワ・ロシア・帝政ロシアの)監督官、管理官
запомнить:記憶する、覚える、記憶に留める(完了体)
→不完了体:запоминать
работавший(←работавших:複数、対格):能動形容分詞過去
←работать:働く(不完了体)
кроме:…を除いて、…以外に;…の他に
дворник(←дворника:対格):屋敷番、門番、掃除番
таскать(←таскал:過去形、男性形):[不定]引っ張って動かす、引き摺る;連れて行く、引っ張っていく(不完了体)
→[定] тащить
бревно(←бревна:複数形、対格):丸太
признать:(口)(特徴などで)分かる、見分けが付く(完了体)
→不完了体:признавать
「努力したイヴァン・イヴァノヴィッチは、報告警察署長へのために、記憶しようと働いている者たちを、しかし、白髪の売り子ともう一人門番、戸口で引き摺っている一つの何かの巨大な丸太を、を除いては一人も見分けることが出来なかった」
仕事熱心なイヴァン・イヴァノヴィッチさん。
「イヴァン・イヴァノヴィッチは警察署長への報告のために、働いている者たちを記憶しようと努力したが、しかし、白髪の売り子ともう一人の門番、戸口で一つの何かしらの巨大な丸太を引き摺り回している、以外には誰一人として見分けることが出来なかった」
Да и Петров, заметив его внимательные, изучающие взгляды, погрозил ему пальцем, и Иван Иванович скромно опустил глаза. «Привязался», – подумал он, а рабочему насмешливо, но тихо фыркнул:
メモзаметив:副分詞
←заметить:目に留める、認める、気付く、見付ける(完了体)
→不完了体:замечать
внимательный(←внимательные:複数形):注意深い、慎重な、念入りな
изучающий(←изучающие:複数形):(視線が)探るような
взгляд(←взгляды:複数形):視線
погрозить(←погрозил:過去形、男性形):脅す、威嚇する、脅迫する(完了体)
→不完了体:грозить
скромно:慎ましく、質素に、控え目に
опустить(←опустил:過去形、男性形):下ろす、下げる、(目などを)下に向ける、伏せる(完了体)
→不完了体:опускать
привязаться(←привязался:過去形、男性形):(自分の)体を縛る、(縄などで何かに)自分を結びつける;…に愛着を覚える;…と親しくなる;(口)うるさく付きまとう、言いがかりを付ける、絡む(完了体)
→不完了体:привязываться
подумать(←подумал:過去形、男性形):ちょっと考える、しばらく考える;…と考える、(…について)考える(完了体)
рабочий(←рабочему:与格):労働者
насмешливо:物笑いにして、馬鹿にして
фыркнуть(←фыркнул:過去形、男性形):(口)(鼻先で)ふふんと笑う;(完了体のみ)(口)怒って言う、怒鳴る(完了体)
→不完了体:фыркать
「そしてペトロフが、彼の注意深い、探るような視線に気が付いた後で、彼を指で脅し、そしてイヴァン・イヴァノヴィッチは慎ましく伏せた目を。(言いがかりだ)―考えたのは彼だ、が労働者を馬鹿にして、しかし小さくふふんと笑った」
捕虜イヴァン・イヴァノヴィッチさん、結構図太い。正直彼のキャラクターがよく分からんのよね。
「その上ペトロフが彼の注意深い探るような視線に気が付き、指で彼を脅したのでイヴァン・イヴァノヴィッチは慎ましく目を伏せた。(言いがかりだ)そう考えた彼は、労働者を馬鹿にして、小さくふふんと笑うのだった」
– Даже и смотреть нельзя, скажите пожалуйста, какие цацы!
– Глаз-то у тебя нехороший, – серьезно заметил старик. – Напрасно они тебя взяли. Самое бы хорошее: повесить тебя на баррикаде заместо красного знамени. И дешево и сердито!
– Что же тут хорошего!
