映画『不思議惑星キン・ザ・ザ(デジタル・リマスター版)』



 カルト的な人気を誇るソ連製SF映画。……ジャンルはSFでいいんだよね、たぶん。


 冬のモスクワ。仕事から帰ってきた建築技師のマシコフ(スタニスラフ・リュブシン)が何気なくテレビを見ると、妙に印象的な曲が歌われていた。見るともなしにテレビを眺めるマシコフに、彼の妻は買い物を頼む。
 街に出かけたマシコフは、青年ゲデバン(レヴァン・ガブリアセ)に話しかけられる。ゲデバンが示す先には、「この星のクロスナンバーか座標を教えてくれ」と頼んでくる謎の男。自称宇宙人。彼曰く、彼が手にしている「空間移動装置」を使えば一瞬で移動できるのだとか。
 そんな訳あるかと装置を奪い取ったマシコフとゲデバンは、一瞬後には砂漠のド真ん中に突っ立っていた。

 あの怪しい男は本当に宇宙人だったんだと騒ぐゲデバンを宥めて、マシコフはここはソ連内の砂漠に過ぎないと主張する。街まで歩くことにした二人だが、所持品は乏しく砂漠は広い。
 へたり込んだ二人の前に現れたのは、奇妙な宇宙船。そこから降りてきた太め(エヴゲーニー・レオノフ)とノッポ(ユーリー・ヤコヴレフ)の二人組は、ゲデバンたちに「クー」と奇妙な挨拶をするのだった……。



 物語は淡々と進むのに、妙に登場人物それぞれに愛着が湧いてくる。
 青年を前に常に年長者としての威厳を保とうとするナイスガイの「おじさん」マシコフに、他の人にボロッカスに貶されるヴァイオリンを持ってはいるが弾けない「ヴァイオリン弾き」ゲデバン、マシコフら見下せる相手には偉そうだが自分より上位の人間にはへりくだる太めなチャトル人ウエフに、普段はウエフにへつらってはいるが立場が変わると途端に態度を変える抜け目ないノッポなパッツ人ビー。
 ウエフもビーもろくな人間(宇宙人?)ではないのだが、危機に陥った彼らをマシコフが見捨てるかどうか非常にハラハラしてしまう。
 当初は「そこまでこき下ろさなくても」と思えたゲデバンが、徐々にその駄目な人感を全開にして行くのもおかしい。だが彼のその駄目人間っぷりが、物語を大きく転回させるのだけれど。

 ラストシーンで「おじさん」と「ヴァイオリン弾き」が、思わず「クー」と挨拶してしまうのが妙におかしくて妙に微笑ましい。
 同時に、あの奇妙な星から遠く離れてしまったのが、少し寂しくなる。



 この映画はシネ・ヌーヴォまで観に行ったよ。遠かったよ。



 ちなみにこの『不思議惑星キン・ザ・ザ』はデジタル・リマスター版が2017年2月に発売予定。

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