アレクサンドラ・マリーニナ『盗まれた夢 モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤ〈1〉』



 400ページ近くの厚みがあるのに、更に二段組みで、その余りの分量にびっくりした一冊。と言いながら、睡眠時間をゴリゴリ削って読むほどに面白かったのだが。
 だが登場人物の多さと、ロシア人の名前のややこしさには辟易とさせられた。私、日本の作品でも主要人物が五人を超えると投げたくなるんです……。


 アナスタシヤ・カメンスカヤは、モスクワ市内総務局犯罪捜査局(通称MUR)の殺人課所属の分析専門官。デスクワークに従事してきた彼女だが、上司ゴルジェーエフから突然、現場に出ることを命令される。
 突然の命令に戸惑う彼女に、ゴルジェーエフが明かしたのは、何とこのMURの中に裏切り者が居るとの衝撃的な情報であった。そして彼にはその裏切り者が誰だが分からないとも。
 ゴルジェーエフが信じられるのは、一度も現場に出たことのないアナスタシヤのみ。彼に大いなる恩義を感じているアナスタシヤは、彼の背負った重荷を慮り、その命令に従い初めての現場に挑む。
 彼女を待ち受けていたのは、美女の絞殺事件であった。彼女は死体で発見される数日前に失踪しており、更に「夢を盗まれた」との奇妙な言葉を恋人に残していた。



 話が展開するのが遅い。遅いよ。じりじりと追い詰められていくアナスタシヤの姿は読んでいてそわそわさせられて良いのだが、それにしたって悪党の方の記述こんなに要らないような。
 悪党の情報を読者が豊富に得ているせいで、アナスタシヤが辿り着けないことにイライラする。そして優秀と称される彼女が事件の真相を掴むキッカケが偶然すぎるよ! なんかもうちょっと方法なかったの、割と真面目に!

 とは言え、アナスタシヤが最初に掴む事件が、全体から見たときの端っこどころか妙な斜め位置で、そこからどうやってアナスタシヤが全体像を得るのか、そしてMUR内に潜む裏切り者とは誰なのかが気になって、最後まで必死に読んでしまった訳なのだが。
 最後の展開は衝撃的だったが、あの彼は結局どうなったの?

 と言う訳で、邦訳では2作目に当たる『孤独な殺人者』を探しに行く私なのでありました。


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アナスタシヤ・カメンスカヤのシリーズって結局どうなってるの、ってことで調べてみた

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