メモдаже и:(接続詞として最高の程度や限界を表す文などに付加する)…(する、になる)ほどに
скажите пожалуйста!:(挿入語として)(口)(驚き・憤慨を表す)なんと、驚いたことに、滅相もない、とんでもない
цаца(←цацы:複数形):(俗)(蔑)うぬぼれ屋、高慢ちき
серьезно:真面目に、真剣に、本気に;冗談抜きに、真剣に、笑わずに;[挿入語](口)本当に
заметить(←заметил:過去形、男性形):目に留める、認める、気付く、見付ける、見て取る;(意見を)述べる、指摘する、…と言う(完了体)
→不完了体:замечать
напрасно:虚しく、無益に、無駄に、悪戯に;用も無く、理由も無く
самое:(俗)頃合いだ、潮時だ
повесить:掛ける、吊す(完了体)
→不完了体:вешать
заместо:(俗)…の代わりに、…に代わって
знамя(←знамени:生格):旗
дёшево:安値で、廉価で、安く;容易に、手軽に
сердито:腹を立てて、怒って;非常に激しく、猛烈に
дешево и сердито:安くてしかも質の良い
高慢ちきって言葉、まだ現役張れてんのかなぁ……。私が読む本って基本的に古いから、正直現在のことはよく分からんのよね。
さっぱり意味の分からなかった"Самое бы хорошее"は「一番良いのは」という意味だと教えて頂きました。
「『見るのを禁止するほどに、驚いたことに、このうぬぼれ屋め!』
『お前さんの目は宜しくない』―真面目に述べたのは老人。『彼らがお前を理由も無くひっつかむ。一番良いのは:お前さんを吊すんだバリケードの上に赤い旗の代わりに。安くてしかも質が良い!』
『それにいったい何の良さがありますか!』」
宜しくないってのもなぁ。私は結構使うけど、一般的とは思えないぞ。うーん。
「『見るのを禁ずるとは、驚いたな、なんて自惚れ屋なんだ!』
『お前さんの目が良くないのさ』 老人は真剣に指摘した。『彼らが理由もなくお前さんを引っ掴むぞ。一番良いのは、お前さんをバリケードの上、赤い旗の代わりに吊すことだな。安上がりで高品質だ!』
『それのどこが良いって言うんです!』」
Рабочий, видимо, шутил, но Иван Иванович не мог разобрать, где кончается шутка и начинается серьезное, и сердце у него порывами начинало сильно трепыхаться и начиналась изжога, как будто он много съел дурного, прогоркшего масла. Но проходил час и другой, и никто его не трогал, хотя многие грозились, а один мальчишка снежком залепил ему в голову.
メモвидимо:(廃)目立って、はっきりと;(文)見たところ、外見上は;[挿入語]たぶん、おそらく
шутить(←шутил:過去形、男性形):(楽しませるために)ふざける、おどける、洒落を言う;嘲笑する、からかう(不完了体)
разобрать:(大勢がそれぞれ一つずつ取って全部を)取る、買い尽くす;分ける、整理する、類別する;(問題・事件などを)検討する、審理する、分析する、批評する(完了体)
→不完了体:разбирать
серьезный(←серьезное:中性形):真面目な、真剣な、厳しい
порыв(←порывами:複数形、造格):(風の)急激な強まり、突風;(感情の)激発、衝動
сильно:強く、激しく;酷く、極めて、極度に
трепыхаться:(口)ぴくぴく震える、もがく;揺れる、震える、(心臓が)どきどきする;興奮する、苛立つ(不完了体)
→完了体、一回:трепыхнуться
изжога:胸焼け
дурной(←дурного:生格):悪い
прогоркший(←прогоркшего:生格):能動形容分詞過去
←прогоркнуть:(食べ物が腐って)舌をさす、すえた臭いがする(完了体)
→不完了体:прогоркать, горкнуть
масло(←масла:生格):油;バター
трогать(←трогал:過去形、男性形):触れる、触る;構う、干渉する、邪魔する、(感情を)傷付ける、怒らせる(不完了体)
→完了体:тронуть
