世界怪談名作集 14 ラザルス | |
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『世界怪談名作集』に収録されたアンドレーエフ「ラザルス」が、著作権切れで青空文庫入りになり、更にkindle版も作られていたので、読んでみたよ。
こちらも無料。
主人公ラザルスは、死の三日後に突如甦った。生前は陽気であった彼は、しかし、甦って後にはすっかり別人と化してしまっていた。
当初はラザルスの復活を祝い、花婿の如き綺麗な衣装を着せて呑めや歌えやの宴会を催した周囲の人間たちであったが、日が経つにつれてラザルスの変化に気が付き、彼を恐れ始めた。
「むこうで起こった事を、なぜあなたは私たちにお話しなさらないのです。」
「あなたは私たちには話したくないのですね。あの世というところは恐ろしいでしょうね。」
ついにはラザルスの実の姉妹までもが彼を見捨て、彼の元を訪れるのは興味本位の人間あるいは死を知りたい人間のみになってしまった。
「すべて手に触れ、眼に見える物体は漸次に空虚な、軽い、透明なものに化するもので、謂わば夜の闇に光る影のようなものである。(略)
なんとなれば、この宇宙を取り巻いているところの偉大なる空間は、眼に見えるものによって満たされるものでもなく、また太陽や、月や、星に依っても満たされるものでもない。それは何物にも束縛されずに、あらゆるところに沁み込んで、物体から分子を、分子から原子を分裂させて行くのである。
(略)今なお人間は生まれて来るが、それと同時に絶えず葬式の蠟燭は人間の頭上にかがやき、虚無に還元して、その人間と葬式の蠟燭の代わりに空間が存在する。(略)」
(略)そうして、みな無言のうちに死んでいるのであった。
ラザルスの名は遠くまで知られるようになり、遠路はるばる客が訪れるようになった。遠くからやって来たのは有名な彫刻家。
そして彼を手元に呼び寄せたのは、ローマ皇帝その人。
ラザルスの傍近くまで近付いた二人が、その後に辿った運命は。
ちなみにこのラザルス、聖書で言うところのラザロ。キリストによって死から甦らされた奇蹟の人である。
この奇蹟故にキリストは民衆の人気を獲得し、同時に政権側に脅威と見做され、彼の処刑は用意されることとなる。
そんなラザロを主人公に据えての、この展開。アンドレーエフさんの宗教観はどうなっているんだ。
ついでに言うと、ところどころ「?」な部分があるのだが、これ翻訳者の岡本綺堂が事実なら、英語なんかからの重訳だろうなぁー。
岡本綺堂がロシア語出来たなんて聞いたことないし。
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