以前紹介したナショナルジオグラフィックチャンネルの30分番組「あなたの知らない世界史」からもう1話。今回もロマノフ家モノ。
このシリーズを私はAmazonビデオで見たけれど、結構面白いのでもっとナショジオで放送しても良いと思うんです。
今回取り上げるのは、「誰がラスプーチンを殺したか?」というもの。
時はロシア帝政末期。当時の皇帝ニコライ二世には子供が五人。けれども息子はたった一人。それも四人連続で娘が生まれた末にようやく得られた息子。しかしその息子には血友病を患っていた。
そんな不安定なロマノフ家に、するりと入り込んだのはシベリア出身の粗野な祈祷僧ラスプーチン。世は降霊術などの怪奇が人気を博する時代の変わり目。彼はその風を受け、話術と催眠術と見られる技術を用いて、短期間で皇帝一家の信任を獲得する。
だが彼が政治介入を始めたことから、皇帝の周囲から不満が立ち上がりつつあった。対ドイツ戦からの撤退を皇帝に進言したことにより、その不満は最高潮に達し、そしてついには暗殺の憂き目に遭うのだった。
さて、殺したのは誰か?
警察の捜査はごく簡単に終わり、この事件では誰も罪を問われていない。ラスプーチンの死体も行方不明となり、証拠も失われたためだ。
定説ではユスポフとプリシケヴィチが主犯とされている。が、ラスプーチンの検視写真が見付かったことから、ユスポフの回想録の記述との大きな相違が明らかとなる。
問題は最初に戻る。ラスプーチンを殺したのは誰か?
件の日、ラスプーチンが呼び出された屋敷には、ユスポフとプリシケヴィチ、ドミトリー大公(彼は事件時には既に屋敷にいなかったとされる)の他に二人いたと言われている。つまりはこの残りの二人こそが真犯人なのだ。
では、その二人とは誰なのか?
ラスプーチンの致命傷となった眉間の銃創、それはイギリス製の大口径の銃によるものと良く似ていた。
そして当時のイギリスは、ロシアと組んで対ドイツ戦を戦っている最中であり、彼らはロシアが手を引くことを恐れ、諜報員を送り込んでいたのだ。
と言う訳で、イギリスの諜報機関大成功、で終わるのかと思いきや、そもそもロマノフ家自体がラスプーチンの醜聞でヒビを入れられ消え去り、ソ連が誕生してしまうという歴史の皮肉。
検証過程が探偵小説のような趣で、なかなかに面白かった。
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