грозитьсь(←грозились:過去形、複数形):(不完了体)=грозить/погрозить:脅す、威嚇する、脅迫する
→完了体:погрозитьсь
снежок(←снежком:造格):雪玉、雪つぶて
залепить(←залепил:過去形、男性形):塗って塞ぐ、貼り塞ぐ;一面に張り付く;(俗)平手で打つ、ぴしゃりと打つ(完了体)
→不完了体:залеплять
「労働者は、おそらく、からかったのだ、しかしイヴァン・イヴァノヴィッチは整理することが出来なかった、いつ冗談が終わり、真剣さが始まり、彼の心臓が衝動によって激しく鼓動を打ち始め胸焼けが始まるのか、まるで彼が大量に食べた悪い、すえた匂いのするバターを、のように。しかし一時間とその他が過ぎ、誰も彼を邪魔しなかった、とは言え、多くの人が脅したが、一人の少年は雪玉を彼の頭にぴしゃりとぶつけた」
начиналоだったりначиналасьだったりと、結構面白い一文。
「労働者は、恐らくは、からかっただけだったのだ。しかしイヴァン・イヴァノヴィッチには飲み込むことが出来なかった。いつ冗談が終わり真剣さが始まるのか。いつ彼の心臓が衝撃によって激しく打ち付け始め、まるで古くなったすえた臭いのするバターを大量に食べたかの如き胸焼けが始まるのか。しかし一時間とそれ以上が過ぎたが、誰も彼に干渉しなかった。とは言え大勢が脅しはしたが。ただ一人の少年だけが、彼の頭に雪玉をぴしゃりと投げつけた」
Мальчишку обругали, а Иван Иваныч совсем успокоился и за себя и за пальто и уже начал понемногу распоряжаться и повышать голос:
– Куда кладешь?! За тот конец бери! За тот, говорю. О Господи, вот же народ бестолковый!
Теперь он понимал, что такое баррикада.
メモобругать(←обругали:過去形、複数形):…の悪口を言う、罵る(完了体)
совсем:全く、すっかり
успокоиться(←успокоился:過去形、男性形):(興奮・不安などを抑えて)落ち着く、安らぐ、(騒ぎ・笑いなどを止めて)静まる、大人しくなる;鎮まる、おさまる(完了体)
→不完了体:успокаиваться
понемногу:少量ずつ、ちょっとずつ
распоряжаться:命令する、指図する;(不完了体のみ)(仕事などを)切り回す、取り仕切る、運営する;(不完了体のみ)我が物顔に振る舞う、主人顔をする(不完了体)
→完了体:распорядиться
повышать:高める、上げる;強める、増加させる、改良する、改善する(不完了体)
→完了体:повысить
класть(←кладешь:現在形、二人称、単数形):(物を横たえて)置く、寝かす(不完了体)
→完了体:положить
бестолковый:物分かりの悪い、愚かな
「少年は罵られたが、イヴァン・イヴァノヴィッチはすっかり落ち着いていた、自分自身のこととコートのことを、そして徐々に始めさえした我が物顔で振る舞い、声を強めた
『どこに置くんだ!? その端を持て! だから、言っただろ。ああ何たることだ、愚かな者どもめ!』
今や彼は理解していたバリケードが何たる物なのか」
イヴァン・イヴァノヴィッチさん、実は有能……なのか? しかしもうコートのことは忘れろよ。
「少年は罵られたが、イヴァン・イヴァノヴィッチは己のこととコートのことから落ち着いていた。徐々に我が物顔で振る舞い、声を強めさえし始めた。
『どこに置いているんだ!? その端を持てよ! だから、そっちだよ。ああ、なんたることだ。全くもって愚かな連中め!』
今や彼は理解していた、バリケードが何たるものか」
– Упри его концом сюда, так, – чтобы остряком оно вперед. Так, верно!
И уже развязно подходил к Петрову.
– Господин Петров! Извольте приказать, чтобы ваши товарищи помогли мне снять вывеску. Мы ее посередке поставим.
Петров, не оборачиваясь, коротко ответил:
– Убирайся вон.
