川崎隆司『原典によるロシア文学への招待―古代からゴーゴリまで』


原典によるロシア文学への招待―古代からゴーゴリまで
原典によるロシア文学への招待―古代からゴーゴリまで川崎 隆司

成文社 2008-11
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 その時代その時代の代表的な作品を邦訳して引用し、時代背景の解説と共に紹介する一冊。
 惜しむらくは、文学に関してはゴーゴリまで、その後はベリンスキーの批評と哲学、チェルヌイシェフスキーの哲学とが紹介されるのみという点だ。付録としてドフトエフスキーの作品紹介が付いてはいるが。
 出来るなら、もっと最近の作家についても聞きたいところ。


  個人的に興味深かったのは、ゴーゴリとプーシキンの関係性だった。確かになるほど、ゴーゴリがプロットを立てられないという指摘には頷ける。
 他にも引用されている多数の作品は、どれもこれも面白そうで、故に邦訳がないものが惜しまれる。……誰か翻訳してくれないかな。

 時代説明も興味を引くように書かれており、その点をストイックに抑えた『図説 ロシアの歴史』とは好対照である。
 偽ドミトリーの一件やニコンの改革の描写は生き生きとしており、非常に面白い。
 歴史を扱うなら『図説 ロシアの歴史』のような態度が正しいだろうが、しかし人間はパンのみでは生きられないのであって、この手の読み物としての面白さに目を配った記述もまたアリだろう。


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