2015年11月28日土曜日

川崎隆司『原典によるロシア文学への招待―古代からゴーゴリまで』


原典によるロシア文学への招待―古代からゴーゴリまで
原典によるロシア文学への招待―古代からゴーゴリまで川崎 隆司

成文社 2008-11
売り上げランキング : 1660085


Amazonで詳しく見る by G-Tools

 その時代その時代の代表的な作品を邦訳して引用し、時代背景の解説と共に紹介する一冊。
 惜しむらくは、文学に関してはゴーゴリまで、その後はベリンスキーの批評と哲学、チェルヌイシェフスキーの哲学とが紹介されるのみという点だ。付録としてドフトエフスキーの作品紹介が付いてはいるが。
 出来るなら、もっと最近の作家についても聞きたいところ。


  個人的に興味深かったのは、ゴーゴリとプーシキンの関係性だった。確かになるほど、ゴーゴリがプロットを立てられないという指摘には頷ける。
 他にも引用されている多数の作品は、どれもこれも面白そうで、故に邦訳がないものが惜しまれる。……誰か翻訳してくれないかな。

 時代説明も興味を引くように書かれており、その点をストイックに抑えた『図説 ロシアの歴史』とは好対照である。
 偽ドミトリーの一件やニコンの改革の描写は生き生きとしており、非常に面白い。
 歴史を扱うなら『図説 ロシアの歴史』のような態度が正しいだろうが、しかし人間はパンのみでは生きられないのであって、この手の読み物としての面白さに目を配った記述もまたアリだろう。


関連記事:
栗生沢猛夫『図説 ロシアの歴史』
小町文雄『サンクト・ペテルブルグ―よみがえった幻想都市』
原求作『キリール文字の誕生―スラヴ文化の礎を作った人たち―』

Related Posts:

  • ふくろうの本の図説ロシア関連本  今ちまちまと読んでいる短編が、イースターの時期を舞台としている&ロシア正教の休日の話が出てくるので、ちょっとロシアのことを学んでみる気になった。  本当はロシア正教の話が知りたかったのだけれど、良い本が見付からなかったのでまずは歴史から。    写真多めで読みやすい「ふくろうの本」シ… Read More
  • バレンタインチョコレートに見つけたロシア  バレンタインチョコレートを買いに行ったら、売り場にロシアンテイストを見つけたよ。  と言う訳で、勝手にご紹介。  一つ目は、メリーのショコラーシカ。  マトリョーシカの容器の中にチョコレートが入っているよ、という商品。  包装を止めている紙のテープの飾り部分がかわいい。  … Read More
  • ロシア版『とびだせ どうぶつの森』への道(Nintendo 2DSを買う口実が欲しいだけとも言う) とびだせ どうぶつの森 任天堂 2012-11-08 売り上げランキング : 39 Amazonで詳しく見る by G-Tools  ロシア語に触れる絶対量が足りない気がしてきたので、ロシア語でゲームをプレイするのはどうだろうと思い立った。  今のところロシア語はサッパリなので、既… Read More
  • ロシアのAmazonと呼ばれるozonで買い物してみた その2:無事に届いた  ロシアの大手ネット通販ozonに注文をしたのが5月30日も終わる頃(日本時間)。  その後、31日に発送メールが来て、そして6月10日に無事に届いた。  Global spring Mailの公式サイトで調べたらエコノミー便の場合、ロシア-ヨーロッパ以外は15日から20日と書いてあったので、… Read More
  • 2014年ロシア本国で公開される«Вий 3D»は、もはやリメイクではなくて別物の予感  先日記事にした『妖婆 死棺の呪い』(こちらの原題も«Вий»)のリメイク«Вий 3D»が、2013年にロシアで公開されると風の噂で聞いていた。  その後、延期したのか何なのか、とりあえず2014年1月30日公開ということで確定したらしい。つまり今頃は、ロシアで絶賛上映中ってことですね。 … Read More

0 コメント:

コメントを投稿