メモупереть(←упри:命令形):立てかける、乗せる、押し当てる、押しつける、支える、突っ張る(完了体)
→不完了体:упирать
сюда:ここへ、こちらへ
остряк(←остряком:造格):(口)洒落の上手い人;(男性形のみ)[鉄道]転轍機、ポイント
вперед:前へ、先へ;(口)今後、以後
верно:忠実に、正しく、間違いなく、適切に;[述](疑問または感嘆の語調で、また肯定語として)正しい、その通り
развязно:屈託無く、のんびりと、無遠慮に、馴れ馴れしく、打ち解けすぎの
подходить(←подходил:過去形、男性形):(歩いて・乗り物で)近付く、近寄る(不完了体)
→完了体:подойти
приказать:命令する、指令する、指図する(完了体)
→不完了体:приказывать
снять:取る、降ろす、外す、取り外す;(部隊などを)撤収する、召還する、撤退させる(完了体)
→不完了体:снимать
вывеска(←вывеску:対格):(商店などの)看板、表札;見せかけのための物、仮面、看板
посередке:=посередине:真ん中に、中央に;…の真ん中に、…の中程で
поставить(←поставим:一人称複数形):立てる、(立てて)置く(完了体)
→不完了体:ставить
оборачиваясь:副分詞
←оборачиватьсь:(ある方向を)向く、振り向く、振り返る、回る;(口)(徒歩・乗物で)行って戻る、行って来る、往復する;(口)(困難な仕事を)片付ける、(苦境を)切り抜ける(不完了体)
→完了体:обернутьсь, оборотитьсь
коротко:短く、簡潔に
убираться(←убирайся:命令形):(口)去る、出て行く(不完了体)
→完了体:убраться
остряк? 転轍機もバリケードに組み込まれてんの? 何なの?
「『それを乗せろその端で持って、そこだ―転轍機の前だ。そうだ、いいぞ!』
馴れ馴れしくペトロフに近づきさえした。
『ペトロフさん! 命令していただけませんかね、貴方の御同僚に私が看板を取り外すのを手伝うように。私たちはあれを真ん中に置きますよ』
ペトロフは、振り向きもしないで、簡潔に答えた。
『あっちへ行け』」
何故毎度毎度ペトロフに絡むのか。
「『それを乗せるんだ、その端を持って、そこだ――輪転機の前だ。そうだ、いいぞ!』
ペトロフに馴れ馴れしく近づきさえした。
『ペトロフさん! 貴方の御同僚に命令しては頂けませんかね。私が看板を取り外すのを手伝うようにと。我々はあれを真ん中に置きますよ』
ペトロフは振り向きもせずに簡潔に答えた。
『失せろ』」
пожимать(←пожимает:現在形、三人称単数形):(廃)軽く押す;(挨拶・感謝の徴に手・指を)握る、手を交した(不完了体)
→完了体:пожать
остряк(←остряком:造格):(口)洒落の上手い人;(男性形のみ)[鉄道]転轍機、ポイント
вперед:前へ、先へ;(口)今後、以後
верно:忠実に、正しく、間違いなく、適切に;[述](疑問または感嘆の語調で、また肯定語として)正しい、その通り
развязно:屈託無く、のんびりと、無遠慮に、馴れ馴れしく、打ち解けすぎの
подходить(←подходил:過去形、男性形):(歩いて・乗り物で)近付く、近寄る(不完了体)
→完了体:подойти
приказать:命令する、指令する、指図する(完了体)
→不完了体:приказывать
снять:取る、降ろす、外す、取り外す;(部隊などを)撤収する、召還する、撤退させる(完了体)
→不完了体:снимать
вывеска(←вывеску:対格):(商店などの)看板、表札;見せかけのための物、仮面、看板
посередке:=посередине:真ん中に、中央に;…の真ん中に、…の中程で
поставить(←поставим:一人称複数形):立てる、(立てて)置く(完了体)
→不完了体:ставить
оборачиваясь:副分詞
←оборачиватьсь:(ある方向を)向く、振り向く、振り返る、回る;(口)(徒歩・乗物で)行って戻る、行って来る、往復する;(口)(困難な仕事を)片付ける、(苦境を)切り抜ける(不完了体)
→完了体:обернутьсь, оборотитьсь
коротко:短く、簡潔に
убираться(←убирайся:命令形):(口)去る、出て行く(不完了体)
→完了体:убраться
остряк? 転轍機もバリケードに組み込まれてんの? 何なの?
「『それを乗せろその端で持って、そこだ―転轍機の前だ。そうだ、いいぞ!』
馴れ馴れしくペトロフに近づきさえした。
『ペトロフさん! 命令していただけませんかね、貴方の御同僚に私が看板を取り外すのを手伝うように。私たちはあれを真ん中に置きますよ』
ペトロフは、振り向きもしないで、簡潔に答えた。
『あっちへ行け』」
何故毎度毎度ペトロフに絡むのか。
「『それを乗せるんだ、その端を持って、そこだ――輪転機の前だ。そうだ、いいぞ!』
ペトロフに馴れ馴れしく近づきさえした。
『ペトロフさん! 貴方の御同僚に命令しては頂けませんかね。私が看板を取り外すのを手伝うようにと。我々はあれを真ん中に置きますよ』
ペトロフは振り向きもせずに簡潔に答えた。
『失せろ』」
– Как же это так? – пожимает околоточный плечами, но на время затихает и сжимается, поглядывая как-то из-под низу, как побитая собака. А потом снова овладевал положением и постепенно повышал голос, сразу, впрочем, переходя на шепот, когда встречался взглядами с Петровым. Необходимо было показать, что он хоть и без пальто, но лучше других, чище и благороднее.
メモпожимать(←пожимает:現在形、三人称単数形):(廃)軽く押す;(挨拶・感謝の徴に手・指を)握る、手を交した(不完了体)
→完了体:пожать
на
время:一時的に、当座、しばらくの間
затихать(←затихает:現在形、三人称単数形):静かになる、鎮まる、黙る、聞こえなくなる;衰える、弱まる、止む、治まる、落ち着く(不完了体)
→完了体:затихнуть
сжиматься(←сжимается:現在形、三人称単数形):(圧迫されて)縮む、収縮する;(ぎっしりと)寄り集まる、固まる;身を縮める、縮み上がる(不完了体)
→完了体:сжаться
поглядывая:副分詞
←поглядывать:(時々)見る、眺める、監視する、見守る(不完了体)
как-то:[不定]どうやってか、なんとか;[不定]どうしてか、なんとなく;[不定]ある時、いつか
овладевать(←овладевал:過去形、男性形):奪い取る、手に入れる、占領する;意のままにする、支配する、制御する(不完了体)
→完了体:овладеть
положение(←положением:造格):位置、所在;姿勢、手足の位置;地位、身分、役割
постепенно:次第に、徐々に、だんだん、少しずつ
повышать(←повышал:過去形、男性形):高める、上げる;強める、増加させる、改良する、改善する(不完了体)
→完了体:повысить
впрочем:でも、しかし、とは言え;[挿入語](ためらい、不決断の意で)だがまぁ、でも、もっとも
переходя:副分詞
←переходить:渡る、越える、横断する;場所を変える、移る、移動する(不完了体)
→完了体:перейти
шёпот:囁き、ひそひそ声、微かな声、さらさらいう音
необходимо:不可避的に、やむを得ず、必然的に;[無人述]…しなければならない
хоть и:…とは言え
чисто(←чище:比較級):綺麗に、清潔に、潔白に
благородный(←благороднее:比較級):高潔な、気高い、崇高な
動詞が現在形になった。何故。まぁ不完了体の嵐だから、なんとなく効果みたいなのは分かるような気がするが。
「『何だってそんなことを言うんだい?』 警察官は肩をいからせたが、しかししばらくの間静かになり身を縮め、見守っていた何かの下から、まるで殴られた犬のように。しかし次には再び手に入れた立場をそして徐々に声を高めた、即座に、とは言え、移動した囁き声に、ペトロフの視線と出くわした時には。示さなければならない、彼はコートなしでも、しかし誰よりも素晴らしく、潔白で気高いことを」
コートに対する妄執がもうサッパリ分かりません。
でもイヴァンさんの本分は権力者側の人間な訳で、てきぱきとバリケード造ることが己の優秀さを示すことになるもんなのか? 自分の立ち位置とかはどうでも良くて、個人的に有能であることが示せたら良いのか?
「『何だってそんなことを言うんだい?』 警察官は肩をいからせたが、しかし暫く静かに身を潜め、上目遣いに見守っていた、まるで殴られた犬のように。しかし次には再び己の立場を手に入れ、声を高めた、とは言えペトロフの視線と出くわした時には即座に囁き声に変わるのだった。彼は示さなければならなかった。例えコートがなくとも、それでも誰よりも素晴らしく、潔白で気高いことを」
сударыня:(廃)奥様(上流社会の女性に対する丁寧な呼びかけ)
платок(←платке:前置格):スカーフ、ショール、ハンカチ
привезти(←привезла:過去形、女性形):(車・船などを)運んでくる、持ってくる、輸入する、(知らせを)もたらす(完了体)
→不完了体:привозти
салазки(←салазках:複数形、前置格) :小橇、手橇
вязанка(← вязанку:対格):(薪・枯れ枝などの)束
дрова(←дров:生格):薪
сбросить(←сбросила:過去形、女性形):投げ落とす、振り落とす、投げ捨てる、(戦闘で)追い落とす(完了体)
→不完了体:сбросывать
готовить(←готовили:過去形、複数形):(使えるように)用意する、整える、設える(不完了体)
политика(←политикой:造格):(一国の)政治、国政
заниматься(←занимались:過去形、複数形):(不完了体のみ)(趣味・生業・職業・専門などに)携わる、従事する、研究する(不完了体)
→完了体:заняться
затихать(←затихает:現在形、三人称単数形):静かになる、鎮まる、黙る、聞こえなくなる;衰える、弱まる、止む、治まる、落ち着く(不完了体)
→完了体:затихнуть
сжиматься(←сжимается:現在形、三人称単数形):(圧迫されて)縮む、収縮する;(ぎっしりと)寄り集まる、固まる;身を縮める、縮み上がる(不完了体)
→完了体:сжаться
поглядывая:副分詞
←поглядывать:(時々)見る、眺める、監視する、見守る(不完了体)
как-то:[不定]どうやってか、なんとか;[不定]どうしてか、なんとなく;[不定]ある時、いつか
овладевать(←овладевал:過去形、男性形):奪い取る、手に入れる、占領する;意のままにする、支配する、制御する(不完了体)
→完了体:овладеть
положение(←положением:造格):位置、所在;姿勢、手足の位置;地位、身分、役割
постепенно:次第に、徐々に、だんだん、少しずつ
повышать(←повышал:過去形、男性形):高める、上げる;強める、増加させる、改良する、改善する(不完了体)
→完了体:повысить
впрочем:でも、しかし、とは言え;[挿入語](ためらい、不決断の意で)だがまぁ、でも、もっとも
переходя:副分詞
←переходить:渡る、越える、横断する;場所を変える、移る、移動する(不完了体)
→完了体:перейти
шёпот:囁き、ひそひそ声、微かな声、さらさらいう音
необходимо:不可避的に、やむを得ず、必然的に;[無人述]…しなければならない
хоть и:…とは言え
чисто(←чище:比較級):綺麗に、清潔に、潔白に
благородный(←благороднее:比較級):高潔な、気高い、崇高な
動詞が現在形になった。何故。まぁ不完了体の嵐だから、なんとなく効果みたいなのは分かるような気がするが。
「『何だってそんなことを言うんだい?』 警察官は肩をいからせたが、しかししばらくの間静かになり身を縮め、見守っていた何かの下から、まるで殴られた犬のように。しかし次には再び手に入れた立場をそして徐々に声を高めた、即座に、とは言え、移動した囁き声に、ペトロフの視線と出くわした時には。示さなければならない、彼はコートなしでも、しかし誰よりも素晴らしく、潔白で気高いことを」
コートに対する妄執がもうサッパリ分かりません。
でもイヴァンさんの本分は権力者側の人間な訳で、てきぱきとバリケード造ることが己の優秀さを示すことになるもんなのか? 自分の立ち位置とかはどうでも良くて、個人的に有能であることが示せたら良いのか?
「『何だってそんなことを言うんだい?』 警察官は肩をいからせたが、しかし暫く静かに身を潜め、上目遣いに見守っていた、まるで殴られた犬のように。しかし次には再び己の立場を手に入れ、声を高めた、とは言えペトロフの視線と出くわした時には即座に囁き声に変わるのだった。彼は示さなければならなかった。例えコートがなくとも、それでも誰よりも素晴らしく、潔白で気高いことを」
– А вы бы, сударыня, лучше не за свое дело не брались, – сказал он женщине в платке, которая привезла на салазках вязанку дров и сбросила в баррикаду. – Лучше бы вашему мужу щи готовили, а не политикой занимались.
メモсударыня:(廃)奥様(上流社会の女性に対する丁寧な呼びかけ)
платок(←платке:前置格):スカーフ、ショール、ハンカチ
привезти(←привезла:過去形、女性形):(車・船などを)運んでくる、持ってくる、輸入する、(知らせを)もたらす(完了体)
→不完了体:привозти
салазки(←салазках:複数形、前置格) :小橇、手橇
вязанка(← вязанку:対格):(薪・枯れ枝などの)束
дрова(←дров:生格):薪
сбросить(←сбросила:過去形、女性形):投げ落とす、振り落とす、投げ捨てる、(戦闘で)追い落とす(完了体)
→不完了体:сбросывать
готовить(←готовили:過去形、複数形):(使えるように)用意する、整える、設える(不完了体)
политика(←политикой:造格):(一国の)政治、国政
заниматься(←занимались:過去形、複数形):(不完了体のみ)(趣味・生業・職業・専門などに)携わる、従事する、研究する(不完了体)
→完了体:заняться
「『貴方、奥様、もしも自分の仕事ではないことを手に取れないほうが良いのなら』言った彼は女性にスカーフをした、運んで来た小橇で薪の束をバリケードに投げ落とした。『貴方の夫にシチーを設えていた方が良いですよね、政治に携わらずに』」
イヴァン・イヴァノヴィッチさん、女性に話しかけるの巻。
「『貴方、奥様、自分の領分ではないことなんて手を出さない方が幸せですよね』と彼はスカーフをした女性に言った。彼女は小橇で薪の束を運び、バリケードに投げ落としていた。『貴方の夫にシチーを作っているほうが良いですよね、政治に関わらずに』」
Он сказал тихо, спокойно, а женщина вдруг закричала, так что отовсюду посыпал народ.
– Что?! Это ты мне говоришь? Мне? Мужа моего слопал, а теперь мне говоришь!
И со всего размаха ударила его по щеке. Он схватил ее за платок и сорвал, но тут сразу десяток рук вцепились в него и приковали его к месту. И опять от ужаса онемели ноги.
メモспокойно:静かに、穏やかに、落ち着いて
закричать(←закричала:過去形、女性形):叫び声で言う(完了体)
отовсюду:至る所から、四方八方から
посыпать(←посыпал:過去形、男性形):(完了体のみ)(少し)振りかける、ばらまく;(完了体のみ)(口)(雪・雨などが)降り始める、(たくさん)浴びせ始める、ぺらぺらしゃべり出す(完了体)
→不完了体:посыпать
слопать(←слопал:過去形、男性形):(粗)(方)食う、大食する(完了体)
→不完了体:лопать
размах(←размаха:生格):振ること、振り回すこと、振り、助走、力、スイング;拡がり
со всего размаха:手を振り上げて、手を振り回して;助走して、勢いをつけて
схватить(←схватил:過去形):(素早く)掴む、取る、(口に)咥える;(逃げないように)捕まえる;しばる、くくる、締める(完了体)
→不完了体:схватывать
сорвать(←сорвал:過去形、男性形):(枝・茎から)摘み取る、手折る、もぎとる;(固定されているものを激しい動作で)引き離す、剥ぎ取る(完了体)
→不完了体:срывать
вцепиться(←вцепились:過去形、複数形):во что しがみつく、縋り付く(完了体)
→不完了体:вцепляться
приковать(←приковали:過去形、複数形):鍛接する、鎖で繋ぐ;動けなくする、離れられなくする(完了体)
→不完了体:прикоывать
к месту:時宣を得ている、適切である
онеметь(←онемели:過去形、複数形):啞になる;(驚き・喜びなどで)口がきけなくなる、あっけに取られる;麻痺する、感覚を失う、痺れる(完了体)
→不完了体:онемевать, неметь
よくご覧ください。 Мужа моего слопалのмужа моегоが対格であることに。ひぃ!
「彼は小声で穏やかに言ったのだが、女性は突然叫び声で言ったため、四方八方から人がバラバラと現れた。
『何!? それはあんた、私に言っているのかい? 私に? 私の夫は大食いされたよ、で今は私に言ったのかい!』
手を振り上げると叩いた彼の頬を。彼は彼女のスカーフを掴んで剥ぎ取った、しかしこの即座に十の腕が彼にしがみつき彼を動けなくした。そして再び恐怖から足が麻痺した」
イヴァン・イヴァノヴィッチさん、要らんことをして要らん目に遭う。
「彼は小声で穏やかに言ったのだが、女性は突然叫びだした。そのために四方八方からバラバラと人が現れた。
『何!? それはあんた、私に言っているのかい? 私に? 私の夫はぺろりと丸呑みされたよ、で今度は私って訳かい!』
手を振り上げ彼の頬を叩いた。彼は彼女のスカーフを掴み剥ぎ取った。しかし即座に十の腕が彼を捕らえ、その場に押さえつけた。再び恐怖から彼の脚は麻痺した」
– Я не виноват! Она… Я не виноват, честное, благородное слово! Я ей сказал…
Женщина плакала, сидя на салазках, и дружинники смотрели угрюмо. Петров глядел долго и внимательно и не выдержал, – плюнул.
– Гуманность! – сказал он презрительно.
– Господин Петров! Господин Петров! – звал его околоточный. – Я ей сказал…
– Молчать!
メモвиноватый(←виноват:短尾形、男性形):(ふつう短尾)罪のある、責めを負うべき、過失を犯した;(ふつう短尾)原因を成す、理由を成す;(長尾)罪を自覚した様子の、責任を自覚した様子の、済まなさそうな
честный(←честное:中性形):正直な、誠実な、実直な、正当な;(長尾)汚れのない、純潔な
благородный(←благородное:中性形):高潔な、気高い、崇高な
сидя:副分詞
←сидеть:座っている、腰を下ろしている(不完了体)
угрюмо:不機嫌に、鬱ぎ込んで、無愛想に、むっつりして
внимательно:注意して、注意深く、念入りに;親身に、丁重に
выдержать(←выдержал:過去形、男性形):支え保つ、持ちこたえる;(ふつう否定辞とともに)(口)こらえる(完了体)
→不完了体:выдерживать
плюнуть(←плюнул:過去形、男性形):唾を吐く(完了体)(一回)
→不完了体:плевать
гуманность:人道、博愛
презрительно:軽蔑的に、蔑むように
звать(←звал:過去形、男性形):呼ぶ、呼びかける(不完了体)
→完了体:позвать
「『私は悪くない! 彼女が…。私は悪くない、誠実な崇高な約束だ! 私が彼女に言ったのは…』
女性は泣いた、小橇に座りながら、そして義勇団員は無愛想に見た。ペトロフは見ていた長いこと注意深く我慢できずに―唾を吐いた。
『博愛!』 彼は言った軽蔑的に。
『ペトロフさん! ペトロフさん!』 呼びかけたのは警察官。『私が彼女に言ったのは…』
『黙れ』」
「『私は悪くない! 彼女が……。私は悪くないんだ、誠実に心から言うよ! 私が彼女に言ったのは……』
彼女は小橇に座って泣いていた。義勇団員たちはむっつりと彼を見た。ペトロフは長いこと注意深く見ていたが、我慢できずに――唾を吐いた。
『博愛!』 彼は軽蔑的に言った。
『ペトロフさん! ペトロフさん!』 警察官が呼びかけた。『私が彼女に言ったのは……』
『黙れ!』」
イヴァン・イヴァノヴィッチのペトロフへの呼びかけは「縋り付いた」くらいに訳したい衝動に駆られたが、流石にやりすぎだよな。
そんな訳で二章も残り半分。
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